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大晦日のうっかりシロちゃん

 年末だからもう一回行動(行動)しようと思っていた。

 多分大晦日中にもう一回行動したいと思っている、などとおかしなことを呟いています。

 年末は忙しいものです。


 弁天さまとお付き合いのある皆様がたへの贈り物の手配を手伝ったり、年末の大掃除に新年のご馳走作り。


 ここ百年ちょっとは降誕祭(クリスマス)というお祭りもしれっと混じるようになったので、美味しい鶏料理や卵料理の為にシロちゃんもがんばります。



 それにくわえて、今年は急に寒くなったせいもあってか、このところシロちゃんはいつもよりちょっとだけ眠いのです。


 シロちゃんはニンゲンの図鑑に載っているような生身の蛇では無いので冬眠を必要としている訳ではありません。それでも弁天さまのお側に延べられたふくふくのお布団の上で眠れるなら、こんな寒い日々の冬眠も悪くないないものだとこの時季は思うのです。



 そんな訳で暦はいつの間にか大晦日になっていたのに、シロちゃんは忙しいくせにぼんやりしていました。


 「シロ、そろそろ出で湯で身を清めなくてもよいの?」


 忙しそうにしている、弁慶さまに侍る女の姿をした眷属の一人が声をかけてくれたのです。


 出で湯。

 最近のニンゲンの言うところの温泉ですか。

 あれは良いものです。

 春夏秋冬どの季節に入っても、周囲の風景と適度に温かいお湯がこころと身体をほぐしてくれます。

 他にも出で湯の素晴らしいところは沢山ありますが、忙しい日にシロちゃんがお湯でのんびりしてもいいものでしょうか?


 首を傾げているシロちゃんに、他の女の眷属のみなさんもそばに寄ってきて、楽しそうに笑いさざめきながら教えてくれました。


 「いつもこの頃は龍神さまがおいでになるでしょう?」


 「弁天さまにご挨拶ついでにシロの顔を見たいと言付けがあったそうですよ」


 「龍神さまにご挨拶するなら少しはシャンとしないといけませんね」


「龍神さまなら、弁天さまのシロが元気にしていればどんな格好でも喜ばれるでしょうけれど、わたしたちが身だしなみを整えたシロの姿が見たいのですよ」


 「そうそう。随分前にシロがお布団ですうすう寝てしまったときはあなたの寝顔を肴にお酒をきこしめして、ご機嫌そうに笑っておかえりなりましたもの。」



 そうでした!辰年の師走には龍神さまがいつもより張り切って、眷属のへび達の様子をご覧になりに全国津々浦々を回られるのです。


 因みに卯年の年末には、挨拶回りと称して眷属の龍達のご様子をご覧になりにお出かけになるそうです。噂ではその時の龍神様は張り切るというような言葉で片付けられないようなハイテンションだとかで、それだけでも辰年は龍の皆様がたにとっては大事な一年なのだと伺えます。



 「龍神さまがお見えになるまでもう間がありませんよ」


 「みなさんがた、ありがとうございます。お外が見える湯殿でお湯を頂いて参ります」


 「やあねえ。そんなに畏まらなくてもいいのよ」


「わたし達とシロの間ですもの、もっと砕けた言葉でいいのに」


 「シロのお風呂のあとで冷えた()()()()()()をみんなで頂きましょうね」


 お忙しい眷属のみなさんの花やいだ笑い声に背中を押されるようにシロちゃんは身を清めに行きました。


 身だしなみを整えて、弁天さまのおそばに使えるシロちゃんのカッコいいところを龍神さまにご覧頂かなくては!

弁天さま「むう……もしやシロは大事なことに気がついていないのかしら?うっかりさんだこと。」

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