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【コミカライズ】悪女にされた銀の聖女は二度目で愛される  作者: 千早 朔


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知らずと増えていた支える手

「娘だけではありません。ミーシャのご活躍を知れば知るほど、我の目も覚める心地でした。我の想像してきた"淑女"像の、なんと陳腐なことか。娘は今、ミーシャのようになりたいと勉学に励んでおります。マナーやダンスのレッスンも、あれほど嫌がっていたのが嘘のように熱が入ってましてな。美しさもまた、"剣"なのだと言っておりました」


 ミーシャ様のお力です、とヴォルフ卿は目元を緩め、


「我だけではありませんぞ。調査団がこんなにも協力的なのも、お相手がミーシャ様だからにございます。ミーシャ様は幼き頃、ネルル湖で発生した鉛中毒を解決するための導べとなられましたでしょう?」


「! あれは、私ではなく、村長が」


「公式的にはそのようになっているのは存じております。が、察する者は察せるものです。調査団が直接赴いて、村長と言葉を交わし、ミーシャ様のご様子もその目で見ておりましたからな」


(そんな……それじゃあずっと、気付く人には気付かれていたってこと?)


 唖然とする私を、ヴォルフ卿は優しい瞳で見つめ、


「それぞれ口にはしませんが、大惨事を防いだお嬢様に感謝している者も多いのです。故にこうして、調査団の資料を複製し持ち出すという異例の事態にも、反発ではなく協力を申し出てくれるのですぞ。いくらルベルト殿下の許可があるとはいえ、ミーシャ様以外が相手ではこうはいきません」


 すべて、ミーシャ様ご自身の功績です。

 ヴォルフ卿は敬意を示すようして右手をその胸に添え、


「ミーシャ様はお気づきではなくとも、救われ、恩義を感じている者は多いのです。どうぞ、誇ってくだされ。そしてこの地には、ミーシャ様の為ならば手を貸す者たちが控えております。安心して、なんなりとご用命を」


「……ありがとうございます。まさか、こんなにも力になってくださる方々がいたとは微塵も思わず……とても、心強いですわ」


「ミ、ミーシャ様! 私も! 私もミーシャ様のためでしたら、なんだって致しますです! あ、まずは温かい紅茶をどうぞ!」


 広げた図面の邪魔にならないようにと、少し離れた所にユフェが紅茶入りのカップを置いてくれる。


「ありがとう、ユフェ。あなたが優しい人で良かったわ」


「お優しいのは、ミーシャ様です。ご、ご領地でもなければ取引相手でもありませんのに、こんなにも解決のためにと手を尽くしてくださるなんて」


「そのために来たのだもの。観光のつもりでいては、迎え入れてくれた人たちに申し訳が立たないわ」


(何か、見落としているものはないかしら)


 地図へと視線を戻し、脳内に浮かぶあらゆる可能性にバツを付けていた、その時だった。

 ドンドン! と響いたノックの音に、ビクリと肩を跳ね上げ扉へと顔を向ける。


「ミーシャ! いるのか!?」


「!? お兄様……!」


 知った声にその名を呼んだ刹那、扉が勢いよく開かれた。


「久しぶりだな! ちゃんと食べているか? 夜は眠れているのか?」


「ええ、しっかりと。ユフェのお陰で、貴重な時間を堪能させて頂いておりますわ」


 後方でシルクがユフェに、「ミーシャのお兄様のオルガ様だ」と耳打ちする。

 はっとしたようにして急ぎ頭を下げたユフェに、オルガは「ああ、畏まる必要はない。ミーシャが世話になっているな」と笑んで、


「シルク、ヴォルフ卿にも感謝申し上げる。皇家の領地だというから少々心配していたのだが、おかげで伸び伸びとやれているようだ」


 低頭したシルクとヴォルフ卿が、「ありがたきお言葉にございます」と胸元に手をあてる。

 それからヴォルフ卿は困惑を含んだ視線を上げ、


「ところで、どうしてこちらにオルガ様が?」


 シルクが「あ」と思い当たったようにして、


「もしかして、ミーシャ様が出した手紙で呼ばれたのですか?」


 私はふふ、と見つめる三人に微笑み、


「お兄様はね、とても重要な任務を担ってくださったの。お兄様、こちらにいらしたということは、お願いしたモノは揃えてくださったのですね」


「ああ、そのことなんだが」


 オルガはぺかりと太陽のような輝かしい笑みを浮かべ、


「凄いことになったぞ!」


「……はい?」


***


 オルガに連れられ、急ぎユフェのお母様がいる治療小屋に辿りついた私とシルクにユフェは、中に踏み入れるなり足を止めた。


「お兄様、これは……っ」


 私がオルガに手紙で頼んだ事項は、二つ。

 一つは新しいシーツやタオル、患者用の病衣をたくさん用意してほしいというもの。

 そしてもう一つは――。


「手伝いのため、ロレンツ家の使用人を数名お借りできないかと記しましたが、どう見ても"ロレンツ家"ではない使用人が多数見受けられるのですが」


「ああ、それなんだが。ハリエット伯爵夫人がミーシャをたいそう心配しておいででな。手紙が来たら、是非とも様子を教えてほしいと頼まれていたんだ」


「カトリーヌが?」


「ああ。それで今回の手紙の内容を連絡したところ、是非ともハリエット伯爵家からも使用人を派遣したいとおっしゃってくれてな。どこから聞きつけたのか、今度はカスタ家からも申し出があったんだ。そうこうしているうちに、手を挙げてくれる家門が増えてしまって……これでも絞ったんだがな」


「そんなことが……」


「ミーシャがこれまで頑張ってきたからこその成果だな!」

ここまでお付き合いくださり、ありがとうございます!

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