新人探索者大会 エンリカVSランディ
「ランディ、ぶった斬ってみせるわ!」
「その前に僕の魔法で倒すよ」
熱い日差しが降り注ぐ中、入場した2人は既にバチバチに火花を散らしている。
「試合開始!」
審判の合図と同時に強く踏み込む私に対してランディは大きく後ろに下がりながら詠唱を始めた。
「火の矢」
動きを遅くする且つダメージを与えられる場所に火の矢が飛んでくる。
しかし、ランディの針の穴を通す程のコントロール力が仇になっている。
コントロールが良すぎる故、火の矢の場所は絞り込む事が可能。
後は軌道をしっかり見ればいいだけ。
胴体近くの火の矢を軽く避けて進む。
「この程度!」
避けられない火の矢は剣を振って叩き落として進む。
「まだまだ。火の矢」
次々と襲いかかる火の矢を防ぎながら間合いを詰めていく。
後一歩、火の矢はまだ来ない。踏み込めば斬れる。
強く踏み込んだ。その瞬間、ランディが悪戯っぽい笑みを浮かべる。
!!!
あの笑み、ランディが何か仕掛けた事は確か。
今引き返そうとしても間に合わない。こうなったら全て斬る!
細心の注意を払い続ける。
足が着くと同時に地面に魔法陣が浮かび上がった。
「設置魔法『サンダー』」
一瞬で魔力が集まり、地面が黄色みを帯びていく。
近くでパーティ組んでランディの事を見てきたから分かる。これの魔法を喰らえば負ける。だったらどうするか。地面を斬って魔法陣を壊す!
準備していた剣を全力で振り下ろす。
*
轟音と同時に土煙に包まれた。
その間も次の魔術の準備を始める。
「ふぅ、危なかったわ」
マジで?結構強い一撃だったよ。
何事もなかったかのようなあっさりした声に目を丸くする。
漸く土煙が晴れ、状況が目に入る。
大きく抉れた地面の近くに砂埃を被った無傷のエンリカが立っていた。
エンリカの実力は良く知っている。あの一撃で勝負を決められるとはあまり思ってはいなかった。しかし、あの地面と無傷っぷりを見ると魔法陣を無理矢理消した感じか。僕のタイミングは完璧だったはず。
流石エンリカ、僕の想像を超えてくる。
鼓動が速くなり、身体が熱くなっていくのを感じる。
このなんとも言えない昂り、こんな感覚初めてだ。
エンリカも同じ笑みを浮かべている。
エンリカが動き出すと同時に火の矢を放つ。
「強化」
火の矢を避ける為に僕から目を逸らした刹那の瞬間、身体強化魔法を使って間合いを詰める。
剣と固い杖がぶつかり合い、金属音を発する。
「火の矢」
「甘い」
剣戟を交えている最中、魔法で横槍を入れても全て有効打にはならずに時間が過ぎていく。
本職と付け焼き刃の棒術の戦いは時間が長引くにつれて本職が有利になっていくのは自明の理である。
くっ、段々押されてきた。使うか?奥の手。
考えろ、奥の手を使える魔力の余裕は残り少ない。このままだとジリ貧。よし、使うしか無い。
エンリカの動き、踏み込むタイミングを図る。
今!「泥沼」
エンリカの踏み込む地面がたちまち泥沼に変わる。
足を取られたエンリカの身体の動きが一瞬止まる。
「こんなことしたって!」
この隙に切り札の詠唱をし始めながらエンリカと距離を取る。
沼から抜け出したエンリカが勢い良く向かってきた。
あとちょっと間に合わない。魔力がギリギリだから『強化』も切った。頭を回せ。
最後の足掻きで少し横を見ると審判がいる。
使える!
認識と同時に審判の真後ろへ移動していた。
すぐに向きを調整して向かってくるエンリカ。
「時間稼ぎにならないわ!」
タイムリミットであるエンリカの到着は進行方向を変えた分、確かに僅かに遅れる。
「その一瞬が欲しかった!」
大砲に似た形の物が岩魔法で創り出される。
岩魔法の応用で造った電気をよく通す物質のレールに弾丸。その周りを岩魔法で頑丈に囲う。そして雷魔法の応用で一方向に一気に電流を流す。
僕の総魔力量の3割を使う正真正銘の切り札。
「審判ごと斬る!」
「審判ごと貫く!『電磁砲』」
審判の安全の為に装着している生存する首飾りの起動音であるガラスが割れるような音が響く。
「はぁ、はぁ」
魔力が、もう無い。倒れそう。
手を膝に置いて肩で息をする。
「反則!審判への攻撃行為により両者失格!」
フィールドの外から急いで出てきた審判に宣告された。
え?ふざけないでよ
地面に背中をついた。
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「お前らネジ飛んでんのか!」
エンリカと一緒に呼び出しに応じるとギルドマスターが鬼にも劣らない形相で怒鳴られた。
「今回!は、た!ま!た!ま!同時に攻撃を受けたから良かったものの、取り返しのつかない事になってたぞ!」
説教は2時間以上続けられた。
後日の協議の結果、僕とエンリカは『7年間探索者ギルド主催大会出禁』という処分に決まった。
アレックスが史上初の不戦勝で優勝を決めたのはまた別の話。
こっちは暫く投稿しないかもしれません。書きたいネタはあるのですが。




