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第83章「終焉の終焉で爆死!? 輪廻を超える最後の大騒動」

 「宇宙樹だろうが神の玉座だろうが、もう何度爆死してきたか分からねえ。けど、これだけ繰り返してもなお生き延びてるってことは、何かしら因果か輪廻か……そんな力が働いてるんだろ? だったら、今度は“終焉”そのものを商売にすればいいんじゃないか。世界が何度終わったって、俺は爆死から生き返っちまうんだから、だったら“終わりを商品化”して大儲けするしかないだろ!」



 王都郊外の廃墟地帯で、黒峰銭丸はいつものように懲りずに大言壮語していた。近くにはおなじみの仲間たち——水無瀬ひかり、バルド、メルティナ——がいて、これまで八十数回もの“爆死”に巻き込まれながらも流れでついてきてしまった者たちだ。彼らはすでに何度呆れ、「今度こそ終わりだ」と思わされてきたか分からないが、またしても新たな無謀な企みが耳を打つ。


 「終わりを商売に……って、また突拍子もない話ですね。世界が終わるとか、自分が爆死するたびに生き延びてるのは分かってますけど、それをどうやって“商品”にするんですか?」

 ひかりが資料をめくりながら半分呆れ気味に尋ねる。銭丸はニヤリと笑みを深める。

 「今回のプランは“世界が終焉を迎える体験”を客に味わわせるんだよ。大災害だの宇宙崩壊だの、どれだけ壮大な破滅を見ようが、結局俺は生き返ってきただろ? だったら“終焉体験アトラクション”を作って、客をそこに案内して、ギリギリで助ける——そんな演出を繰り返せば大興奮の商売になるはずだ。爆死のプロが企画すれば、リアル感は申し分ない!」


 バルドは苦い顔で「そんなもん、失敗したら本当に大惨事になるじゃないか。そもそも“終焉”をわざと引き起こすのが安全に収まるわけない」と呆れる。メルティナは「膨大な破滅要素を人為的に作るなんて……まるで自殺志願みたい」と背を震わせるが、銭丸は「何度も言ってるが、俺は死を超えてるから平気だ。何とかなるさ」と肩をすくめるばかり。



 こうしてスタートしたのが「終焉の終焉プロジェクト」なるもの。王都の廃墟をベースに、過去の“爆死案件”で使った魔導装置の残骸や、次元ゲート、星霊術、人工頭脳など、各種の失敗作をすべて持ち寄り、“擬似的な世界終末のシミュレーション”を人工的に起こそうとするプランだ。

 銭丸の狙いは明確:この巨大装置を稼働させて世界が滅ぶ寸前の光景を再現し、それを客に見せる。しかし必ずや“謎の力でぎりぎり助かる”というシナリオを組み込んで、「死なない恐怖体験」を提供するテーマパークにしようという話である。ひかりが大慌てで「そんなもの、成功するわけが……」と止めようとするが、彼は「爆死から復活してきたノウハウを活かせば、案外いける」と強行突破する。


 バルドやメルティナが渋々仕事を受けて設備を用意するが、そこには今まで以上に危険な匂いが漂う。なにしろ過去の悲劇の遺産を再利用して“終わりの光景”を再現しようなどと、正気の沙汰ではない。だが銭丸は「客は必ず喜ぶ。俺は死なないし、爆死など卒業だ!」と息巻くのだった。



 やがて、その奇妙なテーマパークが形になっていく。廃墟の広場を改装し、中央に超大型の“終焉装置”を据え付けて、その周囲に観覧席や安全ルームが設置される。装置を起動すると、これまで銭丸が引き起こしてきたような破滅的災害(竜のブレス、時空崩壊、星霊爆発など)が再現され、最高潮に達したところで“ギリギリ奇跡”を起こして中断するという仕組みらしい。

 メルティナは安全対策として緊急停止スイッチを幾重にも備え付けるが、彼女自身「こんなもの本当に制御できるのか」と疑わざるを得ない。バルドが「一歩間違えば現実の災害になって取り返しがつかないぞ」と怒鳴っても、銭丸は「そこがスリルという商品だ」と強引だ。


 オープン初日、王都の奇特な客や貴族、冒険者の一部が興味本位で訪れる。案内所では「最終兵器の欠片を再現」「伝説の大爆発を再体験」「竜や悪霊の襲撃を味わえる」といった煽り文句が並び、まるで巨大アミューズメントパークのノリ。客たちが指定の観覧シートに座ると、銭丸が「それじゃいまから“終焉体験”を始めるぞ!」と息巻く。

 最初の演出は星霊爆発を小規模に再現する仕掛け。華やかな光が空に舞い、客が歓声を上げる。さらに竜の咆哮や魔獣の叫びを幻視させる音響システムまで稼働し、過去の惨事をシュミレートした映像(魔導ホログラム)を見せる。その臨場感が予想以上に高く、客たちが「これは凄い!」と興奮する。



 だが、銭丸は“もっと派手に”という欲求を捨てきれず、装置の出力を想定以上に上げてしまう。メルティナが「まだ調整が終わってません!」と止めても、彼は「この程度なら大丈夫」「俺は死なないし爆死しない」と繰り返すだけだ。その結果、あちこちでデータが衝突し、装置の内部が負荷を抱え始める。

 そのうち、過去に使った人工頭脳や次元ゲートの破片から“混在プログラム”が動き出してしまう。再現映像だけのはずが、本物の時空崩壊や魔物侵入が部分的に起き始めたという報告が入る。バルドが顔色を変えて「施設内に異常が——どうする!?」と駆け寄るが、銭丸は「大丈夫、ショーの一環だよ」と軽視。


 やがて、現実の裂け目がステージ上に生じ、ほんのはずの幻影モンスターが実体化。客が悲鳴をあげて逃げ惑うが、それさえも銭丸は演出だと思って「面白いだろ!?」と煽ってしまう。ところが、無人の装置室で複数の火花が散り、一部が誘爆を起こし始める姿をメルティナが目撃し、「本当に本物の災害になる!」と絶叫。

 ついに停止スイッチを押そうとするが、装置が暴走して指令が通らず、むしろ過去の爆死データを次々に再現するモードに突入する。空中から氷嵐が吹き下ろし、地面が割れて溶岩が噴き出す。雷雲が頭上に集まり、一角から水柱が吹き上がるなど、世界の終わりを詰め合わせたようなカオスに陥る。



 客たちは恐怖に支配され、本当に死ぬと分かって悲鳴が止まらない。観覧席が半壊し、バルドが救助に回ろうにも、その最中に別エリアでは次元ゲートが開いて得体の知れないモンスターが流入。メルティナが封印を試みるが、いつもの如く高負荷で術式が弾かれて効かない。ひかりは呆れと絶望の入り混じった声で「やっぱり……また同じだ……」と口ごもる。

 銭丸は最後まで「あれ? こんなはずじゃ……」と狼狽え、「また爆死するのか?」と現実を噛み締めつつも、どうにも制御できない事態に手も足も出ない。巨大な電撃と爆風が中央ステージで交錯し、音が消えるような凄まじい衝撃が走る。


 ここでいつものように銭丸が最後の台詞を唇で吐き出す。「カ、カネは……裏切らない……女は……たまに……裏切る……。終焉の終焉は……爆死ッ……!!」

 衝撃波と炎がそこに重なり、観覧席もろとも施設全体が大破壊に飲まれる。まるで過去のすべての爆発を足し合わせたような破滅的光景が広がり、火柱と黒煙が王都の空を染め上げる形となった。



 翌朝、依然としてそこには大きなクレーターが穿たれ、焼け焦げた鉄骨や魔導機器の残骸が転がっているだけ。もう幾度目か分からない“爆死”の最たる大騒動であり、短命なテーマパークがまたしても跡形もなく消え失せた。大勢が被害を受け、銭丸の姿はやはりどこにもない。

 王都の人々は「これだけだと流石に……」と毎回のように言うが、「あの男が本当に死んだかどうかは、また微妙だな……」とみな苦笑する。結局、今回も壮大な夢と大量の借金を残して“終焉の終焉”なる企画も大爆発で終わる。


 だが、ここまで八十数度にわたり、何度爆死してもなぜか復活してしまった銭丸を知る者は、「もしかしたらまた……」という囁きを止められない。まさしく輪廻のように繰り返す“爆死”が今回こそ最終となるか、それとも再び変貌を遂げて戻ってくるのか。

 いずれにせよ、今回の“終焉の終焉”ですら逃れられないのが銭丸の業なのだろう——そんな諦念に似た感慨が王都の人々の間に広がる。どこまで行っても結末は同じ、世界は滅びずとも彼の計画だけはいつも滅びの炎を上げて……そんな皮肉を言い合うしかないのだ、と皆が肩を落とすばかりである。

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