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落ちてもおとされるな

作者: TAIGA

僕は登山が大好きなただの大学生だ。子供の頃から両親と毎年夏になるとキャンプに山に行き、高校の頃は登山部に入部、大学生ではハイキングサークルに所属をした。いつもは近くの山を登っていたが今日は別の場所で活動が行われることが決定した。サークルのみんなで大型バスを貸し切り、地方の山へと向かう事となった。そこにはいつもの山と違う空気、違う音、違う光景が溢れており内心とてもワクワクした。山の麓にある登山道の入口に行くと別の団体がいた。人数は5人ぐらい多分友達同士なんだろう。そこで僕は思わず目を奪われてしまった。その団体の中にはまるで登山なんて興味のなさそうな感じの美人がいた。どこの大学か内心聞きたかった。すると一瞬だが彼女と目が合ってしまった。思わずドキッとした。だがサークルのみんなはそんな事お構い無しに山の中へと入っていった。僕も遅くなりつつもみんなの後を着いて行った。山中は入口で見たものよりも新鮮なものが溢れてワクワクしていた。いつもの山では生えてない植物や木、花、(虫はどこも変わらない)、高い所から見下ろした時の景色、何もかも新鮮で思わず見とれていてすっかりさっきの美人の事なんて忘れていた。そうこうしているとサークルのみんなとはぐれてしまった。スマホは圏外、GPSは上手く作動しない、コンパスは壊れ地図を見てもどの道かもわからない。僕は仕方なく道を引き返した。みんなには降りた所で連絡をすればいい、そう思っていた。だがそう簡単には行かなかった。下っていたはずが気がつくと坂道を登っていた。これは明らかにおかしい事だった。ルートは全部記憶してあった。その道を通れば入口につけるはずだった。だがこのルートは明らかに違った。地形が変化する事などありえない。草木がざわつき始め、まるで森が生きていて僕のことを閉じ込めているかのようだった。僕は怖くなりまた来た道を引き返し始めた。そしたらまた同じ場所に立っていた。僕は怖くなりその場でうずくまった。その時声が聞こえた。誰かが助けを呼ぶ声だ。僕は声のする方へと向かった。上へ登っていくとそこには先程の美人がうつ伏せで横たわっていた。僕は彼女の方へと駆け寄ったが僕はびっくりした。彼女がいる所は地面が削られていてかなりの急斜面になっていたからだ。彼女は横たわっていた訳ではなく既に落ちそうな状況だった。僕は自分が持っていたトレッキングポールの先端を彼女に掴ませ引っ張ろうとした。目をつぶってまで頑張って持ち上げようとしたが当然僕の力では引っ張りあげることが出来なかった。心做しかどんどん引っ張られている感じがした。このままじゃ僕も一緒に落ちてしまう。そう思い心配もしつつ彼女の方を少しだけ見た。だがそこに居たのはさっきまでの美人ではなかった。ギョロりとした目は充血し周りが黒くなる程窪み、顔にはたくさんの切り傷があり、口は耳まで裂け僕を見ながら奇妙な笑みを浮かべていた。僕は怖くなり思わずポールを離してしまった。離した反動で後ろの木に頭をぶつけて少しの間気絶をしていた。僕が目を覚ますと病院のベッドの上で、そこにはサークルのみんなと涙を浮かべている両親がいた。僕はわけがわからなかった。聞いた話によるとみんなとはぐれた後、捜索が始まり2日間行われたそうだ。さらに聞いた話だと僕以外にもはぐれたサークルのメンバーがいて、僕含め5人はぐれていた。だが僕以外に救出されたメンバーはおらず、それぞれ岩で頭を砕かれていた、内蔵が全て抜き取られていた、四肢を引きちぎられ別々の木に縛り付けられていた、水没で全員亡くなっていた。それから山が怖くなり僕はサークルを抜け、社会人になった今でも登山をしていない。だが今でも夢に出てくるのはあの強烈な笑った顔だった。

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