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第一話 邂逅


ぐっすりドリーミングな俺に天使ミカエルサマ?の声が囁く。

ハッキリとは聴こえないが、これだけは分かった。

「人を…殺さないで…お願い…」

人を殺すだってぇ?幾ら夢とは言えど。ミカエルサマよ。

俺はあんたが想像してるよりもいい人間をやらせて貰ってるぜ?

唯一の欠点を挙げるとしたら…俺が弩級にシチューが好きってことぐらいだ。これは俺の夢だ。夢なら神様に何を言っても怒られないだろう。怒られたらシチューをご馳走させてやるだけさ。

「ミカエルさんよぉ。何年間もお疲れ様です。十分に、人を殺してはいけないと言う事を心得ましたので、金輪際。俺の夢に出てこないで下さいませ。…では!俺は朝御飯のシチューの仕込みをしないとなのでバーイ!」


時刻は午前6時 晴天ナリ 昔風に言えばマルロクマルマルですな。

おっと…自己紹介が遅れたな。俺の名前は古河結弦ふるかわゆずるだ。

惰性に過ごしていた大学を卒業して故郷である兵庫県を離れて神奈川に引っ越した。

所で、読者の皆様に質問なんだが…

もし…もしだぜ?自分の引っ越したアパートに幽霊が宿ってたらどうする?普通の人なら腰を抜かして叫ぶだろうが。俺は驚かない。何故なら俺はシチューが好きだからな。幽霊が怖かったらシチューを喰えって言うだろう?しまった!こんな質問で時間を潰せる余裕なんて無かった!後もう少しで会社の時間だ。俺はシチュー専用の鍋を準備し、冷蔵庫を開けた。喉がカッサカサで死にそうだったからな。

「畜生!蓄膿症…なんつって。な●ちゃんの買溜めを忘れてた…最後の一本は何処だぁ~?」

ポケットに突っ込んでいた左手に冷たい感覚が宿る。少女らしき子供の声がした。

「ありましたよ…どうぞ…」

「ありがとよ♡」

俺は一人暮らしを始めて一週間目だ。人間は慣れだと言うが、寂しさだけは慣れない。久しぶりに人と会話し…は?俺は一人暮らしだぞ?この部屋には俺とシチュー専用の鍋ちゃんしか居ないぞ?

俺は恐る恐る、ジュースを渡してくれた女の子の正体を確認した。金髪のショートカットに、青空のようなキレイな水色の瞳…あの~誰でしょう?

「あの…どなたです?」

「どうも。このアパートの地縛霊やらせて貰ってます。伊吹零華いぶきれいかと申します」

地縛霊…?何それ…呪縛霊なら知ってるけれど。

初耳だな。初耳すぎて初音●クだな…なんつって

地縛霊さんは、俺の脳処理速度を無視して1人淡々と自分の情報を話し始めた。

「私には人間としての感情がありません。いえ、人間ではありませんでしたね…生命体としての感情。

悲しみ、嬉しみ、怒り、怨み、楽しみ、恋心のような感情が消え失せてしまいましたので」

145センチ程しか無い体で何を仰るのかしら…感情が無いって…中二病を拗らせたお子様だけが言える事なのです。

「私は貴方に忠誠を捧げます…ですから!此処に居させて下さい…私に居場所を下さい!」

そんなに涙を目に溜めないで…ってか!泣けるって事は感情あるんじゃ…?だが、可哀想な事には変わり無い。俺は此処の部屋の一員として加える事に。

「分かった。宜しくな!零華。俺の名前は結弦って言うんだ」

「はい!宜しくお願いしますっ!因みにさっきのは嘘泣きですので。ご主人様」

ご主人様だと…!マズイ…!!俺は女の子にご主人様と言われると興奮して意味の分からない事を言ってしまう様に…

「シチューって可愛いよな」

駄目だ…遅かった。自分でも自覚できるくらい、バカな事言ってる…シチューに可愛いもくそも無いだろうが。

「あはは♪何言ってるんですか?そんなに嬉しかったんですか?ご・主・人・様♡」

「止めろ…追い出すぞ」

「申し訳ありませんでした」

「分ければよろしい」

無表情な顔をしていたが、少し凹んでいるのが分かるくらいに落ち込んでいた。

「最近読んだ漫画の真似をすればよろしいと思ったのですが…どうやら、作戦失敗のようです」

当たり前だ。人生が少女漫画の様な展開に成るのなら、俺には既に子供が居てもおかしく無い。なんなら一夫多妻制の復権か?

俺は背中に嫌な汗を垂らしながら時計を見る。

「時刻は…午前9時41分…よし!今日は仕事休もう!そして零華!お前は今から俺と遊ぶ。いいね?」

零華は無感情なオーラを漂わせて頷いた。

俺はこいつの感情を復活させてやりたい。まずは楽しいという感情を先に教えてやるべきだ!人生、何事も楽しければなんとかなるしな!

俺が用意したゲームは…

「ぱんぱかぱーん!!お題に合うように台詞を考えようゲェェェム!!」

零華が自信満々に言った。

「成る程…簡単に言うと大喜利ですね。得意分野です。……ぱんぱかぱーん…」

ゲームの司会者になったつもりで俺は近所迷惑だというのも考えずに叫んだ。

「まずは~これっ!女の子と線香花火で遊んでいる画像です。まずは俺からボケます!」

俺はこの日のために1ヶ月前から考えていたのだ。耳をかっぽじって良く聞けぇ!

「見て…この炎が消えた瞬間。貴方の命も消えます」

俺は不覚にも、自分の言った事で大爆笑してしまった。あまりにも面白すぎて…しまったな。先に零華にやらせるべきだった。これじゃどれだけ面白い事を言っても俺のネタに書き消されてしまう。しかし、当の本人は一切笑っておらず、まるで俺のネタが下らないと言わんばかりに…言うなよ!?沈黙の虚像と化していた零華が口を開いた。

「おもんな…才能無いですね。どうせ貴方の事ですから、1ヶ月前から考えていたんでしょう?」

何故それをっ!?くっ…このままでは男が廃る…負けてたまるかよっ!

「では今度は私のターンですね。……ぱんぱかぱーん…」

さっきから思ってたけど、ぱんぱかぱーんって気に入ってるだろ…

「…ほら…あーん」

負けた…線香花火を片手に持った女の子が俺に向かって「あーん」なんて言われたらそんなの面白く無い訳無いだろ…俺は適当に言い訳をして敗北を免れなければ…

「今のは練習ね。勘違いするなよ。お前の為思ってだ」

「そうでしたか。申し訳ありません」

コホンと咳払いをしつつ、俺は新しくカードを出した。お題は…

「ぱんぱかぱーん!『こんな社会は嫌だ』です!

では、俺から行きますね…耳をかっぽじって良く聞けぇ!」

俺はカッコつけて5秒くらいの間を取って、華麗なポージングも付けて言った。

「歴史の時間は先生の過去の話しかしない」

決まったな。だって…先生が聖徳太子とかビスマルクとかそんな人の過去じゃなくて、先生自身の過去を授業として話すんだぜ?例えば、12才でノーベル賞授賞とか。お前の過去はどうでもいいんだよ!テスト範囲の人間の過去を話せ!って事で勝利は確定ですね。ありがとうございます。

「では…今度は私のターンですね。……ぱんぱかぱーん…」

相変わらず気に入ってんな。

「日付制で生徒の黒歴史を晒しあげる」

負けた…だって社会の先生が生徒の黒歴史を晒しあげるんだぜ?!嫌すぎるだろ…例えば、『今日は18日だから…18番の竹内!お前の黒歴史は…

頭文字Dの事をかしらもじDって読んでいた事だ』

嫌だろ!?負けたよ… 

「今のは俺の勝ちかな…次行くぞ!」

俺は零華に反論させる隙も与えず、次のお題を出した。

「ぱんぱかぱーん!お題は…『こんな仮●ライダーは嫌だ』です!まずは俺からボケます」

俺は変身ポーズをしつつ、叫んだ。

「変身する度に金取られる」

勝ったな。だってぇ、主人公、変身しなくなりますよぉ?零華はん~どうやって勝つつもりや~?

零華が反抗的な眼差しをして叫んだ

「バカめ…と言って差し上げますわ!……では行きますね」

早よしろ。どうせ負けるんだから

「主人公が怪人に負けるように交渉してる」

これは~どうだ?同点って所か…

「どうだ?ちょっとでも感情を取り戻せたか?楽しかっただろ…」

「いえ、全くです。結弦さんが弱すぎて話になりません」

こいつ…女の子じゃなかったらしばいてたぞ?

どうやら…自称、地縛霊の女の子の感情を取り戻すには少々時間がかかるようだな。


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