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異世界姉さん美人妻二人、両手に花…勇者の本音は  作者: 安藤昌益


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合従連衡 2

「ほう~。我が国と同盟を締結したい?」

 その使者は、かなり遠い国からの者だった。どんなことがあっても、当面は事を構えることはあり得ない。逆をいえば、その同盟が、大して利益を上げるとはいえないものだった。さらに逆に言えば、多少とも利益はあるということも事実だった。同盟関係を結んでもいいか、ともカークは思ったが、

「お話しをお聞きしよう。」

と言って、その女の話を聞き、

「よく考えさせて欲しい。」

と言って、今後の交渉ルートを作ることに留めた。色よい言葉を、リップサービス、交渉上の手段としても全く与えなかった。

「何か気になることがありましたの?」

「嫌なものを感じたという顔だな?」

 二人は、彼の気持を理解する、読めるようになっていた。

 気になるのは、使者が自分の主をしきりに聖人であると強調することだった。そして、多少持っている情報での、忠誠心あふれた名宰相の存在、思い出すものがあったからだ。

「あいつらの目標は最終的には、ここの征服だろうが、取りあえずは、遠交近攻だろう。」

「下手をすると、盾を失うというわけですね。」

「それでは、同盟の申し出はけるのか?そうでも無い感じだが?」

「取りあえずは、友好的でいく。だが、将来、敵対することを前提に対応していこう。気を付けないとな、あの国の宰相は、希代の謀略家だからな。」

「そうですの?」

「お前が言うのなら…。」

「でも、私達にだけかしら?そんな謀略家が、誠実とは思えないわ、その点で…。」

「おう、至るところに同じことを、秘かに申し入れているかもな?」

”二人とも、判ってくれていて助かる。“と嬉しくなり、頬を緩めながら、

「二人の言うとおりさ。巧みに…魔界にも入り込んでいるはずだ…ん?実際にはかなり入り込んで…これは半ば罠かもな…。」

“こちらも、早くことを進めるか。”

「では、これからしばらく、暴れ回るか?」

「まあ、野蛮な言い方ですわね、相変わらず…。」

「反対か?」

「いいえ、大賛成。腕がなりますわ。」

「それでこそ、我が家姉だけのことはあるな。」

「誰が姉ですか?」

 わざとテンシアを睨みつけたケイカだったが、直ぐにテンシアとともに笑い出した。そして、がっしりとカークの両腕を自分達の胸に押しつけた。

「判っているさ。」

 カークも笑った。


「我を王と認めないというのか、我のもとを去るというのか?いいだろう、去るがよい!去れ!お前達にいくべき地はないぞ!」

 オーガの若き王が玉座から叫んだが、王妃をはじめ大半の者達はせせり笑って、暴言を吐いて広間を出て行った。

「馬鹿者共が。お前らが頼りにしている者は、既に城ごと燃やされたんだよ。」

 彼は大きなため息をついた。

「王妃様を止めなくてよろしかったのですか?」

 副官である若いオーガの女騎士が、彼の前に跪いて、尋ねた。

「お前も見たろう?あの男の手を握った、彼女の顔を…。」

「しかし、陛下の方が素晴らしい方だとすぐににお分かりになり、お戻りに…。」

「もう言うな。」

 その顔は、苦痛と悲しみに歪んでいたが、何とか苦笑でもして見せているようだった。

「可哀想な陛下。」

 彼女は、思わず彼を抱きしめてしまった。彼女は、彼とは主と臣下ながら、幼い時から親しく接していた。

「我らが、オーガの中の覇権を握れるチャンスでもある。」

 彼が、強ばった表情で言うのを、見、聞き、

「陛下は、このような時でも…我が国の将来を見つめて…。」

 彼女は世辞ではなく、本心から感嘆して言っていた。

「だから、お前に助けてもらわなければならない。助けてくれるか?」

「はい、もちろんです。」

 二人は固く手を握り合っていた。

「救援要請や同盟交渉どころではありません。既に、街ごと灰じんになっていました。」

「な、何ですって?」

 帰ってきた使者の言葉に、動揺してしまっているハイエルフの女王の一人に、

「最早、迷うことはないでしょう?」

 彼女の耳元で囁く、言葉に女王は抵抗ができなくなってしまっていた。

「カーク様の側に、早くつくのが最善の策ですよ。」

 ハイエルフの女騎士の言葉に、頷くしかなかった。

「ですから、貴国の存亡はカーク殿について国の安泰を選ぶか、はたまたカーク殿に敵対して、滅びて、多くの国民を死なすかしかないのですよ。」

「あなた方が頼ろうとしている者は、謀略で甘い言葉を語っているだけですのよ、お分かりになりませんか?あなたの宰相は、あなたを売って、彼らを向か入れようとしたのですよ。知りませんでしたか?彼の秘書が、密告してくれたのです。」

 ヘブロ王子とリリア王女は、優しく、しかしながら、断固とした調子で迫った。公爵はまだ半信半疑だった。宰相が、自分が引き上げ、信頼していた、が自分を裏切っていたのは、信じたくはなかった。

 マルサ王女が、勇者を従えて、彼は宰相を引き摺っていた、やってきた。

「わ、我は賢人じゃ!お前らなど…。」

 宰相はわめき散らしていた。

「この通りよ。お分かりでしょう、これで。この男には、あなたへの忠誠も、信義も全くないのですよ。」

“兵書をそらんじることが名将だとしたら思って…。並び立つこてを、相手が望むはずがないと云うことが判らないなんてね、田舎の才子よ、しょせん…私もおなじか?”

 そう思って、二人の顔を見ると、“同じですよ。”“あなたと同様ですわ。”と答えている顔だった。彼の主は、涙顔で3人に従うしかない状態だった。

“任務完了…かな?”3人の心は、ハーモニーしていた。

「しかし、相手があることだからな。」

「大国の提携関係も進んできているからね。大軍を相手にしなければならないのには変わらないわね。」

「まだ、まとまった軍の編成までには、時間がかかりそうですけど。」

「時間の問題だな。カーク殿達と銃砲とやらが頼りだな。それでも、もう後戻りも、逃げもできないな。」

 3人は、頷くばかりだった。

 



 

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