魔王神殿の企み
「お前とその女達が交わる度に力が増し、体の若さが、今の時点に戻るようにしてやろう。今も力が増していると言いたいようだな。その通りだ。異界の勇者とエルフの血の相性がよく、極稀に生じたものだ。だが、直ぐに限界が来る。その限界を解除し、かつ心身耐えられるようにしてやると言うのだ。お前の場合も同様だ。そうだ、お前達が身につける聖剣、魔剣の類いもお前達同様に力を増すように、無限大にだ。ああ、そうだ、女達を15歳若返らせてやろう、特別にな、感謝しろ。不満そうだな、もっと若く、自分より若いくらいにしてくれという顔だな。姿が、変わらないギリギリのところなのだ。変わってしまっては、色々困るだろう?真の魔王以上の力を既に持ったお前が、さらに際限もなく強くなっていく、少しづつだがな。持っている聖具、魔具の類いも、ともにいる女達も同様にだ。しかも、不老の存在となるのだ。これ以上の条件は、あるまい?そうだな、お前達の交わりが条件にしたのだから、特別にな、何時でも、何時までも、お前達が魅力を感じ合って、時間があれば何時でも交わりが可能になり、最高の歓喜を味わえるようにしてやろう。さらに、お前には二人を相手にしても、十分なようにしてやる。どうだ?これ以上のものはあるまいが?」
その声には、感情の起伏もないはずなのだが、面白がり、からかっているように思われてしかたがなかった。“まるで、あっちの方の見世物かよ”とも思ってため息をついた。しかし、玉石の言っていることを認めざるを得ないとも考えた、カークは。半ば諦めた彼は、
「分かった。お前達のお楽しみのために、舞台に乗ってやるよ。だが、よければ、知っているのであれば、二、三教えてくれないか?」
「ん?」
言葉にはならなかったが、そう感じられた。クリプトンなどの勇者殺しの秘法は、どこから来たのか、この魔王神殿でも魔王を認定するのか、どうしたら出られるのか、周囲には獣系魔族が囲んでいるだろうから、それを避ける裏口はないのか?と尋ねた。
玉石は、面倒臭そうに、面白がって、語りかけてきた。そのような感情の起伏のある言葉ではないはずだったが。
クリプトンをはじめとして、単にカクタ、カーク、鶴竜の世界の言葉を持ってきたものであり、それ以外ではなく、それ以上でもそれ以下でもない。そして、勇者を殺すと言うより、勇者の力を解放するもので、かつて、そのまま元の世界に帰った者もあれば、この世界を蹂躙するものにはなった場合もあり、その両方になった者もいた。カークのような場合は、初めてだと説明した。が、誰がなどは言及しなかった。
そして、魔王達、魔王候補者達と言うべきだが、の認定は他の魔王神殿が行う。ここは、中央の魔王神殿は、勝ち残った、そしてカークを倒した者が来た場合のみ、扉が開かれる、それまでは何人も入れない、と。
そして、抜け道はないときっぱり言ってから、
「最後のフォローを行ってやろう。お前のアジトに戻してやる。では、せいぜい我らを楽しませよ。さらばだ。」
次の瞬間、カークは、下半身を露出したまま、やはり下半身を露出したままの二人の女達を抱きしめながら、あの魔族の放棄した砦の地下の、彼の秘密の隠れ家に立っていた。
彼は大きなため息を着いてから、二人を敷皮の上に降ろして、自分も座り込んだ。周囲を見渡すと、彼らの下も戻っていた。アフターケアに感心しながら、今後のことを考えようとしたが、頭が整理されなかった。
二人が起き上がるのをとにかく待ち、それから二人にことの事情を説明した。彼女らも、快感の余韻に浸っていたが、大体のところは、聞こえ、そして覚えていたことから、スムーズに話しは進んだ。そして、今後のことを話し合おうと彼が言ったとき、
「その前に、抱いてくれ。」
とハーモニーして、カークに言った。
「盟約でも、既に何度も抱いているではないか?」
と答えざるを得なかったが、
「じっくり抱いて欲しいのだ、代わる代わるではなく…。」
「そう、余韻も…、愛してくれているという確信も…。」
そう言われて、
「分かった。」
としか言えなかった。
「もうよいではないか?いい加減離れろ!」
ベッドの上でうつ伏せになって動けない状態で、力ない声で魔王妃が抗議すると、
「何よ、自分だって…。先にさせてあげたんだし…チャンと待ってあげたじゃない…。」
まだ体が快感の余韻でビクビクとさせながら、カークに乳房を鷲づかみされながら、彼の胸に背中をつけ、彼に、跨がっている王妃が、やはり力ない声で反論した。
「もう十分じゃない?いい加減、代わってよ!」
「も少しなのだ。それが待てないのか?後でたっぷりしてもらえば良いであろうが。」
と魔王妃が同じ形で体をビクビクさせながら、王妃に反論していたのは、一時間ほど前だった。
「腰も立たんほど、やりおって…。全く淫乱な女じゃ。」
「まだ、動けないあなたに言われたくありませんわ。」
声は、疲れきった感じだった。それでも、間に座るカークを何とか見上げ、どうだった?愛してるという視線を向けていた。
「二人とも良かったよ。」
それしか言えなかった。
「愛してる?」
「愛してるか?」
少し間があったが、
「愛している。」
とカークは答えた。微妙な間があったことを責めようと思った二人だったが、やめにした。その代わり、
「私も。」
「吾も。」
何とか手を差し伸べた。カークは、二人の間に仰向けに寝て、その手をとっつ、握った。彼女らも握り返した。“愛することにする。”ということでの一致だが、もうそれでいいと思っていた。カークは、今後のことを、この二人が無事に過ごすためにはどうしたらいいか、どう利用しようか、今後のことを考えようとしていた。
「私達がいなければ、愛してあげることが、あなたの無事につながるのですね…。」
「そうじゃ。こいつのために、こいつが生きるために、生き残るために、我らはお前を愛してやるのだ。」
「私達だけですよ、助けられるのは。だから、私達だけをね…。でも、そもそも、この人を世に放ったら大変なことになりません?大ハーレムを作りかねない助平ですから…。」
「そうじゃ。我ら二人で、世界のためにこいつをしっかり管理してやらねばならぬのだ!」
両脇から、彼の腕にすがり、自分達の胸に彼の腕を密着させながら、そんな話しをしている二人に、カークは心の中で大きなため息をついていた。




