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異世界姉さん美人妻二人、両手に花…勇者の本音は  作者: 安藤昌益


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23/53

噂が流れていた 2

3人の目がもとに戻るのを待って、アブリルは、口を開いた。

「私も直接見たわけではないんだ。見た…かもしれないという話を聞かされたんだ。」

「がせネタではないの?私は、奴の死体も火葬も、その骨が埋葬されるのを、というか捨てられるのをみたのだから。」

「誰から聞いたのです?見たかもしれない、と言うのはどういうことですか?」

「君のことだ、そういうからには、信頼できる相手からの話だろ?」

 3人は、思考回路がつながったのか、微かに期待、大部分は困惑と不安、迷いの気持を感じた。彼らの問いかけに、

「あの糞野郎を知っている奴らさ、元チームの。自称ハイエルフの女とウサギ耳女だよ。」

 不快そうな顔をして答えた。それには、3人とも同調していたようだった。

「あの二人なら…よく彼に抱きついて、キスしていたことだから、彼を見ればわかるだろうが…。」

 ヘブルの指摘に、

「フン。淫乱な連中でしたわね。」

 珍しいアリアの嫌悪感丸出しの表情だった。マルサも同感だという感じで、ヘブルの顔を見た。

「でも、見たかもしれない…てはどういう意味よ?」

 マルサが、アブリルに疑わしいという表情を見せた。

「奴らも、近くで見た訳でもないし、話をしたわけでもないらしい。まして、確かめようともしていない。少し離れたところで見て、声を聞いただけとのことらしい。」

「それで?」

 3人の質問がハーモニした。

「とてつもなく強い奴で、何となく、糞カクタに似ていると思ったという。ただす、雰囲気がかなりちがっていたし、女を二人、姉と称する30くらいの女をつれているらしい。100匹以上のゴブリンの群れを、その後闇討ちにきた数十人の腕自慢が多数いた傭兵団を、やはり100を超えるオーガの盗賊団、魔族の略奪隊を3人で壊滅、魔族も手に負えない最悪の魔獣の群れが占拠していた都市を解放したり、ドラゴンの群れを一掃したり、…。私も噂は聞いている。大半は、弟と称する男の仕事だが、女達も、絡んできた巨漢のオーガやオークを、いとも簡単にねじ伏せたそうだ。」

「カクタなら、そのくらいやるな…、彼以外できそうもないな。」

「そんなおばさんが、好みでしたかしら?」

「まるで、オーガの女じゃないの?そんなのがいいのかしら?」

「おいおい、そこが問題なのか?」

 深刻に悩む男達とは裏腹な女達に、さすがのヘブルも顔をしかめた。

「その女達何だが…。」

「あら、牙でもあるの?」

「よく見たら、男だったとか?」

 女達の悪意のこもった冗談に表情を変えずにアブリルは、

「死んだ魔王妃や亡き王妃様に似ていると…。」

 彼がそこまで言った時、マルサが彼の方に顔を突き出して、厳しい表情で睨みつけた。

「そんないい加減な噂、誰が言ったの?」

「まあ、興奮するなよ。で、誰から?」

 ヘブルはマルサを宥めて、アブリルに促した。

「臨時の衛兵に雇われた奴で、たまたまあの時期で、二人の顔を見たことがある奴だった。まあ、奴も確信を持ってと言うわけではないが、元々間近で見たわけでないからな、王妃や魔王妃を。」

「オーガ並みの馬鹿力はおくとして…カクタが…と考えれば可能性があるわね。そもそも、あの真の勇者様の武勇談も、おかしなところが多くありましたから…。」

 アリアの頭の中では、今までの多くの事柄が、複雑なパネルとなっていたそれが組み合わされていた。

「元王妃と元魔王妃か…。助けて…同行…守っては、何のために?」

 マルサも思案顔になっていた。

「いや、かなりイチャラブ状態だという話というか、噂というか…姉二人と弟一人と称しているくせにだが…。」

「はー?」

「ほお~。」

 二人とも、彼の好みのタイプは、

「私よ!」

という顔だった。ヘブルは少し可笑しくなったが、

「あいつは流されやすいところがあったからな…。まあ、どちらにしろ、お互いかかわり合わない方がいいだろうな。」

 ヘブルは、女達の声を無視して言った。

「それは、どうして?」

 アブリルは、なかば戸惑い、なかばわかっているという顔だった。

「僕たちはカクタを殺した共犯者で、彼の仲間とも思われていて、しかも失脚した哀れな野心家だ。今さら彼に仲間顔して何かをする資格もないし、周囲から疑われるし、何もする力もない…。あの馬鹿との思い出話、あいつの照る焼きをまた食べたいと口にすることしかできないんだよ。」

 最後は、椅子に沈み込み、あきらめた感じの口調になっていた。

「そうですね。私も、あのオムライスの味が忘れられませんね。」

「私も彼の料理ことがなつかしいですわ。」

 “そんなことあったけ?”という3人の表情に、マルサは、憤懣やるかたないという表情で、

「わ、私だって、チームの一員として旅したことがあるでしょうが!それに、王侯貴族との交渉で疲れた夜に夜食のサンドイッチやサングリア、それも果実つきで、持ってきてくれたんだから!」

 懸命に言いつのるマルサのらしからぬ態度に、3人の緊張の糸も切れ、後はかつてのカクタとの旅の思い出話となった。夜も更けたからと、ヘブルはアブリルを館に泊めた。

 彼が、彼に与えられた寝室に消えた後、

「噂さ、根拠のない噂、糞カクタは死んだ、何もしない、何もない。」

「私もです。」

 ヘブルとアリアの視線がマルサに向けられた。

「何ですの?私も、翼をもがれた鳥。何もしません、できませんわ。」

 彼女は、ため息をつきながら、首を横に振りながら言った。

“何かするとなったら、一か八かを覚悟した時。”3人は、心の中で頷いていた。アブリルが、彼らとは異なるものの、もう、この噂に首を突っ込む男ではないとも、同意しあっていた。

「あの、勇者カクタは死んだんだ…、残っているのは、楽しい思い出話だけだ。」

「まあ、アブリルはこの危うさがわかっているでしょうし…、だから私達のところにきたのでしょうから…。」

 マルサが、

「殺した方がいいわよ。」

と言い出さないか、二人は不安だったが、それは言わなかった。その代わり、

「欲を出して…という奴がいたら、こちらにも…。」

と暗い顔で呟いた。




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