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【コミカライズ】悪女にされた銀の聖女は二度目で愛される  作者: 千早 朔


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贈り物を喜んでくれる人

 お父様の対応は、早かった。

 村長からの手紙を受け取るやいなや、皇帝に掛け合ったのだろう。

 私から秘密裏に指示を受け、村長が村の大人を総動員してネルル湖の弾薬をかき集めている最中に、皇帝の派遣した調査団が加わった。


 ルーンの話によると、皇帝からの呼びかけにより、帝国の数か所で似たような被害が起きていることが判明したのだという。

 幸い、どこもまだ甚大な被害が生じる前だったらしく。

 即座に川や湖での散弾銃の使用が禁止され、ネルル湖と同様に調査されているという。


 ひとつだけ予想外だったのは、オルガがルベルト殿下に直談判をしに行ったこと。

 なんでも"私は何もしていない"と証拠づけるための手紙に過剰に反応し、一日でも早い調査団の派遣を依頼したらしい。


 届いた返信の手紙も、今すぐにでも押しかけてきそうな勢いだったため、「お忙しいお父様に代わり屋敷を守れるのは、お兄様しかいない」という旨をしたためたら、どうにか落ち着いた。


(ルベルト殿下の後押しもあって、皇帝も素早く動いてくれたのかもしれないわね)


 その間、私はというと。


「あ! おじょーさまだ!」


「みーちゃちゃま!」


「皆、ごきげんよう。今日はとってもいい天気ね」


 軽やかなワンピースに身を包んだ私に向かって、わらわらと集まってくる村の子供たち。

 途端、私のあげた服をまとったシルクが両手を広げて、


「こらこらお前ら! 一気に押しかけてきたら、ミーシャが倒れちまうかもしれないだろ」


「だってー、おじょーたますきだもん!」


「シルクばっかりずるーい!」


「俺はミーシャの友達だからな。ほら、クッキーが欲しかったら一列に並ぶ!」


 シルクがパンパンと手を叩いたのを合図に、「あーい」と横一列に並ぶ子供たち。

 と、「おじょーさま! ごきげんよう!」と愛らしい声が届いた。


「ラナ!」


 嬉し気に手を振って駆け寄ってきたラナを受け止めると、他の子が、


「らな、ずるい!」


「いいの! ラナはおじょーさまから、おようふくもらったんだもん!」


 そう言うラナは、私のあげたドレスではなく、他の子と似たつぎはぎだらけの服を着ている。

 というのも、私のあげた服しか着ないと意気込んでたラナは、家に戻るとシルクの予言通り早速と汚してしまったらしく。


 あまりのショックを受けたラナは、以来、大事な時だけしか着ないのだと方針を変え、今は大事に部屋に飾っているのだとシルクが教えてくれた。

 私はラナの背を優しく撫で、


「ラナにもクッキーあげるから、皆と一緒に並びましょうね」


「うん! じゅんばん、だもんね」


(本当、なんて可愛いのかしら)


 キラキラと期待に輝く大きな瞳を愛らしく思いながら、私は手にしたバスケットから一枚ずつクッキーを渡していく。


「人のモノを奪ってはだめよ。皆いっしょに、一枚ずつね。いい子に約束が守れたら、またお菓子を持ってきてあげるわ」


 わーい! と両手を上げて喜ぶ子供たち。

 微笑ましく見守っていると、ツンツンと女の子の一人に脚をつつかれた。


 私は「なあに?」としゃがんで、その子と視線を合わせる。

 すると、その子は恥ずかしそうにもじもじとしてから、


「あのね、いつものかっこいいおにーさんは、いないの?」


「いつものかっこいいお兄さん……」


 誰だろうかと思案して、エルバードだと思い当たる。


(たしかに、端正な顔立ちをしているものね)


 いつもなら護衛として一緒に来ているけれど、今日は急に重要な仕事が出来てしまったからと、私をシルクに託してどこかへ出かけてしまった。

 真面目な顔で「シルクには簡単な護衛術を仕込んでおきました」と言っていたけれど、そこはあまり深く追求していない。


「お兄さんは今日、別のお仕事があるの。また今度一緒に来るわね」


「うん!」


 嬉し気に頷くその子の頭を撫で、子供たちと別れた私は、今度は今日の対象となっている範囲の家に小さなお菓子の詰め合わせを配っていく。


「本当はもっと美味しいお肉とか、果物が欲しいわよね」


「そんなことはないって。砂糖が使われたお菓子なんて、ウチの村じゃなかなかお目にかかれないからな。ミーシャの前じゃ恥ずかしくて恰好つけてるけど、大人たちだってミーシャのお菓子を喜んでるんだぜ? まだ順番が回って来ていない家の奴なんて、貰える前にミーシャが帰っちまわないか不安だって、毎晩なかなか寝付けないらしいぞ」


 呆れたように息をつくシルクに、私は「それは責任重大ね」とクスクス笑う。

 こうして村の人たちにお菓子を配るようになったのは、私から贈り物をされたシルクやラナ、そして二人のお母様が嫉妬や妬みの対象にならないようにと、始めたことだけれど。


(お菓子が目当てでも、誰かに心待ちにしてもらえるというのは嬉しいものね)


「お菓子を配り終えたら、今度はジャムを配ろうかしら。もちろん、白いパンも一緒にね」


「ジャムと白いパン!?」


 シルクは明らかな喜びの表情を浮かべるも、ハッとしたように「い、いや!」と首をブンブン振り、


「俺達のためにって頑張りすぎて、ミーシャの金がなくなっちまうのは駄目だ!」


「心配してくれてありがとう、シルク。けれどこの村の皆にジャムとパンを届けたところで、私のお金がなくなるなんてことはないから安心して」


「そう……なのか?」


「ええ。私ってね、シルクが思っているよりもお金持ちなの」

ここまでお付き合いくださり、ありがとうございます!

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