第92章「財政破綻を逆手に!? 地方再生トリックで爆死」
「もう借金まみれで手詰まりだって? ふざけるな……俺は何度爆死しても何度でも起き上がってきた男だ。借金程度、どうにだってなるさ。むしろ今度は、この“財政難”そのものをビジネスチャンスに変えてみせるんだよ! 地方がいま疲弊してるらしいが、それを俺の手で蘇らせれば、デカい利益が手に入るはず――財政破綻? 逆手に取って儲けちまおうじゃないか!」
◇
王都の空き地――もはや何度も大爆発に巻き込まれ、焼け焦げがまだ取れない場所だ。そこに相も変わらず黒峰銭丸は立っていた。毎度懲りずに巨大事業を起こしては爆死する彼が、口上を述べている。傍らにはいつもの仲間、水無瀬ひかり、バルド、そしてメルティナ。どれだけ爆死を見ても、どうしても付き合ってしまうあたり、よほどの縁なのだろう。
「財政破綻ビジネス……またろくでもない言葉を思いつきましたね。地方の自治都市が困ってるからって、それをどうやって『逆手に取る』んですか?」
ひかりがあきれ顔で尋ねると、銭丸は大きく胸を張る。
「そりゃ簡単さ。地方自治体を救済するフリをして、“俺の統合金庫”に資金を集中させるんだよ。住民たちには『あなたの街を建て直すための資金運用』だと宣伝して投資させ、最終的にその金をうまく回して大儲け。爆死の負債もチャラにできるだろ? ついでに地方を再生できるならウィンウィンじゃないか!」
バルドは「まるで詐欺まがいの手口に聞こえるが……」と苦い顔をし、メルティナは「地方住民をないがしろにしすぎ。どうせまた大事故を招くんじゃ」と肩を落とす。しかし銭丸は相変わらず楽観的。
「いいや、これは真面目な“トリック”さ。俺は本気で地方を再生したい。とはいえ毎回爆死するのはご愛敬……いや、卒業のはずだ!」
◇
こうして、「地方再生トリック」を柱とする新事業が始動する。王都の外に位置する財政破綻寸前の街がいくつかあり、そこをまとめて“再生プラン”に組み込み、銭丸が“特命コンサル”として入り込むのだ。狙いは住民たちや地方議会の人々を説得して、「銭丸基金」に資金を預けさせること。加えて都市のインフラを勝手にアップデートし、裏で様々な事業を転がす予定らしい。
ひかりは「地方を騙すようで罪悪感が……」と不安げだが、銭丸は「最終的に成功すれば、彼らの財政だって回復する。何も問題ないさ!」と断言。バルドが警備と交渉の前線に立ち、メルティナは管理システムの構築を支える形でまた働かされることになる。
◇
第一ステップでは、“破綻寸前の街”をめぐるキャラバンが組まれる。銭丸が馬車に乗り込み、ひかりが帳簿を抱えて同行、バルドが護衛、メルティナは装置を運ぶ――といういつもの構図。道中で「自分の街を救いたい」と願う市民に対して「大丈夫、銭丸基金に預けてくれれば資金運用で町を立て直す。爆死なんかしない!」と豪語し、意外にも人々は希望を抱いて少しずつ金を預けていく。
バルドが「こんな具合に集めた金、何に使うつもりだ?」と心配するが、銭丸は「地方に再生プランを打ち立てるんだ。たとえば、自動運送システムや観光リゾート、愛の大帝国みたいなものをインフラに組み込めば一挙に経済活性化だろ? 何がいけないんだ?」
メルティナは一度は賛成しかけるも、「でも銭丸さんがやると、いつも最後に大火災や爆破が起きるじゃないですか……」と本音をこぼす。だが、おなじみの通り「そりゃ昔の話さ。今回は違う」と銭丸がきっぱり言うに留まる。
◇
第二ステップ:財政再生コンサルを謳い、複数の自治都市を一括で動かす“地方連合”を急造する。銭丸はその“代表”という形を取り、まとめて資金や人材を動員し、巨大な開発事業を始める狙いがあった。王都の人々は「こんなのまた大失敗確実だろう」と囁くが、地方の人々は案外熱気を帯びて賛同し、「一気にロマンがあるじゃないか」と好意的に捉えてくれる。
こうして、複数の町に新インフラを導入し、たとえば電力・水道・通信を一括拡充するプラン(過去に電脳楽園や水事業で失敗した技術)を流用し、竜の秘境やら海底のノウハウまで「役に立つ」と銘打って注入。明らかに怪しいが、最初はそこそこ効果を見せて街は活気を帯びる。
ひかりは久々に「上手くいくかもしれないわ……」とほっと胸をなでおろしかける。メルティナも「意外と事故が起きていない」と呟く。だがバルドだけが「こんな短期間であれこれ導入しすぎだ、どこかに穴がある」と警戒を解かない。
◇
すると、統合的な管理システムを動かし始めた矢先に、不協和音が続々と噴出する。中規模の街で電力が過剰負荷になり、天候制御装置が変調を来たし、豪雨や暴風が起こる。別の町では簡易海底リゾートとして川を大改造した結果、水の流れが逆流して洪水が発生……。もちろんこういう事件は銭丸にとっては“珍しくもない”だが、地方住民は初めての大惨事に混乱をきたす。
銭丸は「まあまあ、あちこちで問題起きるのはいつものことさ」と意に介さず、より規模の大きい統合計画――**“地方同盟都市を大連結して王都を越える経済圏”**を生み出そうと踏み込む。バルドが「もうやめろ!」と咎めるが、「ここを止めたら借金返済もままならないだろ?」と、まるで耳を貸さない。
◇
最終的に、複数自治体をまとめた“地方連合”の中心地として、銭丸が**巨大な“地方再生会館”**を建設することを決定。全ての技術をそこに繋いで集中管理し、商取引と観光、インフラ運営まで一括に請け負う狙い。まるで地方版「国会議事堂」兼「巨大テーマパーク」のような設計図だと、ひかりが見て目を回しそうになる。
建物が完成すると、開館式に大量の客が押し寄せる。投資家や住民が「こんなに立派な施設が……」と驚き、銭丸は高い壇上で「これこそ、財政破綻を逆手に取った奇跡の策だ!」と宣言。バルドとメルティナが内心バクバクしている最中、装置が起動し、一斉に電力や通信、魔導システムが稼働を始める。
その瞬間、各町から送られてくるエネルギーが急増し、会館内の“統合端末”がオーバーヒート。メルティナの警告は無視され、銭丸が「あともう少しだ、ここを越えれば大成功!」とスイッチを押し込んでしまう。結果、全地方からの電力・魔力・水圧などが一気に集中し、建物内部で配管や回線が弾け飛び始めた。
バルドが「やっぱりか……」と駆け回るが、間に合うわけもない。水が溢れ、火花が走り、愛の結晶や電脳端末まで組み込んだせいでデータの暴走も起こる。音の嵐と水蒸気が立ち、そしてお約束の大爆発フラグが立つ。
◇
最後に銭丸は、舞台上であれこれ制御を試みるが全然反応しない。大勢の客が絶叫しながら逃げ惑うなか、彼だけが「なんでだよ、地方を救うんじゃなかったのか!」と喚く。天井が崩れかけ、配管から水とガスが噴射、魔導回路が超加熱して閃光を放つ。
いつもの定番台詞が漏れる。「カ、カネは……裏切らない……女は……たまに……裏切る……。財政破綻は……爆死ッ……!!」
ビリビリという大放電が爆心を貫き、次いで巨大な火柱が会館のドーム屋根を突き破って高く打ち上がる。内部の機械や人々が吹き飛ばされる形で大規模連鎖爆発が走り、遠目にはまるで火の粉の花火が昼間を覆うほどに激しい破壊。すべての部屋や設置物が跡形なく吹き飛び、またしてもお約束の廃墟と化す結末だ。
◇
翌朝、王都から駆けつけた騎士隊と生き残りの町民が現場を見るが、ほぼクレーター状の残骸が広がっているだけ。自治体の再生どころか、町の財政はますますダメになったという報告が相次ぎ、そこかしこで落ち込む住民たちの姿が。言うまでもなく、銭丸の姿は見つからないし、バルドやひかり、メルティナも辛くも生き延びたものの負傷が絶えない。
「またか……どうしてこんな結末になるんだ」と肩を落とす人々に、“あの男が死んだのか?”という問いはいつもの答えしか返ってこない。「あんな爆発なら生き残るはずない。でも銭丸だし……」という苦々しい囁きだ。
結局、「地方再生を謳って財政破綻を逆手に取ろう」とした壮大な企ても、いつものように大爆死で終了。むしろ“破綻を加速させた”という皮肉をつけ加えるしかない。
王都の人々はまた一度、同じドラマを繰り返した感覚を味わいつつ、「今度こそもう出てこないだろう」と言い合うが、一方で「いや、あの男のことだから」と苦い笑いを浮かべて散っていく。こうして“財政破綻を逆手に取るド級ビジネス”すら燃え尽き、灰になるのも銭丸の運命だった……と、またひとつ“爆死伝説”が積み重なっていくわけだ。
輪廻のループとも思える“爆死の旅”は、今回も淡々と崩壊を繰り返し、周囲に大量の損失をもたらすだけで終わる。何度同じ言葉を聞こうとも、人々は空しくため息を漏らし、そっと現場を後にするのが通例であり、王都の空はいつものように乾いた風が吹きすさんでいた。




