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異世界姉さん美人妻二人、両手に花…勇者の本音は  作者: 安藤昌益


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アラサーどころかアラフィー?

「エルフには見えん?外見は確かに人間だな。だが、子供の頃は…、そ、それにだ、若さはエルフの血を、ちゃんと継いでおるぞ!」

「そ、そうですわ。魔王妃様もそうだったんですね。私も、わ、若さはハイエルフ譲りですわ。長く若く…、ずっと若々しいハイエルフの…。」

「王妃よ、お前もか。な、なあ、我らら長く若々しく…。嬉しいじゃろう?」

「若い、美人妻二人が変わらずにいるなんて幸せで…何ですの、その目は?あ、…。」

「何が不満…。」

 勢いこんで説明、強調する二人は、次第にジト目になっていく男に戸惑い、そのうち、その理由に気がついて、言葉が出なくなった。そして、固唾を呑んで、カークの言葉を待った。

「二人とも、嫁して何年になるんですか?」

 年齢を直接聞こうと始めは思ったが、それはあまりに露骨だと思い、あれこれ考え迷った末の結果を口に出した。

「二十…30年にはなってませんわ。」

「わ、吾も同じくらいだ。」

 それが何か?という表情で、半ば睨み、凄み、半ば不安そうに窺うように彼を見た。

「40代?それも半ば、後半?アラサーどころか、アラフォー、いや、アラフィー?」

 完全にジト目、かつ値踏みする感じになっているカークに、

「何じゃ、アラサーとかアラフィーとか訳の分からぬことを…。」

「ま、まるで、中古か、使い古しされたたというような目で…。」

 愛情などはないとは思っていたが、彼が、今唯一の庇護者である。棄てられては困るという不安が二人に広がった。

「若く、かつ熟した魅力がありますよ。それに、私は熟したものが好みなんです。」

 少し安心したような二人を見ながら、“国王も、魔王も…分かる気もするな。”“実際、使い古されているじゃないか?”とも思ったが、何とかのみ込んだ。ただ、だからといって、彼女らに嫌悪感は抱かなかった、彼女らの体にといった方がいいかもしれないが。

「まあ、それはさておいて。」

と言った彼に、何がさて置いてだ、と二人は思ったが、言葉には出さず、彼の次の言葉を待った。

「今後のことを考えましょう。お二人のお話から、ご事情はよく分かりました。ハイエルフと…。」

 ハイエルフ、あるいはエルフを頼って、と言おうとして、カークははたと思いついて、言葉を切った。彼の考えを見抜いたように、

「無理ですわ、少なくとも私の場合は。」

「吾も、全く同じだ。奴らには頼られぬ。」

 “確かにな。”カークも納得した。彼女らは、ハイエルフ、エルフにとって、人間達との提携の象徴、自分達を保護してくれる存在として尊重なりする存在であって仲間でも、同族でもない。そもそも、エルフは排他性が強い。しかし、それ以上に、政治的、部族の安全、利益がある。

「国王は、生きているからな。」

とカークの呟きに王妃が力なく頷いた。彼を恐れて、誰も、彼女の出身帝国も、母親の実家の国も彼女は、迷惑な存在でしかない。彼女をどこか、安全なところに置いて終わりというのは、人間亜人の世界にはなさそうだった。

「魔王が死んだから、魔界では元夫を恐れる必要はないが…。」

 カークと王妃の視線が魔王妃に向けられた。

「は?」

 自分に期待されていることに気がついて魔王妃は慌てた。

 魔王亡き後の力の空白で、魔界は混乱状態、群雄割拠、新たな魔王の座の争奪争いになるだろう。魔王妃の部族としては、そうした中では、前魔王の妻は大義名分になる。しかも、

「勇者もおまけについてくるのだから、喜んでお前を受け入れるだろう?さらに、人間界の皇族だ。今はともかく将来的には役立つぞ。人間の国の支援、後ろ盾は大きいぞ。」

 カークは言ったが、

「確かにそうかもしれんが…。」

 魔王妃は、不安そうだった。カークとて、自分の言ったことながら、あまり信じてはいなかった。門前払いはすまい、という程度の思いだった。最悪、一人だけでも片付ければ、負担が半分になれば御の字と思おうと覚悟していた。ただ、最初からそう言うのはと思い、大風呂敷を広げて見せたのだ。

「のう、最後まで吾も見捨てないでいてくれるな?」

 彼女の顔は、真剣そのものだった。

「それはどういう意味ですか?」

「彼女の魔界での権力闘争に、あなたと私が最後まで協力するということですよ。」

 それに、小さく魔王妃が頷いた。チームワークがよくなったな、と思ったカークに、畳みかけるように、

「私の場合も同じですよ。どこかに預ければいいなどと思わないで下さい。どこまでも、ですよ。その代わりに。」

「その代わりに?」

「我らもお前を助けるし、尽くすということだ。」

 魔王妃が引き継いだ。これに王妃が頷いた。カークは、自分の知識がザルだと何となく気がついた所での二人からの提案に、難しい表情となった。

「今さら何だが、二人とも子供がいるんだろ?」

 暗に、子供に頼れば、彼らが助けてくれるのでは、と問いかけた。彼らの子供達、というか王家の家族関係についての知識はあやふやだった。召喚後王宮にいた間は、主として戦闘訓練であり、この世界の地理、歴史、社会に、関することも教わったが、必要最低限でしかなかった。その後、魔王、魔族との戦いに出ると、戦いの合間に断片的に聞き、見る、体験することで学んだ、知ったことばかりだった。王家の内情などは知る術もないし、話し、説明するものはいなかった。話す者は噂程度しか知らない連中であり、知識のある者は口を閉ざした。

 まして、魔族のことは、さらに断片的であり、魔王の家族関係などは殆ど知らなかった。 

 子供達の所にとか、家族の所にと言わない二人に、不安のようなものすら感じるカークだった。その彼の顔を見つめながら、迷うような二人が、彼の前にいた。そして、ライバル、顔を見合わせて、軽く頷いて意を決したように口を開いた。

「我らとともにあることを約束を。」



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