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3人の実力

 その依頼は、撤退した魔族の城塞跡にゴブリンの群れが住み着き、周辺の人間の村々だけでなく、エルフの森やドワーフの集落を襲っているため、幾つかの村が連帯でその退治を依頼してきたものだった。ゴブリンの総数は100匹をくだらないが、正確な数は不明、大型種もおり、戦い馴れた連中とのことで、集落を襲われ、女子供を拉致されたオーガやエルフが救出に向かったが、返り討ちにあって、這々の体で逃げ帰ってきたということから分かる、かなり難しい仕事だった。だから、なかなか名乗りを上げるチームはいなかった。ようやく、かなりの人数をのチームが名乗りを上げたが、応援の人間を雇うとかかなりの負傷者が出るということを言い立てて、報酬の大幅増額を要求したため、話が頓挫しかけていた。そこに、最近、この地にやって来た男女3人の小チームが名乗りをあげ、その依頼を受けることになった。

 あまり似ていないが魔族の血が入った3人姉弟だという触れ込みだたが、実際かなりハードな依頼を難なくこなし続けた。さすがに、この依頼を受けたのは驕り高ぶっているとの声が大半で、臨時のチームメンバーの募集には二人しか応募がなかった。

「魔族は馬鹿だな。」

「女は年増だが、美人だからもったいないがな。」

と誰もが言い合った。

「は、離せ!」

「は、離して!」

 屈強なオーガや獣人の男も加わって、8人がかりで、女二人を押さえつけ、さらに二人の女が彼女らの鎧の下、下着を剥がしていた。

「手間をかけさせやがって。その分をたんと払わせてやるぜ。」

 動かない男女や苦痛のうめき声を上げている男女が幾人もいた。“10人近くやられちまったか。なんだ、この女二人の強さは。”リーダーの中年の髭面の男は、下を脱ぎながら腹ただしく思った。

 本当は、3人が少しでもゴブリンの数を減らしてくれるのを待つか、などと思っていた。逃げ帰ってきたら、横入りした罰として男を殺し、女二人は弄んで売ろうかと思って待ち構えていた。だが、3人でゴブリン達を全滅させてしまったのだ。“慎重、細心な俺様で良かったぜ。”入りこませた二人に、猛毒を塗った短剣を渡していたし、二人は元は凄腕の暗殺者だった。あいつらは上手くやってくれた。男が、後ろと前から短剣を突き刺されて呻く姿を思い出して、自画自賛した、心の中で。その後、女二人を取り押さえようとした。屈強な獣人が蹴り飛ばされ、腕自慢の剣士が斬られて倒れ、エルフや魔道士の魔法が中和、無効化されてしまった。“全く、ゴブリン相手に疲れているからと思って油断しやがって。”一斉に飛びかかった。6人がかりで魔力を抑え、さらに何人も倒されたが、8人がかりで何とか押さえつけることが出来た。二人では、軽くはねのけたのだ、この女達は。

「あんた、準備出来たよ。オイルを塗ったから、何時でも大丈夫さ。」

「このババア達を、早くめちゃくちゃにしてやりな。後で、あたいで口直しするばいいから。」

「それはあたしだよ。」

 彼の愛人二人が残酷な笑みを浮かべていた。

 その時だった。

「うわー!熱い!」

「く、寒い、冷たい…。」

 声を上げて、がたいの大きなオークと獣人がのたうち、倒れた。ハットして振り向くと、エルフや魔道士達は首が落ち、血を吹き出していた。首のない六体が、立ったまま血を吹き出していたいるのは、さすがに残酷な場面は見慣れている彼も背筋が冷たくなった。4人が脇から飛んでいった。さらに後ろで、肉が潰されるような音と何かが折れる音が聞こえた。慌てて、また振り返ると、自分の愛人二人が、あの女達の腕で、首を不自然な方向に曲げられているのが見えた。足元には、背中に穴の開いた死体が二つ見えた。

「遅いぞ!」

「もう、恥ずかしい目にあったのよ!」

 二人の女達の視線を追って振り向くのは怖くて、躊躇してしまった。

「おい。諦めろ。お前以外は、抵抗を止めた奴らを除いて、誰もいない。」

 “もう二度目だから。”という言葉を慌てて飲み込んだ二人の女達の弟という男が、考えを見透かすように言った。

「馬鹿な。聖剣を持った剣聖や賢者達、猛者達20人が…。」

「そうか。そうと知っていたら、少し楽しんでも良かったのだがな。如何せん、姉達が、本当な妻達だが、心配で、瞬殺してしまった。失礼なことをしたものだ。」

 誰も駆けつけてくる気配がしないことを、歴戦の彼は感じていた。だから、震えて、漏らすことしか出来なかった。

「ところでだ。」

 咳払いしてから、

「誰かに頼まれたのか、襲撃を?」

 その質問に、

「な、なんのことだ?」

「そうか。それならいいさ。」

 彼の首が、彼が気づくこともなく落ちた。

「心配したぞ。」

「本当に大丈夫?」

 二人は、下をそのままにして、彼のところに駆け寄ってきた。

「あの程度の毒、少し苦しくはなったが、それだけさ。それより、無茶しすぎだ。」

「だって、あなたを…と思ったら、頭に血が上って…。」

「我も、同じだ。お前が…と思ったら、胸がな、胸がな…。」

 抱きついて、泣き出して、そして求めてきているのが分かった。血と汗の混じった臭いが性欲を刺激してきた。

「4人。命を助けた。そいつらに尋問して…、ちょっと離れたところで待っててくれ。」

 二人は、上気した顔と潤んだ目をして頷いたが、それには抵抗出来ない色気があった。




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