第91章「時空オークションで爆死!? 幻の財宝を巡る狭間の大惨事」
「何度も死んで蘇って、気づいたんだ。やっぱり人は“金”に目がないんだよな。ならば、いっそ時空を超えて集めた珍品を競りにかけ、超高額で売りさばく“時空オークション”を開けばどうだ? みんな自分の欲しいお宝を過去や未来、あるいは異世界から手に入れられるってわけだ。大成功間違いなしじゃないか!」
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王都の片隅にある焦げた倉庫跡で、黒峰銭丸が得意気に声を張り上げていた。隣にはいつもの仲間、水無瀬ひかり、バルド、メルティナが陣取り、まるで“またか”といった眼差しで彼を見つめている。過去に何度も大規模ビジネスを立ち上げ、毎度派手な爆死を遂げてきた銭丸だが、今回もまるで懲りた様子はない。
「時空オークション……まさか、“時間や異世界の狭間”から、希少品を持ち帰るってことですか? そんな無謀な行為は、以前のタイムゲートやパラレル次元で大失敗してますよね。しかもオークションにかけるって、一体どこから何を集める気なんです?」
ひかりが書類をパラパラめくりながら呆れ半分で尋ねると、銭丸は笑う。
「ふん、前回までの失敗は、ただ持ち帰って爆死してたからだ。今度は“売る”んだよ。しかも時空を超えた誰も知らない秘宝なら、きっと莫大な値段がつくだろ? みんな欲に目がくらんで出資してくれるさ。爆死? もう散々やったろ、今度こそ俺は死なねえよ!」
バルドはそっと低い声で「毎回同じセリフを聞いてる気がするが……」と漏らし、メルティナは「時空をいじるほど大きな装置が要る。再び次元ゲートやタイムゲートを使えば、また大事故は確実なのに」と心配を重ねる。けれど銭丸は「やってみなきゃ分からんさ!」と高らかに宣言してしまうのだった。
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計画概要はこうだ。銭丸は再び闇ギルドや裏金筋から資金をかき集め、「時空操作装置」をベースに、以前のパラレル次元プロジェクトで余った転移ゲートやタイムゲートの残骸をすべて再利用。そこに星霊術の補助や、竜の次元封印の一部など、いわくつきのパーツを接合し、**“時空コレクター”**なる巨大機械を組み上げる。
それを使って“歴史や別世界”から名だたる宝物を引っ張り出し、一箇所に集める形でオークションを開催。落札できれば持ち帰り、錬金術みたいに莫大な利益を得られる――という筋書きだ。ひかりは「これはもう時空を好き放題する大規模犯罪では……?」と頭を抱えるが、銭丸は「客が喜ぶなら何でもアリさ!」と笑い飛ばす。
バルドは警備隊をまとめるが、時空に関わる以上、その範囲すら未知数。メルティナが“大規模トラブル”を防ぐために安全装置を入念にチェックするが、なんせ寄せ集めのゲート装置なので何が起こるか分からない。彼女が「もう毎度同じ流れだけど、今回ほどヤバいのはない」と声をうわずらせるのを、銭丸は「言いすぎだろ」と軽くあしらう。
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オークション準備が進み、王都の大広場に仮設ドームが建てられる。銭丸が宣伝を打ち、「時空の狭間から秘宝を取り寄せ、大競売!」という触れ込みに、大勢の好奇心に満ちた貴族や闇商人、冒険者が集まってくる。見たことのない宝物が出るかもしれないと、皆そわそわ。
当日になると、銭丸が壇上に上がり、「皆さん、お集まりありがとう! 本日の目玉は、誰もが欲しがる時代や世界の秘宝だ。ドラゴンの卵に神の遺物、未来文明の兵器まで、なんでもアリだぜ!」と煽り、一同を沸かせる。ひかりはすでに「悪い予感しかしない……」と冷や汗。
メルティナが裏で“時空コレクター”を起動し、各種ゲートを順番に開いて“宝”を引っ張ろうとするが、すでに最初から負荷が高く、火花や異音が走る。バルドが「もっとゆっくりやれ!」と怒鳴るが、銭丸は「客が待ってるんだ。やれ!」と急かす。
結果、最初に呼び出されたのは、竜の秘境で使用されていたという“赤い宝玉”。確かに珍しそうだが、手にした瞬間に灼熱の熱が走り、競り人が悲鳴をあげて投げ出す。落札しようとした客たちは恐れをなし、オークションが一時混乱。だが銭丸は「大丈夫、大丈夫」と笑い飛ばし、次の品を呼び出す。
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次に出てきたのは海底ビジネス時代に関連する“海王の真珠”らしき巨大な貝殻だが、中から腐った海水があふれ出し、周囲が悪臭に包まれて悲鳴が上がる。さらに電脳空間の端末らしき黒箱が出現した途端、オークション会場の看板にノイズが走り、妙なホログラムが出てきて客を混乱させる……と、最初からトラブル続出だ。
それでも銭丸は「これこそ時空オークションの醍醐味だ!」と空元気で進め、観客の大半は興味本位で見守るが、中には実際に落札して宝を手にしようとする者も出る。だが宝物にはろくに管理されていない呪いや高熱が仕込まれていたりで、大混乱が加速していく。
やがて機械が負荷限界に迫り、メルティナが駆け寄る。「このまま色んな時空を無作為に繋げば、かつての大惨事が再現されます! 停止したほうがいい!」と声を張り上げるが、銭丸は「これから高額落札が見込めるのに止められるか!」と一蹴。客も「次の品を早く見せろ!」と騒ぐ。
そうして“星の欠片”だの“悪魔の書”だの、どんどんやばいブツが引き出されるうち、ついに時空コレクターが“本来繋がるはずのない世界”を引っ張り、致命的な何かを呼び出す流れとなる。
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装置のエラーランプが真紅に点滅し、メルティナが制御パネルを操作しても停止せず。ゲート内に異様な影が映り始め、巨大な怪物か、あるいは星霊か、あるいは竜や神の亡霊が合わさったような形状が覗く。バルドが見て「これは……」と呆気に取られるほどの禍々しさがあり、観客が一気に逃げ腰になる。
銭丸は後じさりしつつも「あ、あと一歩だ……こんなのどうとでもなる……」と口走るが、そのとき装置が猛然と火花を散らし、ゲートが変形して激しい衝撃波を発生させる。会場中が爆風に煽られ、天井から外壁まで吹き飛ぶ危機的状況に。
お約束の展開で、銭丸は舞台中央に引き寄せられ、最後にすがるように叫ぶ。「……くそっ、またこうなるのか? なぜ俺はいつも……ああっ……!」
いつもなら最後に余裕ある“カ、カネは……”の台詞を言うところだが、今回は叫ぶ前に強烈な衝撃波が舞台を一瞬で瓦解させる。だが、どうにか言葉の断片が届いたようで、バルドが“あっ、またか……”と思うより先に会場全体が閃光の塵に包まれる。
かろうじて彼が漏らした文句が耳に入るか入らないか——
「カ、カネは……裏切らない……女は……たまに……裏切る……。時空オークションは……爆死ッ……!!」
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時間にして数秒間の連鎖爆発が起こり、ゲートから侵入しかけた怪物や異世界の物品もろとも、ドームが大破壊に呑みこまれる。観客は四散してどうにか逃げるが、多大な死傷者が出る。翌朝、そこにはやはり瓦礫の山と、得体の知れない異界の残骸が混ざった廃墟が広がっているだけだ。黒峰銭丸の姿はやはり跡形もない。
王都の住民はおなじみの乾いた笑いとともに「これで何回目だ?」「今度こそもう戻らないだろう」と口にするが、「あの男だし……」という言葉が喉元で止まる。何度同じことを繰り返してきたか誰も正確に覚えていないほどだ。
こうして“奇跡の逆襲”を謳った時空オークションは、またもや最大級の大爆発オチを迎え、初回オープンにして終わりを告げる。どうやってもまともに終わらないのが銭丸の常であり、輪廻からの脱却など夢のまた夢。今度もまた、借金と混乱を招いて“いつもの結末”になっただけだった。
人々が壊れた跡を静かに見つめる中、「次こそは本当に無理だろう……」という声と、「いや、またあの男は帰ってくる」と苦笑する声が交錯する。水無瀬ひかりとバルド、メルティナも疲れきった面持ちで、それでも「もう一度だけは救われてほしい……」と囁くようにつぶやくが、彼らにはどうにもできない。
結局、黒峰銭丸はまだ“爆死の輪廻”から抜け出せず、また懲りることなくどこかで来るに違いない。そうやって王都の人々は面倒くさそうに散っていく——“歴史総ざらいの先にやってきた時空オークションですら、やはり爆死”という事実を、もう笑うしかない形で受け止めるのが精一杯だった。




