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異世界姉さん美人妻二人、両手に花…勇者の本音は  作者: 安藤昌益


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カーツの帝国

「水路やため池を整備して、交通や魚の養殖、水の供給だけでなく、清掃、浚渫した泥で農業の土壌にするなんて、よく考えるよ。それで、簡単、肥料いらずの農業生産が上がるとは、どこでそんな知識を知っていたのか?焼畑も年数を決めて順次に、輪作も取り入れて行う、家庭菜園に効率的、生産性の高い果樹、野菜等を奨励、半ば放牧に近い計画的な狩猟漁猟で、魔族に無理せず農業生産を高めさせる…たいしたもんだよ、カク…カーツという男は。」

「魔界が、こんなに豊かになる可能性など思いよらなかったよ。」

 カーツに屈して、魔王を諦めた、元魔王、元自称魔王あるいは元魔王候補は、ため息をつきながら、同意した。比較的農業や工業に熱心だった魔族の種族や魔界にある人間の都市の生産活動も支援した。必要な体制も同時に整えた。

「まあ、僕だって同じ気持ちだよ、人間界でもね。」

「エルフの世界でも同じだね。」

 魔界のエルフの世界でも、亜人としてエルフの世界でもということである。人間との関係が見直された。人間が優先されるようになった、というわけではない。協力関係が整備された、互の権利、保護が明確にされた。今のところ、順調に発展しそうではある。

「カクタが望んだ世界か…でも…望んだろうか?」

 人間の国も、魔族の部族、エルフを含めた亜人の村がいくつも消えたことを、ヘブル王子は思いをはせた。

「やらなければ、やられていただけよ。気にする必要なんかないわよ。そして、これからも。だいたい、同じことを繰り返していたのだから…以前と変わらないわよ。」

「そうですわ。勇者カクタを殺した、私達に何かいう資格はありませんわ。」

「その通りではあるけど…。」

 それでも、まだ割りきれないヘブル王子だったが、

「そろそろ、午後の議会が始まリますわよ。」

と促されて、それ以上は言葉を呑み込んだ。

「意外だな…お前は、もっと卑劣なほどにサバサバしていると思ったが、…いい奴だったのだな?」

“腹黒王女に言われたくないよ!”と心の中で悪態をついた。“カクタの理想に共鳴しながら、彼の暗殺に加担した、結果として。今、こんなにわだかまりを持ちながら、カーツの作り上げている帝国を、一番賛美しているのは俺なんだ。”

 カーツと2人の妻、ケイカとテンシア、の直轄領、公認都市、同盟国、同盟部族からなる連合体から、人間、魔族、エルフ、オーガ…雑多な種族、身分の者からなる議会、それらの頂点に立つカーツの統治、軍事組織。自治は、各都市、同盟国、同盟部族に認められているが、各地域の自由な人、物の流れが保証され、各身分、種族の習慣、慣習を尊重しながら、奴隷までも含めた権利、命、財産が保証されている。

 それは、危ういバランスの上に立っている、カーツという存在によってなりたっていることは、一目瞭然だったが、カーツが、とにかく、今ここにいることが重要だった。

 議会は、やかましく、面倒だった。しかし、それでも議論は続いていった。ヘブロ王子達3人の国にも議会はあった。同様にうるさく、煩わしい、面倒な存在ですらあった。それでも、ヘブロ王子達は、当然のこととして、受け入れてきていたが、もの心が着く頃から。

 奴隷の対偶についての法律の改正や農民保護の条文の対策の有無が、議論され、可決された。カーツの国組織、政策が、その軍隊と同様に変わって来ていた。その軍隊は、錬金術師達と職人を集めての火器製造による生産が一応は、進んでいた。この種の兵器に、特に難色を示すエルフや扱いが下手なオーガにも修練を積ませる等の装備化も何とか進んではいた。それでも、遅々として進んでいるに過ぎなかった。民衆の生活が悪くならない、生活水準が向上する、少なくともそう思い込んでくれる、ように進めなければならなかったからだ。より効率の高い水車、風車、炉、それが従来のものの延長上の技術であっても、新しい農法が、いかに事前に適地適作になるように品種を選んでいても、すぐに成果を上げて、急激に生産水準が上がってなどはあり得ないし、初期不良なりがでるものなのだ。幸いなことに、初期不良などは起きなかったものの、ある意味、それは大きな幸運だったが、上昇ペースはあまり大きくなかった。全てが、この調子だった、遅々として進んでいる、政治、統治体制の構築も。近代的な統一国家にはほど遠い、中世社会を基盤にした議会、政府、官僚組織を少しづつ改築していると言うところだった。

 少なくともカーツは思っていたが、ケイカとテンシアにとっては、別のようだった。

「全く、ここまで変われるものとはな。」

「本当に、やればできる…あなたの理想…本当に、私達は歩んでいると実感できますわ。」

「その通りだ。このまま、前に、だな。」

 彼女らには、エルフとその周辺部分の変化、彼らの直轄領の変わりぶりを、驚きとともに見ていた。

 魔界のエルフの領域では、人間と非魔族系エルフが、奴隷から解放され、一定の権利を持った従属民として、一定の自治権を持った彼らの都市を、村をつくっていた。人間とハイエルフも含めたエルフが共住して、互いの生活週間などを取り入れながら、新しい社会を作り始めていた。彼らの生産力は、全体を豊かにし、支配民である魔族系エルフと人間型魔族にも影響を与え、彼らの間でも、今までにない協力関係が生まれていた。

「エルフの国々が、自由に行き来、人も物もできるようにするなぞ、魔界では考えなかった。」

「人間界だって、そうですよ。帝国内で、そのようなことが実現できたことだって…。それに、志願兵の国軍なんて、考えたこともありませんでしたわ。」

「それでも、あの議会なるものは面倒くさくて、どうしても我慢できないが。」

「帝国議会はありましたし、それはまた面倒くさかったですが、こちらの議会はその比ではありませんわ。」

 2人は、愚痴になった。それでも、さすがに生まれながら人(魔族)の上に立ってきた2人であるから、カークよりそつなく対応しているようにすら見える。

「私達に任せて、じぶんだけ楽していこうなんて、思わないで下さいね。」

とハーモニーっくして釘を刺されてしまった。

「2人には、苦労をかけて申し訳ないとは思っているけど、そのようなことは、ないと思うけどな?」

 苦笑して弁解すると、

「分かっておる。しかし、宰相とかに、もっとやらせれば良いとは思わぬか?」

「そうですよ。私達は、もっと別のことに時間振り向けた方がいいですよ。」

 2人は、意味深に笑って、腰をもじもじとさせていたが、必ずしもそれだけのことではなかった。もうそろそろ、また、大きな戦いが始まる、そのための準備を加速させるべきだと言っていることは分かっていた。まあ、3人のパワーアップの行為もだが…。

「しかし、こいつは…あの所業は変態としかいえないのを?」

「本当に…。信じられませんでしたわ…初めのうちは。私達が、しっかり管理しないといけませんわ。」

「そのとおりだ。世に離してはならん。」

「何か言ってるんだ?最初から、喜んで…。」

「そ、それはそうですけども~。」

「ま、まあ、我らだから…。」

”あっちの世界では普通だったんだけどな…。“

と思うカークだったが、そちらの方でも後戻りはできないことはわかりきっていた。



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