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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

魔王便シリーズ

ずっと繰り返す。あなたと笑えるその日まで

作者: しゅうらい
掲載日:2025/10/18

 とあるマンションの一室に、おじいさんと人の言葉を話す猫が暮らしていました。

 猫の名前は、「つつ」です。

 なぜ、その名前かというと……

 子猫の時、小さな筒に入って出られなくなっているところを、おじいさんに助けられたからです。

 おじいさんとつつは、仲良く暮らしていました。

ですが、ある日悲劇がおきたのです。

 その日は珍しく、インターホンが鳴ったのです。

「おや、誰だろうねぇ」

 来客かと思い、おじいさんは玄関に向かいました。

 すると、少しして何かが倒れる音がしました。

 つつは、急いで駆けつけました。

 玄関では、おじいさんが胸から血を流して、倒れていたのです。

 玄関のドアは開いていて、遠ざかる足音だけが聞こえました。

「おじいさん、しっかりしてにゃ!」

 つつは何度も呼びかけましたが、おじいさんはぴくりともしませんでした。

 その時、ドアの方から咳払いが聞こえてきたのです。

 振り向くと、大柄の男が立っていました。

 しかも、頭には角があり、黒いマントをして、いかにも怪しかったのです。

 そして、手には小さな箱を持っていました。

「あんたは誰にゃ?」

「わしは『魔王便』だ。配達に来たのだが、人間はあっけないのぉ」

「おじいさんを襲ったのは、あんたかにゃ!」

「違うわ、馬鹿者。依頼人を襲うわけあるまい!」

「じゃぁ、誰がおじいさんを……」

 つつが俯いていると、男はまた咳払いをしました。

「おい、そいつを助けたいか?」

「助けられるのかにゃ!」

「それは、お主次第だ」

 すると、男は小さな箱をつつに渡します。

 受け取ったつつは、中を開けてみました。

「これは、首輪かにゃ?」

「そうだ。しかも、ただの首輪ではないぞ」

「どういうことかにゃ?」

「これは、時間を戻せる首輪だ。付いている鈴を鳴らせば、過去に戻れるぞ」

「すごいにゃ、早速使うにゃ!」

「まぁ、待て。戻る時は、ちゃんとその時間を頭に思い浮かべるんだぞ」

 男に言われ、首輪をつけたつつは、必死に念じました。

 そして、鈴を鳴らします。

 すると、つつの体が浮き、背後に白い空間が現れました。

「飼い主を助けられればよいな……」

 男の声は、やけにはっきりつつの耳に届きました。

 しばらくして、つつは目を開けます。

「なんだい、つつ。よく眠っていたねぇ」

 そこには、笑顔のおじいさんがいました。

 ちゃんと時間が戻ったのです。

 しかし、またインターホンが鳴りました。

「おや、誰だろうねぇ」

「開けたらダメにゃ!」

「つつ、どうしてだい?」

「あのインターホンは、危険の合図なのにゃ!」

「そんなことないだろ。来客を、無視するわけにはいかないさ」

「待ってにゃ、おじいさん!」

 おじいさんは、笑いながら玄関に行ってしまいました。

 その後すぐに、何かが倒れる音がしました。

「にゃにゃっ、まさか……」

 つつが駆けつけると、おじいさんが胸から血を流して、倒れていました。

「次は、間違えないにゃ!」

 そしてつつは、鈴を鳴らして時間を戻しました。

 ですが、何度やっても、おじいさんは玄関に行ってしまいます。

 必ずといっていいほど、あのインターホンが鳴るのです。

「どうして、少し前の時間しか戻れないのにゃ……」

 つつは、折れかけた心を、なんとか奮い立たせます。

「あきらめないにゃ!」

 それから、どれくらい時間を戻したかわかりません。

 やがてつつは、絶望していきました。

「どうして、おじいさんを助けられないのにゃーっ!」

 つつの悲痛な叫びは、誰にも届くことはありませんでした。

★★★

 魔王便の男は、暗い路地を歩いていました。

 そして、ふと空を見上げ、にやりと笑います。

「亡くなった命が、戻ることはあるまいに」

 男は、「魔王便」と書かれた店の前までくると、足を止めました。

「あの猫は、ずっと飼い主が、死ぬ時間を繰り返しているみたいだな」

 店のドアに手をかけましたが、男は少し考えます。

「気まぐれにかけた魔法だったが、こんな効果が出るとはな。他で使うのは、やめておくか」

 男は頷き、店の中に入っていきました。

 つつは、繰り返す。

 おじいさんと穏やかに過ごした日を、取り戻すまで……

ここまでお読みいただき、ありがとうございました!

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