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【コミカライズ】悪女にされた銀の聖女は二度目で愛される  作者: 千早 朔


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社交界での"聖女"

 カスタ家は優秀な宝石商との繋がりも強い。

 とはいえ、完成には最低でも一年はかかるだろうと思っていたけれど、なんとほんの数か月で完成させてくれた。


 完成品は私とエリアーナが"ベルリール"のドレスと共に身に着け、方々のお茶会に参加してはご令嬢方に売り込み。

 更にはカトリーヌにプレゼントすると、とても気に入ったとよく身に着けてくれるようになり。

 あの"レディー・ライラック"も認めた品だと、あっという間に社交界の話題を独占。


 噂を耳にした皇妃様も興味を持たれたとのことで、ルベルト殿下を通じて何度か献上している。


(一度に大量に作れる品ではないけれど、その希少さがかえって良かったようね)


 一年前、一度目の時と同じように他国からの輸入品が入ってきたけれど、すでに国内で"憧れ"の地位に座していたためか、人気が衰えることはなかった。


 カスタ家は今や落ちぶれ貴族どころか、多大なる資産を築いた一目置かれる伯爵家に。

 エリアーナとは友人の域をこえ、良いビジネスパートナーとしての付き合いも長い。


(エリアーナは一度目、この頃にはアメリアに必死に取り入ろうとしながらも見向きもされず、近いうちに没落していたわね)


 眼前には記憶にぼんやりとある質素な彼女の姿とは似ても似つかない、はつらつとしたエリアーナ。

 彼女は胸元の、ジュエリーとなった香水瓶を手に「もちろんです」と笑みを深め、


「ミーシャ様が多くのご令嬢の心を掴むこの場において、もっとも相応しいジュエリーですから。こちらの売り込みは、私にお任せください」


(本当、頼もしい限りだわ)


「よろしくね、エリアーナ」


 十八歳の誕生日の前日に執り行われる予定となっている、聖女と悪女を決定付ける"審判の日"。

 タイムリミットまであと二年ほどに迫った今の社交界では、私とアメリア、双方の派閥が出来ている。


 もちろん、どっちつかずの中立派も存在しているけれども。

 聖女かつ皇太子妃となった暁に"おこぼれ"にあずかるには、やはり近しくなくてはならないもの。

 よほど欲のない家門で無い限り、中立派もいずれは私かアメリアのどちらかにつくことになる。

 それが、貴族というものだから。


(それにしても、殿下も人が悪いわね)


 視線を遣った先には、人々に囲まれ愛らしく笑むアメリアの姿。

 一度目と同じく美しく成長した彼女が纏うのは、殿下の瞳を思わせるルビーレッドを使用した、この国一の縫製店が請け負った最先端の華麗なドレス。


 ルベルト殿下はパーティーを催した初年から毎年欠かさず、アメリアにはその縫製店のドレスを贈っている。

 アメリアの取り巻きはそれを"殿下の愛"だと色めき立ち、殿下はアメリアを一番に想っているに違いない。だからこそファーストダンスはアメリアなのだと口々にアメリアをもてはやす。


 アメリアはそれを嬉し気に頬を染め「そうだと良いのですけれど」などと言うから、清純で可憐なアメリアこそ"聖女"そのものだと。

 アメリア派の貴族はすっかり骨抜き状態。


(すっかりアメリアの"魅了"にかかっているとも知らずに、幸せそうなこと)


 さて、私はといえば。


「ミーシャ様! オルガ様も! とっても素敵なダンスでしたわ!」


「ロレンツ公爵令嬢、どうか一曲お相手いただけませんでしょうか」


「本当に、ミーシャ嬢はどれをとっても完璧ですわね。ぜひ当家主催のお茶会で、秘訣を教えていただきたいですわ」


 我先にと集まる人々に、オルガと共に礼を告げ挨拶を交わす。

 驚いたことに、私を支持してくれている派閥は、アメリアのそれを上回っている。


 というのも、目覚ましい"ベルリール"の成長や、香水瓶ジュエリーの共同開発によるカスタ家の繁盛ぶり。

 加えてカトリーヌに学び、手を加えた二つの領地での作物の収穫量が増大したことなどから、知識と指導力によって富をもたらす私こそが"聖女"だというのが有力説となっているよう。


(まあ、自分もカスタ家のように"甘い蜜"を吸いたいというのが、本音なのでしょうけれど)


 構わないわ。

 だって理由の不確かな好意よりも、分かりやすい利権絡みのほうがよっぽど信用できるもの。


(そう。少なくとも、腹の底が読めないあの人よりは)


 護衛のごとく気を張るオルガのエスコートを受けながら、美しい食事でお腹を満たし、何人かのダンスに付き合い。

 そうして会場の酔いが、深まったころ。


「――ミーシャ嬢」


 知った声に、顔を向ける。

 私のドレスと揃いのコバルトブルーを纏ったルベルト殿下が、ゆるりと瞳を和らげ口角を上げる。

 暗い記憶に残る十八歳の彼は、たったの一度も私に向けることのなかった表情かお


「やっと、ラストダンスの時間だ。……手を」


 差し出された右手も、今の私には慣れたもの。

 どこか不満気にぐぬぬと歯噛みするオルガに「最後のお仕事に行って参りますわ」と告げ、ルベルト殿下の手を取った。


 まるで大切な姫君を伴うかのように恭しく導かれるのは、ダンスホールの中央。

 自然と人々が去り、丸い円が出来る。

ここまでお付き合いくださり、ありがとうございます!

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