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第82章「終わりと始まりの融合!? 宇宙樹計画で爆死の輪廻」

 「神の玉座だろうが星々の城だろうが、結局は爆死に終わった。でも、まだ諦めるわけにはいかないんだよ。これまで散々やらかしたが、最後の“最終企画”を成功させれば、爆死の呪縛から卒業できるはずだ。俺は今度こそ“世界と宇宙のすべてを統合”し、新しい秩序を打ち立てる――名付けて“宇宙樹計画”ってやつさ!」



 王都の外れにある、かつて何度も爆発跡になっては再開発されてきた区域。そこに黒峰銭丸がまたしても奇妙な設営を始め、いつもの仲間・水無瀬ひかり、バルド、メルティナが苦い顔をそろえていた。ここまで通算数十回の“爆死事件”をくぐり抜け、それでも生き延びているのが銭丸の恐ろしさでもあり、周囲が彼の不死ぶりを疑うほどだ。今回もまた、馬鹿げたほど壮大なプロジェクトをぶち上げている。


 「宇宙樹計画って……なんです? 聞いたことないんですけど」

 ひかりが呆れ顔で書類をめくる。そこには見慣れない設計図が散らばり、何やら“世界樹”や“次元ゲート”の文字も入り混じっている。

 「神の玉座や星々の城を目指したけど失敗した。だから今度は、それらを全部取り込む巨大な“樹”を作るんだよ。木の幹が次元や星界をつらぬいて、この世界を統合する大樹――つまり“宇宙樹”さ。そいつが完成すれば、死だの爆死だのは超越できるはずだろ!」


 バルドは大きくため息をつく。「いつも同じように『今回こそ爆死じゃない』と言いながら最後は大崩壊してるじゃないか……。大樹を作るっていうけど、どうやって? 苗木でも植えるのか?」

 銭丸はニヤリと笑う。「魔導研究所がこっそり保管している“創世の種子”という代物があるらしい。古代神話で“世界を支えた大樹”を芽吹かせる力があるとか。あれを使い、さらにいままで手を出してきた次元技術や星霊術をブレンドすれば、大樹が空も次元も突き抜ける巨大存在に育つに違いないんだ。そして幹の上に新たな都市を作って、全世界をまとめて支配する――完璧だろう?」


 メルティナは目を覆うように項垂れる。「創世の種子なんてろくに扱えるものじゃありませんよ。下手したら生態系や現実法則まで大きく書き換える恐れがあるのに……」

 銭丸は「それがいいんだよ」と言わんばかり。「いつもの爆死サイクルなんて、世界そのものを書き換えれば卒業できるはず。大丈夫さ、俺がやるんだ!」と自信満々で言い切った。



 そうして“宇宙樹計画”が始まり、銭丸は例によって資金をかき集め、裏ギルドや闇金にも声をかけ、こっそりと魔導研究所の奥深くから“創世の種子”を入手する。場所はかつて星々の城の基礎を作ろうとして廃墟になった跡地で、そこにはまだ一部の転移装置や魔導炉が残っていた。

 バルドが周囲を警戒し、メルティナが種子を入手した段階で「これをどうやって発芽させるか検討してるんですが、単に土に埋めてもダメらしい。莫大な魔力と、世界の核となる概念が必要とか……」と述べる。銭丸は「それなら次元ゲートも星霊装置も全部使えばいいじゃないか」と安直に答え、いつもの無茶ぶりが始まる。


 こうして廃墟跡が再び大工事の現場となり、転移装置や星霊陣、さらに竜の秘境で使った封印を応用したパーツまで雑多に持ち寄り、中央に“創世の種子”を置いて養分を注ぐ計画に移る。まるで過去の爆死のデパートみたいな装置がひとつに集結し、「これは本当に大丈夫なのか」とバルドも頭を抱えるが、銭丸は「全部を生かせば最強だろ?」と自信まんまん。



 土台が整い、いよいよ種子を“起動”する段階になると、周囲の空気が重々しく震え始める。メルティナが多種多様な魔力を連結し、装置を稼働。星霊術や次元ゲートの力までダクトのように通す形で種子に注ぐと、種子がドクンドクンと光り出し、まるで生体のように揺れ始めた。

 最初は乏しい芽が伸びるように見えたが、見る見るうちに幹が土から飛び出して天へ向かい、大きく伸びていく。あっという間に高さ数メートル、十メートル、それ以上へと急成長し、周囲の作業員が歓声を上げる。「すごい、こんな短時間で!」と興奮に沸き、銭丸はいつものニヤニヤ顔で「ほら見ろ、成功だ」と得意満面。


 ところが、この成長が止まらない。マジで天を衝くほどの勢いで幹が太く高くなり、地面を割って根が広範囲に広がる。わずか数時間で周囲の建物を押しつぶし、枝が空間に浸食していくように伸びていった。バルドが警戒を強めるが、もう制御が効かない。

 やがて幹に“宇宙の輝き”じみた星状の模様が浮かび、一部の枝は青い炎を纏って大気を焼き、一部の根は地面を穿って溶岩じみたものを噴出させるなど、カオスそのものだ。メルティナが「やっぱり……世界の法則を乱し始めてる!」と真っ青になる。



 成長がさらに過激化すると、空間が歪み始め、木の上のほうに浮かぶ葉や枝が異世界や星霊術の要素を取り込み、“枝の先に小さな惑星”がぶら下がってるような奇妙な光景が生まれだす。地面付近でも、いろんな時空の断片が混ざり合い、過去に銭丸が使った装置の残骸や幻獣が姿を現して人々を怯えさせる。

 銭丸はそれを見て最初こそ「すげえ……大樹が複数の世界を統合してる!」と喜んでいたが、制御なんて一切きかない状態で、暴走はますます加速。バルドが「逃げなきゃまずいぞ」と焦っても、既に周囲は枝と根が繁茂して回廊みたいに絡み合い、行き場を失っている。


 この時、樹の“幹”からごうんごうんと脈動の音が聞こえ、根元の施設が一挙に吹き飛ぶほどの衝撃波が走る。まるでこの大樹自体が世界の意志を取り込もうとしているかのように、根が光を放ち、空間が上下逆転するエリアが生まれ、大勢の作業員が宙へ放り出されて消える。メルティナが絶叫しながら「やっぱり、バカな融合は無理がある!」と声を張り上げる。

 ひかりは顔を伏せて「どうせ爆死するんだ……」と落胆を隠せないが、銭丸は最後まで足掻く。「くそっ、このままじゃ……俺の新世界が……!」という悲痛な声が、轟音の中でかき消されるのは時間の問題だった。



 ドォンという地鳴りが響き、樹の上部から信じられない規模の枝が天を裂くように突き出し、地上にドッと振動が襲う。建設した魔導装置や転移ゲートが連鎖的に火花を散らし、次々と誘爆。根元から吹き出る高エネルギーがマグマのように周囲を溶かし、枝先にぶら下がった星々の破片が落ちてきて地面を砕くという、滅茶苦茶なカオスが巻き起こる。

 やがてメイン幹が白熱し、自らの重量を支えきれずにバリンという音を立てて亀裂が走る。爆発的な魔力がそこから噴き出し、まるで超巨大な火柱を伴う倒木のように、幹が崩れ落ちる局面に突入する。空が暗転し、大地が割れ、瓦礫と根と星の欠片がすべてをなぎ倒す姿は、まるで世界の終焉だ。


 銭丸はその衝撃で空中へ放り出されながら、かろうじて最後の断末魔を上げる。「カ、カネは……裏切らない……女は……たまに……裏切る……。宇宙樹計画は……爆死ッ……!!」

 白い閃光とともに中央幹が大崩壊を起こし、巨大な質量が地面に衝突して、史上まれに見る破壊的な爆炎が一挙に吹き上がる。根や枝の破片が下から突き上げる爆風に巻き込まれ、作業員やゴーレム、機材の山が宙を舞った。



 翌日。現場は直径数百メートルにも及ぶクレーターと、焦土すら通り越したような荒れ地が広がり、あの巨大樹は完全に粉々に砕け散っている。星の欠片や時空の歪みみたいな残留物も確認されるが、具体的には何がどう混ざり合ったのか誰にも分からない。ただ確かなのは、またしても銭丸の姿は見当たらないし、膨大な資金と多くの人が巻き添えになったという事実だけだ。

 人々は「あんな破滅的な爆死、さすがにもう生きてるはずがない」と口にしながらも、「だが、あの男だから……」と苦い顔を浮かべる。どこまで足掻いても最後は爆死に終わる姿を何度も見せられた以上、本当の最期なのか誰も確信を持てない。


 こうして“全宇宙を一本の大樹で結ぶ”という大妄想も、過去最大級のカタストロフをもたらして終了。王都史の数々の惨劇のなかでも屈指の規模となり、多大な負債と犠牲を残す。もう誰もが呆れ果て、「これだけ大爆発したらさすがに……」と口をそろえるけれど、懲りずに戻ってくるのが黒峰銭丸という男でもある。

 その後の焼け跡からは、魔導装置の破片と破砕された種子らしき欠片が見つかるのみで、植物の姿はまるで見当たらない。「本当に宇宙樹を育てようとしたんだな……」と人々は舌を巻くが、結局はいつもの大破壊オチという点に変わりはない。

 もし銭丸が懲りずにまた新たな計画を思いついて戻ってくるとしたら、それはもう世界の輪廻か因果か。しかし「爆死の輪廻」から抜け出す希望は、やはり限りなく薄く、人々はただまたかと肩を落とすばかりである——この八十一度目(あるいはそれ以上)の爆死を経て、なお循環し続ける男の破滅譚に、果たして終わりはあるのだろうか。

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