魔王、まず一匹め倒す
彼、魔王は、慢心してはいなかった。彼の信条は、獅子は兎を狩るのも全力で行う、だった。この時も、それに変わりはなかった。入ってきた50人弱の男女の人間型魔族達を冷静に観察していた。先頭にいる男が、指揮官だと判断したが、男は人間型魔族の平均点体格で、力も魔力もさほどとびぬけたものではないとしか感じなかったし、帯びている魔剣にも、帯びている剣は魔剣のはずだと思っていた、膨大な魔力を発散している様子はないことを確認していた。だが、即座に襲いかかった数人の部下達を瞬殺したのを、冷静に観察し、全力で挑もうと決めた。魔剣におのれの魔力を纏わせ、相手の動きをの二手先を呼読んで、斬りかかると同時に、一発が直撃すれば、即死しかねない火球を数発放った。一合目、二合目と相手が辛うじて受け止める動きを読み、必殺の攻撃に誘い込んでいた。
相手は、予想通りの所に立った。雷電弾多数が、正確な軌道を描いて、彼に、彼らに正確に向かっていた。さらに、数発は意外な、相手が気が付かない方向から迫っていた。彼が、仲間を守ろうとすれば自分が倒れ、自分を優先すれば仲間を見捨てただけでなく、自分に不利なところに立たなければならない。相手は仲間を守ろうとした。まさに、絶好のタイミングで、雷電弾が命中した直後に、魔王は必殺の魔剣を振り落とした。
「ぎゃあ~!」
片手が落ちた、魔王のである。血が噴き出した。痛みに、耐えながら、相手が容易ならない力の持ち主であると感じた。気をつけるように、皆に注意しようと思った。それが、
「く、クソう!」
彼の副魔王が、女1人を相手に、力勝負でほとんど互角の戦いを演じていた。
「く、くそう。」
テンシアが、副魔王と正面から、押され気味ながら、力比べを、行っていた。
「あらあら、いつもの大言壮語はどこにいったのかしら?まあ、私も加勢してあげようか?」
意地悪く声をかけたケイカだったが、四天王を相手に、5人だったが、に完全に守勢にまわっていた、追い詰められているわけではなかったが。彼女は、テンシア同様、カークが2人を援護しているように周囲の仲間達を援護しながら戦っていた。
「フン。お前こそどうした?逃げ回っているではないか?」
テンシアが言い返した。
「うわー!」
「何だ?」
「何これ?」
「身動きが取れないわ!」
「風の精霊よ!ど、どうして押し返せない?」
四天王、くどいが5人、は周囲に巻き上がる強烈なつむじ風のような空気の流れに身動きどころか、息をするのも困難な状態になっていた。
「いい加減にしろ。速く2人で倒せ、2人でやれば簡単にできるだろう?」
とカークが、2人に言った。
「分かりましとも。」
とハーモニックして二人は答えた。
「何を!馬鹿に…。う、うわ~。」
ケイカが加わると、たちまち副魔王は押し返され、その一瞬後に、2人の拳と蹴りを食らって吹っ飛び、壁に叩きつけられた。壁にめり込み、頭が朦朧とし、体中にひどい痛みを感じたが、それでも、魔力の大部分を身体強化につぎ込み、正面の少し離れたところがに小さいが、逆に離れているからこそ、自分の体の範囲に攻撃魔法を防御できる、受け流せる、それ自体は強力な魔法結界を張り、メリケンサック状の魔具に、其れが持つ魔力を限界まで集中、1回の使用でしばらく使えなくなる、悪くすると壊れて使い物にならなくなるかもしれない、させて飛び出した。一撃で目の前の女達を倒す、そうしなければやられる、一撃に賭ける、彼は即座に判断したのだ。
「う、うおー!今さら遅い!…え、?…どうして?うわ~!」
2人が、一瞬互いの片手の平を打ち付け合って放たれた衝撃弾は、彼の防御結界を破壊して、彼の防御結界はそれを受け流すことすらできなかった、彼に直撃、彼の魔メリケンサックの拳を押しつぶし、魔鎧も突き抜け、彼の体を貫いた。吹き出る血と痛みで、目の前が真っ暗になって倒れた。
「これでどうだ!」
魔王と四天王、くどいようだが5人、の必殺の、畳みかけるような魔法攻撃を受け流したカークは、2人が副魔王を倒したのを見て、
「転真敬会奥義、小進水!」
衝撃波が砲弾のようにぶち当たり、魔王以下全員が防御に集中しなければならなかった。
「あ!この卑怯な!」
攻撃は、魔王と四天王、あくまで5人、に向けられたと思っていたが、それは正確ではないことが分かった。実は、四天王、5人だが、のうち2人に集中されていて、あとの4人にはフェイントだったのだ、それでも防御で精一杯だったのだが。
「魔王にとどめを刺すから、3人を相手にしてくれ。」
カークは、ケイカとテンシアに命じた。
「分かったわ!」
また、ハーモニーした。
「あのブス女、女よね、を2人で、一気に倒しましょう。後は、平等に1人づつ、でどう?」
「賛成だ。その一人を押さえながら、あの、多分、ブス女を二人がかりで瞬殺だ。」
もちろん、2人は女にこの会話を聞かせるつもりで話している。女?は怒り狂って向かってきた。
事態の深刻さに気がついている魔王は、はたと思いついた。
「お、お前が、まさか、魔王神殿が言っていた屑勇者か!」
と叫んだ。
「屑かどうか分からないが、多分そうだろうな。」
それを聞いて、魔王は、最後の魔力を全て、おのが自慢の魔剣に注ぎ込み、一気に勝負に出た。その振り下ろした魔剣が折れる音が聞こえた。急激に失われる力を感じる中で声が頭の中で響いたのが、最後に彼が感じた言葉だった。
「まず、最初に倒れた魔王となれ。」
カークの魔力を込めた剣が、魔王の心臓に突き刺され、体の中は焼き尽くされた。同時に漠然としている彼の親衛隊の大半が、カークの火炎魔法で倒されていた。
「こちらは、終わっているわよ。」
「まあ、ほぼ同時に終わったぞ。」
ケイカとテンシアが、3人の四天王を踏みつけて、残忍な笑い顔を向けていた。2人を確認し、その他の味方の無事を確認したカークは、
「そこに隠れている奴。出てこい、殺しはしないから。」
「は、はい…。」
人間型魔族の男女3人が、コソコソと物陰から、震えながら出てきた。
「お主ら~!」
テンシアが、睨みつけた。




