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異世界姉さん美人妻二人、両手に花…勇者の本音は  作者: 安藤昌益


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カーツの帝国 ②

 戦いは、また、避けられないものになってきた。

「諸君。我々は、自衛しなければならないのだ。」

 カークは、議会でも、何度も言った。

 “また”ではなく、今度は徹底的な戦いになる、どこかで手打ちのできるものではない。

「カーン、カーン」

「ゴオー」

 その建物内部では、色々な音、最早騒音だが、が響き渡っていた。暑苦しく、移住も鼻につく。職人達が、錬金術師達が、多数、忙しく動き回っている。

 武器の製造所である。カーツの“帝国”内各地に作られ、どこもフル操業に入っている。設備、製造方法調整、人員の確保を主として、さらに帝国経済の発展を優先にして抑え気味にしていたが、最早それどころではなくなってきたのだ。これに、全力を注ぎこまなければいかなくなったのだ。

 魔界では、三人まで魔王が絞られるところまできていた。だから、かなり強い、当の魔王もそうであるし、彼の国、軍の規模も力もかなりなものとなっていた。そのような魔王は、ソレだけ頭もよい、というか、賢明というか、政治力も指揮などの能力もあるし、優れた部下達を抱え、それなりに組織化している。

 人間・亜人界でも同様だった、ある意味。周辺地域の国々だけでなく、他の地域の諸大国が関与し始めたからだ。

 その全部を敵にまわすわけには、いかない。相手側の内部に楔を打ち込むなりの試みを続けていた。

「できれば、戦いなどしないですましたいのだが。」

「無理に決まっていますわ。それにあなたのせいではありませんわ。」

「その通りだ、こいつの言うとおりだ。」

 全裸のカーツの左右に、やはり全裸で彼の腕に体を擦りつけているテンシアとケイカが、窘めた、ベッドの上でだ。二人は、まだ彼に催促していたし、彼もその気満々ではあった。

 彼女らの裸体を見ながら、舐めるように見ながら、彼が思ったことは、“彼女達との日々を捨てたくない。”だった、まずは。

 彼女達の体だけではない、それも含めた彼女達との日常、暮らしだった、カーツが捨てられなくなっていたのは。それを守ろうとしたら、こうなるしかない、戦うしかない。そして、彼女達と見た理想、目標、そのことで感じる甘美さもまた捨てられなくなっていた。そして、この国、社会、家臣達、国民達は彼女達と作った

、かけがいのない思い出、作品なのだ、捨てがたい。そんなことを考えている彼の心内がわかったかのように、彼女達は口を開いた。

「永遠の若さを得た、お前とともにな、我らは。それだけでも、守る理由になる。」

「あなたが、永遠に年下で、私達が29歳というのが、いまいちですけど。もちろん、あなたの理想は私達の理想、あなたが作り上げた物は、私達もともに築きあげた物ですのよ。」

「だから、守りたい、進んで行きたいと思うのだ。もう後戻りはできない。」

「それに後悔はしませんわよ。」

 それは本心だと伝わるように、伝えたいというように、二人は、彼に自分の胸を押しつけた。その感触を、まずは確かめ、楽しむ自分に苦笑しつつ、

「ありがとう。私達3人のために…、そのために、全てを捧げても…な。」

「あなたも、悪党ですわね、やっぱり。」

「我らも同じだがな。」

 そう言って微笑む二人の顔は、残酷なものだったが、それが、ひどく美しく、可愛く見えた。

「勝利か、しからずんば死かだ、諸君!」

 議会の最後に、カークはその言葉を議場の全てに叩きつけた。

 今まで、議論を闘わせていた議場は、静まり返って閉会を、彼の最後の言葉で迎えた。彼の意志には逆らえない、いや、逆らうことはできる、しかし、それは敵対することになるだけである。この帝国は、カークの存在で成立しているのだから。

“カクタを、私達が殺した時、もう後戻りは出来なくなっていたのね。”

 リリア王女は、そう思いながらも、熱に浮かされたように、動いている自分に、冷めた視線を送る自分がいるのを感じていた。“カクタが、暗殺されなかったら?彼は、あの中の誰か、あるいは全員を連れて、小さな領地で静かな幸せに浸っていた…。その中に、自分は…多分いなかった…わね。”でも、今は共有している、彼、カークの理想を、他の多くの者達とではあるが、と思った。カクタとは、違う世界に生きていただろう、あの後、とも思われた。

「とにかく、ヤツらには、まだ少し時間的猶予が出来たと思わせる。いいな?」

 カークは、そう命じていた。彼の側からの外交攻勢、和解、友好、平和を、それでも求めているという方向の。

「それで、誤魔化せるか?実際、もう動いているのがわかるのでは?」

「それでも、躊躇している、という疑いを捨てきれない可能性が多少とも残る。少しでも、我々がその分有利になる。」

「そうか?」

 ヘブロ王子は、半信半疑だった。

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