表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
84/100

第84章「最後の晩餐で爆死!? 全知へ挑む饗宴の虚無」

 「終焉まで商品化しちまったけど、結局また爆死に終わった……なんてオチだとは、正直俺も思ってなかった。けど、もうここまで来ちまったら、“あらゆる知識と力”を一挙に取り込んで、すべてを支配するしかねえだろ? そうだ、今度は“全知全能”を自分のものにして最後に大儲けするんだよ。爆死だって、もう二度と縁がなくなるはずなんだ!」



 王都の外れにある焼け焦げた廃墟の一角。何度となく大騒動を起こし、焼け野原と化してきた場所だが、またしても黒峰銭丸はしぶとく姿を現していた。周囲には疲れ切った面持ちのいつもの仲間、水無瀬ひかり、バルド、メルティナがそろっている。彼らは何度も続いた“爆死”の末に、この男が今度こそ本当におしまいでは……と思うたび、なぜか生き延びて戻ってくる光景に慣れつつあった。


 「全知全能の力を手にすれば……今までの苦労も借金も、みんな一気に解決するってわけですか。でも、そんな無茶な理屈が通るんです?」

 いつも冷静なひかりが呆れた様子で確認する。

 「それが通るかどうかを試すのが商人の使命ってもんさ。要は、“この世界の全知”を一か所に集めて俺がまとめて吸収すれば、爆死を超えた“超再生”が可能だろ? 金も女も裏切らない。最高じゃないか!」

 銭丸が鼻息荒く断言するが、バルドは顔をしかめ「何をどうすればそんなことが可能なんだ」と低くつぶやき、メルティナは半ば呆れ顔で「“全知”をまるごと掻き集めるなんて、世界の根幹を揺るがす行為ですよ……」と警告を続ける。だが、彼の聞く耳はない。



 今回の計画は名付けて「最後の晩餐プロジェクト」——この世界のありとあらゆる知識、記憶、力を呼び寄せ、一か所に集めて“饗宴”の形で銭丸が取り込むというのだ。そのために、王都にある図書館や魔導研究所、神殿や闇ギルド、さらには異世界やら霊界やらに散らばる知識の断片まで、かき集められるだけ集めようとしている。

 「世界の全知を一つのテーブルに並べ、俺が全部味わう。それを“最後の晩餐”と呼ぶわけだな。これさえ成功すれば、爆死なんか何度来たってイチコロだろ? 俺はすべてを見通す目を得て、生き残って大儲けさ!」


 ひかりはまたも文句を言いつつも、毎度のように借金の調整やら出資の手配を引き受けざるを得ない。バルドは護衛をまとめて、「何かとんでもない厄災を呼び込むぞ」と不安を拭えないまま準備を進める。メルティナが研究所から古文書や“知識の結晶”らしき品を運び出しつつ、「こんな無茶な“知の集積”をしては世界がおかしくなる」と嘆いても、銭丸は「大丈夫、俺は死なない!」で押し通す。



 具体的なやり口としては、王都の中心に巨大な円卓を用意し、そこにあらゆる知識の象徴たる品物を並べて儀式を行うのだという。図書館の聖典や禁書、魔導研究所のメインサーバー(水晶コンピューティング)、神殿の秘宝、さらに竜や天国・地獄から持ち込んだ断片など、過去に銭丸が手を染めてきた失敗プロジェクトの残骸を総動員し、一堂に並べる。

 その円卓を“最後の晩餐”の会場に見立て、銭丸が中央で儀式を始めることで、それらの持つ知識と力をすべて取り込もうという算段。ひかりは顔を引きつらせ、「こんな狂気の宴、絶対やばいですよ……」と連呼するが、誰も止められない。


 そして儀式の日、大量の人々が野次馬で周囲に集まり、バルドの警備がそこここに配置される。円卓の上には本や石版、魔導具、血の滴る魔獣の臓器、結界アイテム、闇ギルドの呪符など、まるでゴミの山のように陳列され、しかしそれぞれが“世界のあちこちから集まった力”を持っている。メルティナが正気を失いかけた表情で「これ、絶対融合なんかできっこない。暴走どころの話じゃない」と自分に言い聞かせるが、最後まで止めるすべはなかった。



 やがて銭丸が登場し、円卓の中心の特等席に腰を下ろすと、周囲の空気が一変する。持ち込まれた魔導具や結界アイテムが勝手に発光しはじめ、神殿の秘宝と地獄の欠片が干渉して火花を散らし、禁書や竜の鱗が共鳴するかのようにビリビリ震えている。

 最初は見るだけだった人々が、その光景に圧倒されつつ後ずさりし、バルドは「皆、離れろ!」と叫ぶも、好奇心を抑えられない者も多い。ひかりが遠巻きに「お願い、もうやめて……」と小さくつぶやくが、銭丸は高笑いをあげて合図を送る。


 合図とともにメルティナが仕方なく儀式を始動させ、各種の魔導具を連動。禁書の呪文が低く響き、円卓周囲に魔法陣が幾重にも展開され、闇の煙や聖なる光が入り混じる。すべての力をひとつに束ねるため、回路がきしむ音が聞こえ、あちこちで火花や悲鳴が起きる。

 その真ん中で銭丸は瞳を輝かせ、「見ろ……世界の知識が俺に集まりつつある……!」と興奮に震える。



 しかし、集中した様々な力は想像以上の負荷を相互に掛け合い、次第に狂乱をはらんだ衝突を引き起こす。円卓上の物品が勝手に融合し始め、魔導具と血の臓器が混じり合って怪しい形状を作り出し、禁書が何かの声を発してページをひとりでにめくり続ける。

 「これはまずい……!」とバルドが思わず叫ぶが、もう遅い。メルティナが泣きそうな顔で「抑えきれない……呪文が暴走してる!」と声を震わせる。円卓周りにいた野次馬たちが悲鳴を上げて四散する中、銭丸はまだ「大丈夫、俺は爆死しない……爆死のループを抜けられるんだ!」と言い張る。


 しかし、まもなく“融合”が最高潮に達し、すべての力がひとつの塊へ圧縮されるかのような過程を経て、円卓が青白く光り輝く。まるで世界の基盤がそこに収束しているような感じを受け、周囲の空間が歪む。その頂点で“創世”にも似た力が生まれるかと思いきや、同時に“破滅”の力も倍増し、結果として暴走を止める手段がなくなるのは当然だった。



 最後の一押しとばかりに、銭丸が円卓の真ん中で手を突き上げ、「今こそ俺は全知全能を手に入れる!」と高らかに叫んだ瞬間、真っ黒なクラックが空間を走り、そこから猛烈なエネルギーが逆流する。似たものを何度も見てきたバルドやひかりは絶句しつつ、最悪の結末を悟る。

 ズドンという大音響が発生し、光と闇が混じり合い、円卓が真っ二つに割れながら、そこからすべての呪文や魔力、闇や聖なる力が一斉に吹き出す。世界各所の要素を持ち込んだせいで混ざり合わない成分が大量に爆縮し、巨大な衝撃波を伴う爆裂が広場を中心に起きる。


 銭丸はまさにその爆心地に立ち、いつものように被害をまともに受ける形だが、最後の最後に声を振り絞ったかのように呟く。「カ、カネは……裏切らない……女は……たまに……裏切る……。終焉の輪廻は……爆死ッ……!!」

 すでに「終焉の終焉」を超える無茶苦茶な破壊力が円卓から巻き起こり、辺り一面を断末魔の轟音と火柱が埋め尽くす。古文書や魔導具が吹き飛び、呪詛と祝福が混ざったような閃光が街を切り裂くイメージで、地面がドーナツ状に抉られ、バルドたちが必死に逃げるのがやっとだ。



 翌朝、現場には例の如く大穴と焼け跡が残り、円卓もろとも消失した状態だった。言わずもがな銭丸の姿など見当たらない。何度目か分からない爆死にしても、これだけの破壊規模を見せつけられると、さすがに生きていようはずがないとみなが思うが、「いや、もう彼の爆死には何度騙されたことか……」という声も絶えない。

 メルティナがまだ涙を浮かべながら、「あんなに色々な力を混ぜれば、そりゃ暴走するに決まってる」とうめき、バルドが脇で「まあ、またいつか甦るんだろう」と苦笑。ひかりも「これで輪廻が終わるとか言ってたけど……本当に終わるのかしら」と首をひねる。


 こうして、世界のあらゆる知識と力を詰め込んだ“最後の晩餐”も、またしても大爆発であっけない幕を下ろす結果となった。銭丸の執念は毎回同じパターンを辿り、それでもまるで終わらないループの中にあるかのよう。どんな壮大なアイデアを掲げても、最後は地獄絵図さながらの爆死——これこそが黒峰銭丸という男の運命なのだろう。

 その爆心地のどこかには、破れた契約書と溶けた魔導装置が散らばっている。人々はひそかに「今度こそ、これで終わりなんじゃ……」と願うが、しかし同時に「まあ、彼のことだから」と苦笑に似た吐息も漏らしていた。こうして再び多くの人が被害を受け、膨大な借金やトラブルが王都を震撼させるなか、爆死伝説の輪が一層深みを増していくばかりなのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ