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第六話



***Side ヴィオレッタ



「ヘンリー様!」



休み時間、女子生徒がヘンリーを呼び止める声が聞こえた。私は友人と中庭でランチをしようと集まっていたのだが、少し離れたところで美人で有名な先輩がヘンリーと何か話をしている。



「お、有名カップルだ」



「えっ、あの2人付き合ってるの?」



今私の隣で喋っているのは友人であるルーベンとアリアナ。ルーベンは流石の人脈と情報網で、いつも私たちにフレッシュな学園の噂を届けてくれる。



「いや?あの美女の片思いらしい」



なるほど…

あの2人、本当にお似合いだ。2人とも綺麗だから絵になるし、先輩は確か王家に一目置かれている貴族の一人娘だった気がする。内容は全く聞こえないが、にこやかに対応するヘンリーからは相変わらずのジェントルマンっぷりが窺える。



「どう?嫉妬する?」



ルーベンはどうしても私がヘンリーを好きだということにしたいらしい。



「いやいや、私とヘンリーはそういうのじゃないし」



「ヴィオレッタったらこればっかりなのよ。あんなにかっこいい人が近くにいて好きにならないなんてある?」



そしてアリアナも私がヘンリーを好きということにしたいのだ。



「そんなピアスまでもらっちゃってな」



そんなピアス、とはヘンリーから貰ったピアスを指している。2人には転移魔法が使えるようになるなんて伝えていないから、特別な意味を持っているように見えても無理はない。私がそれにそっと触れると、こちらを見たヘンリーと目が合った。彼は気づいてるとでも言わんばかりに私に向かって眉間を持ち上げた。もしかして触るだけで何かむこうには伝わっているのだろうか。



「もう、2人とも大袈裟。ヘンリーは幼馴染。今や身分も釣り合わないしね」



「それはヴィオレッタの言うとおりよね。向こうは卒業後は王宮で暮らすんだし、政略結婚とかもありそうよね」



アリアナの言うことはもっともだ。

もしこれが物語なら、主人公はきっとヘンリーで、私は彼の幼少期のエピソードにだけ登場する友人にすぎないだろう。当たり前なのになんだか少し苦しくて、私はまたピアスに触れたのだった。



***Sideルーベン



「ヘンリー様!」



休み時間、女子生徒が件の転校生を呼び止める声が聞こえた。ヴィオレッタとアリアナに誘われて中庭でピクニックの準備をしていたのだが、少し離れたところで女子生徒が転校生を呼び止めたところだった。



「お、有名カップルだ」



軽く口に出すと、「えっ、あの2人付き合ってるの?」とアリアナが尋ねてきた。ヴィオレッタもアリアナも、性格がのんびりしているせいで学園の情勢に疎いところがある。



「いや?あの美女の片思いらしい」



まあ無理もない。

王家に気に入られている、身寄りのない男だ。おまけに顔が綺麗で、普通にしていれば性格にも問題がない。婿に迎え入れるには、彼女の家にとってもかなり条件が良い。


だけど、俺にとってはあの転校生非常に厄介だ。どう見てもあの転校生はヴィオレッタのことが好きだし、かなり重そうだ。ただの友人の1人にすぎない俺にも、男だからという理由だけで敵意があるのが丸わかりだった。


さっきだってあの女子生徒が呼び止める前は、あきらかにこちらをロックオンしていたし、甘い瞳がヴィオレッタに向いたかと思えば、やばい目つきで俺を見ていた。



それに知らないヴィオレッタは「お似合いだねー、あの2人」なんてサンドイッチを広げている。



「どう?嫉妬する?」



平穏な日々を取り戻すために、2人をくっつけることは俺にとっては急務なのだ。なのでまずは単純そうなヴィオレッタを焚き付ける必要がある。



「いやいや、私とヘンリーはそういうのじゃないし」



しかし困ったことに、ヴィオレッタはこの態度を貫いている。あくまで幼馴染という立場。



「ヴィオレッタったらこればっかりなのよ。あんなにかっこいい人が近くにいて好きにならないなんてある?」



「そんなピアスまでもらっちゃってな」



そんなピアス、とは転校生がヴィオレッタにプレゼントしたらしいピアスのことだ。明らかに転校生の瞳と同じ緑で、独占欲丸出し。そのことを以前アリアナと2人で指摘したが、曰く、「そういうのじゃない」らしい。転校生がこちらを見ていたので、気づかないふりをしておく。視線に気づいたらしいヴィオレッタは向こうに向かって微笑んでいた。



「もう、2人とも大袈裟。ヘンリーは幼馴染。今や身分も釣り合わないしね」



「それはヴィオレッタの言うとおりよね。卒業後は王宮で暮らすんだし、政略結婚とかもありそうよね」



事実だけ並べれば、確かにそうだ。ヴィオレッタはしがない田舎の子爵の一人娘で、向こうは王家が囲っている魔法使い。いずれはこの国の魔術師を束ねる人材だ。しかしこれはあくまでも、あの転校生がヴィオレッタへの執着をなくすことができればの話である。



またこちらを見た転校生に、敵意がないことを示すために笑いかけてみると、向こうもぎこちなく口の端をあげた。



…よし、これはヴィオレッタが転校生を好きになるのを待つべきではない。まずは転校生に接触しよう。うまくいけば、そのうち王家とのコネクションもできる。



恋のキューピットなんてガラじゃないが、自分の平穏と将来のため。一肌脱ぐことにしてみよう。

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