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異世界姉さん美人妻二人、両手に花…勇者の本音は  作者: 安藤昌益


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魔王神殿

「お前の言うことは、よく分かる。わしの部族はそのことを意識して、魔王都に残っていたはずだ。かなりのところ、お前が言う魔王都の役割を担っていたからな。しかし、それでもな魔族にとってはな、それなど問題にならないほど、重要なことがあるのだ。」

 引き受けてから三日後だった。戦いが始まったのは。魔王宮を挟んで、獣人系魔族部族3000人以上、トカゲ型魔族も3000人近くの兵力で対峙した。数ではほぼ互角だったが、獣人系魔族がかなりの割合が正規兵なのに対して、トカゲ型魔族の大半は、カークのような者がその半ば以上を占めていた。正規兵で兵力を固められた獣人系は、あまり積極的に魔王都のごろつきグループに働きかけなかった。だから、カークのことも知らなかったし、勧誘もしなかったのだ。右翼の先頭に立ったカークは、まずは突進してきた正騎士の巨漢を、一刀のもとに真っ二つにすると、魔法を纏わせた聖剣を振るいながら、複数の攻撃魔法を発動し、防御結界をいくつも展開し、相手の魔法攻撃を中和、無効化して、突撃してくる魔獣系魔族の精鋭をなぎ倒していった。王妃と魔王妃も、その彼の傍らで次々に魔族の戦士を倒していった、カークが時折援護したが。左翼と中央が、押されていったが、右翼は彼らの働きで押し進んでいった。

 その最中だった。

「それがあれだ、魔王神殿じゃ。」

と魔王妃が、指さした。

 その先には、石造りと思われる、水を湛えた堀で周囲を囲まれた、確かに神殿に見えるが、正方形で、味気ないほど簡素で、重要視されるほどには、小さすぎる建物があった。

 とはいえ、見とれている暇はなかった。カークは、周囲に死体、または消し炭、黒こげの山を作りながら戦った。二人の女達も、戦っていた。“戦い方が全く違うし、似ているな。”とチラチラ見ながら、カークは思った。

 片や身体強化を目一杯にして、真っ向勝負、真っ向から斬り込む、魔法を放つ、他方は相手の攻撃を受け流しながら隙を見て攻撃する、ように一見見える。それはしかし、あくまでも一見である。真っ向から力攻めしているようであり、しっかり相手の弱いところを見極め、相手を矢継ぎ早の攻撃でそれを自分の一撃に有利なところに誘導している。受け流し、舞うように動きながら、やはり最大の一撃を打ち込む、もっとも良い体制に相手を誘導する。そして、必殺の一撃で倒すのである。

 この二日間の何度もあった襲撃での戦いを見て感じ、そして今日確信できた。カークの存在、加入を、相手側の同一なグループが危険性を伝え、慌てて、安易に手をうってきたのだろう。もちろん、全員返り討ちにしたが。“ふたりとも、技巧派だ。”とカークは思った。聖剣、魔剣などの格のこともあるが、彼女達はかなり戦えた。“二人で連携してくれると、もっと安心できるんだが。”

「転真敬会奥義、小退木!」

 かなり劣勢になっている中央、左翼の支援のために、カークは長射程、やや広範囲の魔法攻撃を放った。突然に回転する無数の十字剣が飛来してきて、次々に突き刺さり、切り裂いたため、獣人系魔族の右翼、中央の進撃が止まった。それに力を得て、トカゲ型魔族もやや盛り返した。

「こんな大技を使って大丈夫か?」

「消耗しすぎたら、元も子もないわよ?」

 心配して駆け寄る二人に、

「見た目は派手だが、さほどではないから心配ない。だが、どちらも同じことを考えるものだな。」

 それは、両陣営とも、別働隊を伏せていて、左右横合いから、相手を挟撃したことである。獣人側の右翼への横合いからの攻撃は、隊列が崩されないうちに、カークが立ちはだかり、次々に精鋭達をなぎ倒し、後方からの攻撃魔法を中和、無効化、受け流し、一部を返して逆に崩し、二人が彼の援護の下に中堅の隊長の男女を巧みに切り倒し、その周辺を魔法攻撃でより混乱させたことに、力を得た兵士達が突入して押し返してしまった。が、トカゲ軍の別動隊は左右とも攻めあぐね、他方、獣人軍の左翼への突撃に、トカゲ軍の左翼、中央は次々に突き破られ、崩されていった。

「もう義理は果たしたな。消えるとするか。いや、サービスにもう一撃。転真敬会奥義、小進木!」

 広範囲にドリルのような槍がどこからともなく飛んできた。かなりの負傷が出て、陣が大いに乱れたが、深傷の者は少なく、死者は運がひどく悪い奴らだけだった。それでも、右翼の連中がうまく退却する手助けになった。

 その間に、二人の腰を抱きしめて転移した。転移した場所は、魔王神殿の前だった。どんなものなのか見てみたかったからだ、カークが。好奇心が疼いた結果だった。

 直ぐに、簡易だが不可視の魔法結界を張って、魔王神殿の入口を探したが、それらしきものは見当たらなかった。それを察して、

「入口は、吾も分からん。見たことはないのだ。当然入ったこともない。中がどうなっているかも分からない。魔王様が、かつて入って力を得たから、入口はあるはず何だが…。」

「でも、神官とか巫女とかがいるのではないの?彼らはどこから入って、あなた方の、魔族の神々を祭るの?」

「そうなのか?ところで、今、魔王が力を得たとか言ったな?魔王になるには、魔王神殿で認定を受けるとかするわけか?」

「ま、待て。そう続けざまに言うな。こちらの頭が混乱するわ。」

 魔王妃は、悲鳴を上げた。ぼつりポツリと説明しだしたが、あまり要領を得るものではなかったが、カークはそれを我慢しながら聞いて整理した。


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