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勇者カクタの最後2

 宴には終わりが来る、終わらせなければならない。王都に屋敷や家がある者達は帰り、それなりの宿を取っている者達は帰って行った。宿を取れなかったり、安宿をとっていた者達は彼の屋敷ち宿泊することになった。そのまま酔い潰れた者達は泊めることにした。使用人達に後片付けを指示し、宿泊客達の世話を頼み、いた段落したカクタは歯を洗い、水を湿らせたタオルで体を拭き、自分の寝室に向かった。風呂は使用人達に悪いし、酔いが多少ともまわっているので止めたのだ。

“そうだな。誰かを選ばなければならないんだ、いつかは。”思いを寄せている、そして彼も好意を感じている女達の顔、容姿を思い浮かべた。“ハーレム”というよからぬ言葉が頭をよぎったが、慌てて首を振って否定した。

 それでも、“皆、可愛いし、美人だからな。”と迷いが心をかき乱した。

 勇者召喚。何故か、肉体年齢というか外見は20歳前後に若返っていた。魔王により世界が、人間が、亜人達が危機に瀕している。それを救うために、彼は勇者として召喚されたという、ファンタジー小説家や漫画、アニメのようなことを居並ぶ老若男女が言われて唖然としたものの、自分が一度も死んでいることを自覚していたので、何となく受け入れてしまった。それよりも、その勇者としての力が自分などにあるかどうかの方が不安だった。女神様に会って、チートであろうが、スキルだろうが、加護だろうがを受ける場面などはなかった。そもそも、女神様、とにかく神様の類いに途中であったわけではないというより、死んで気がついたら、召喚の場面、召喚の魔方陣の中にいたのである。何故か異世界の言葉も文字も、理解し、読め、書けたものの、特訓では、一週間後には匙を投げ出されかけた。

「これが勇者とは思えない。」

と教育係の騎士も魔道士も思った。慌てた、諸国の王侯貴族族長都市の代表達は慌てて、自称勇者に魔王討伐を命じた。ただ、カクタは、その頃には勇者の力に目覚めていた。感覚と体の動き、精神などが一致せずに、ちぐはぐになっていたからだ。スキルとか、経験値とか、魔力とかが可視化されることが、小説などとは違って、ないからなおさら分からなかったのだ。その翌日から、目に見えて彼の成長が感じられ、二週間後には

「さすが勇者様。」

と評価が一変した。修行が終わり、魔王討伐の旅に出て、4年が過ぎた。

 その間、木石の身ではなく、聖人君子、修行僧なんかではいられなかった。有力者から、その種の好意を提供されて受けたこともある。チームの女性と恋仲になり、肌を重ねたこともある。一人は、その後しばらくして戦いの中で死んだ。回復魔法を必死にかけたがだめだった。今なら…と思うときもある。もう一人は、その悲しみを癒してくれた女だった。が、彼女は他の勇者、自称の、のスパイだった。さらに、それも偽りで魔族、魔王からの刺客だった。自らの手で殺し泣いた。その後、3年以上になるが、は聖人君子をしていた。その種の好意も、丁重に断固として断った。この二人の女性の死も原因はある。愛する者の死を見たくなかったからだ、というのも事実だった。他の女性達の目を気にしたのも事実である。魔王との戦いが厳しくなったこともある。

 自分の立場、勇者、特に召喚された異世界の勇者の立場の危うさにが、より心配になったからだ。より品行方正することが、身を救うと思ったからだ。それは、かなり努力できたと思っていた。女性達ともキス程度だった。それがかえって、あやふやな関係を拡大してしまったが。“決めたければならないな。”とあらためて思った。そう思うと、また、皆の顔が脳裏に浮かび、彼女らとの日々、ともに戦い、汗や泥に汚れ、つまらないことで言い争い、直ぐ和解し、戦いの勝利に飲み、食べ、酔い、浮かれた、を思い出した。誰とも、かけがえのない時間を過ごし、記憶を共有していることを思い知った。和平の盟約までは、その成就のこと以外頭にないと先送りを理由づけるしか出てこなかった。“俺は、なんて屑な男なんだろう。あんないい娘達に対して、…。”とため息を漏らしたのだった。

 寝室のドアを開けようとした時、後ろから声をかけられた。

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