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異世界姉さん美人妻二人、両手に花…勇者の本音は  作者: 安藤昌益


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動き出す人々

「ちゃんと来てくれて嬉しいよ。ところで、僕たちを捕らえるための兵隊を、どこかに隠しているわけではないよね?」

「何処にも、その気配はないようですけれど…、でも、そのくらいの手練れの面々を集めるような方ですものね?」

「何を言っているのよ。あなた方こそ、つけられていて、私達を一網打尽にという連中に取り囲まれているところということはないでしょうね?」

「その可能性も否定したできないけどね。

 若い3人の男女が、町からかなり離れた木陰で密会しているが、既に月が煌々と輝いている時分だった。3人は旅支度でというより、旅の戦士姿だった。馬にも、その身にも剣等の武器、食料、水、その他を持ち、積み込んでいた。

 若い男女3人では、酷く不安な状態だったが、彼らはあまり気にしていないようだった。

「勇者カクタとの旅以来だね。」

「あの頃は、あの時は、危ないことばかりだったわね。」

「全く彼には、迷惑ばかりかけられるわ。ところで、資金は持ってきた?」

「もちろん、貯めてあった小遣いは、洗いざらい持ってきましたわ。」

「僕もだよ。カクタの奴に、すっかり毒されてしまっていたと感じるね。それに、銅貨とか少額の為替もたっぷりと持ってきた。」

「私もよ。あなたは?」

「あなた方二人分は持ってきたわ。さあ、早く行きましょう。まだ。私達に注意は向けてないようだけど、急ぐにこしたことはないわ。」

「賛成だね。」

「右に同じですわ。」

 3人は、馬に飛び乗った。

 3人はヘブロ王子とリリア王女、そしてマルサ王女だった。彼らは、故ベラノ王国王妃エルマの直轄領地に建国したカークとその妻達の一人が死んだはずの勇者カクタと王妃エルマではないかという噂が流れ始めた時には、一笑に付していた。実際は、その時から既に密かに逃走する準備を始めていた。カクタが生きているかどうか、それが事実かどうかは別にして、それを理由に、何らかの理由、罪状をなすりつけられて、よくて投獄、悪ければ処刑されかねないと考えたからだ。それで、カクタ達のことを真しやかに語る声があがったと同時に、示し合わせて逃げ出してきたのである。単身でなければ、絶対事前にばれるとも判断した。3人、男一人、女二人でも自信はあった、旅をする上での危険性は、あまり心配しなかった。自分達は、勇者カクタのチームの一員であり、彼と共に旅をしたからだった。

 目指すは北北西だが、いったん南に向かった。しばらく進んだところで北西に、その後、また方向を変える予定である。もし、彼らの出奔を知れば、北北西に追っ手が進むだろうと考えてのことだった。大きく迂回することになるが、方向転換したのちに追っ手に出会っても、方向が違うから見逃してしまうだろうと考えたからだ。

「全く、見かけと違って、慎重派ね、お前は。」

 マルサが、意地悪い口調で言った。ヘブロが不満そうな顔で、

「ひどい言い方じゃないか?それでは、俺は軽薄そうに見えるということか?」

「その方が好都合だと思っていたのだから、いいではありませか。それに、マルサは褒めているんですから。」

 リリアが間に入るように言うと、マルチが、ふん、といった顔で、

「あなたも天然ボケの善良な王女様を装っていたわよね。それも、大成功じゃない?」

 リリアは、少しムッとした表情をみせたが、反論はせず、

「あなただけが、馬鹿を装いませんでしたわね。」

「馬鹿と思われたら、誰もついてこないっしょう?」

「まあ、そういうあんたがいたから、必要なものを手に入れられたからね。ところで、他のメンバーはどうすると思う?」

「分かっているのでしょう?そういう言い方は趣味が悪いですわ。」

 リリアはため息をつくように言った。皆共犯者である。3人と同様な行動をとる者もいれば、逆に遠くに逃げ出そうとする者もいるだろう。迷う者もいるだろう。そして、カクタへの思い?を期待する者達がいるだろう。彼女は首を小さく振った。二人は、めざとくそれに気付いた。

「期待しない方が、絶対いいよ。彼の両手は、元王妃様と元魔王妃様が握っているようだから。」

「ふん。いい歳して…。」

「見た目は、30歳くらいだからね。カクタは律儀だったし…。マルサ嬢も期待する側かい?」

「違うわよ!」

 “二人の顔は…どうかな…?まあ、こいつらは色恋だけで考えないし、割り切ることが出来る悪党だからな。”ヘブロ王子は思った。

「何ですか?その顔は?」

「私達が悪党みたいに思っていない?」

 二人の抗議に、

「そんなことないですよ。」

としらを切るべくだった。

“割りきれない連中も多いだろうな。”

 故勇者カクタの元チームのメンバーの行動は様々だった。とにかく、カークの元に行こうという面々もいる反面無視しよう、考えない、関係ないと考える者達もいた。

「それで、彼を裏切っておきながら、しゃあしゃあと、よりを戻しに行こうというわけか?」

「その言葉、そのまま返してあげるわ。あなたは、最初の毒を飲ませたくせに…恥を知らない騎士は失格よ。」

 女の子たち正騎士とハイエルフの女戦士

はテーブルを挟んで睨み合っていた。

「いい加減にしてくれよ。」

「ああ、そうだよ。ここで争っていてもしかたがないだろう。」

「そうよ。今は先を急ぎましょうよ。」

「それに、ここで争っていたら、目立つだろう。それは不味いよ。」

 男達や他の女達が、割って入った。10人ほどの一行になって、宿の食堂で、酒を飲み、食事をとっていたのは、やはり故勇者カクタの元チームメンバー達だった。



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