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異世界姉さん美人妻二人、両手に花…勇者の本音は  作者: 安藤昌益


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キャットファイトからダークエルフ論争に

 二人の全裸の美女が、取っ組み合い、組んずほぐれつして争っているのである。しかも、相手の感じるところを、刺激もしながら、互いの乳を揉むというより握り、乳を押し付け合いすらして、喘ぎ声も漏らしながらである。快感を刺激し合っているのは、あくまでも有利になるためで、副次的なものに過ぎない。それでも、艶めかしいものを感じ、興奮してしまう、全裸の美女の争う姿だけでも刺激的だというのに。汗だけでない体液の臭いまですれのだから、なおさらだった。

 置いてある武器などを使うことなく、攻撃魔法も使わず、素手の取っ組み合っているのに安心したこともあって、ついつい、その二人の姿に見とれてしまっていた。

 体力的に勝る魔族の魔王妃が、押さえ込むことが多かったが、王妃も技でそれを外し、なかなかいい勝負をしていた。

「ひいー!何をするひ、卑怯だぞ…う、う、あ、あ、あ~。」

「そんなところ~、ああなたこそ、ひ、卑怯…あ~ん。」

 二人は快感に身を捩りながら、互いを押さえつけようとし続けていた。

“なに、見とれているんだ?この馬鹿、変態!”カークは、我に返るが、なにをしたらいいのか、すぐに思いつかなかった。止めなければいけない。そのためには、引き離さなければならない。引き離すためには、どうしたらいいのか。水をぶっかけるか。その水はどうする。断続的に、考えが浮かんだ。その間は、二人の姿に見とれていたのだ。

「キァアー!」

 女達が、奇声をあげて、互いの体を離した。地下水を魔法で集め、さらに冷たくして、二人にぶちまけたのだ。

「冷たい。」

「寒い!」

 二人はぶるぶると震えて座り込んだ。

「これで体を拭いて、衣服を来て下さい。破り合ってばかりいたら、着るものがなくなりますよ。ところで、何でけんかになったんですか?」

 しばらく黙っていたが、互いににらみ合いながら、

「私をダークエルフ呼ばわりしたのよ。自分こそ卑しいダークエルフのくせに。」

「お前が、妾がダークエルフの血が混じっていると言ったのではないか。ダークエルフの血が混じっておるくせに。」

「は?二人はエルフ?」

 意外だった。流石に、その素っ頓狂な叫びに、二人ににらみつけられたが、彼の実感である。耳は、大体のエルフに共通する長耳、ピンと横にとがった、ではない、二人とも。彼にとっては、それ以上に、エルフ?という実感があった。エルフは小柄な傾向があるが、それなりに背丈があるエルフ、ハイエルフも含めて、は少なくない。しかし、やはり、見た目以上に、抱きしめた感触が細い、繊細、華奢と感じる。当初提供を受けた好意の相手にエルフの侍女もいた。二人目の恋人を失った後、抱き合ってキスをした相手の中に(あくまで、そこ止まりである)ハイエルフもいたが、やはりそういう感触だった。だが、二人は違った。大女ではないし、いい抱き心地ではあるが、抱きしめあっているというしっかりした感触だった。

「何を比較しておるのやら。」

「よからぬことですわ、きっと。」

“こういうところは、波長が合いやがって。”互いに不審な目で見ていたが、そのうち彼女らの口から、1/4だという言葉が出た。“エルフの血が1/4?”と思ったが、ハイエルフの血が1/4だという、二人とも。

「二人は、エルフの1/4(クォーター)なんですか?」

と尋ねたところ、

「ハイエルフが、1/4」

と二人がハーモニーしたからだ。

 エルフにとっては、ハイエルフの血は重要な意味をもつことは、カークもよく知っていた。よく言えば誇り高い、悪く言えば高慢だとハイエルフは嫌われるが、そうでないハイエルフも多い。全くそのような態度がない高位貴族のハイエルフも、カークは知っている。しかし、彼のチームにいたハイエルフは、でも他のエルフ族はもちろん、ハーフエルフ、ダークエルフにすら、差別的な言動のなかった。だが、そういうハイエルフでも、ハイエルフの血、血筋は重要な意味がもっていた。彼らの高慢さに不満を持つ他のエルフ族、ハーフエルフも、さらにはいわゆるダークエルフも同様だった。

「それは、他のエルフの血を合わせれば、もっと濃くなる訳ですか?」

 カークの問いに、二人は戸惑った表情を見せたが、

「確かに。」

と認めた、さも嫌そうな顔で。

 二人は、少しづつ自分達を話し始めた。

 ベラノ王国エルマ王妃は、プリマベ神聖帝国の皇女である。そこまでは、カークは、知っていた。

「両親は、ともに1/4ハイエルフでした。」

 プリマベ神聖帝国は、ベラノ王国の数倍の領土をもっていたが、魔王、魔族の戦いの盟主としてベラノ王国を認めていた。帝国とはいいながら、多くの大小の国、都市、部族の連合体であり、その上に、選挙により選ばれた皇帝が巧みに築き上げた制度により、それなりの権威をもって統治していたが、一応単一の王権が確立しているベラノ王国に、国家としての力は後塵を拝している。その結果としての政略結婚として彼女は嫁いだわけだ。

 そのプリマベ神聖帝国だが、帝国内にはエルフが多いだけでなく、ハイエルフをはじめエルフの国家が幾つも存在している。これは、例外的なことである。その彼らも、部族の連合体ではあり、また、ハイエルフの国といっても、他のエルフも、さらに人間の都市まで存在している。それは、たのエルフやダークエルフの国でも同様である。人間の都市が、仇敵であるオーガやドワーフ、ゴブリンなどの侵攻を防ぐ力となっている場合もあるし、農牧業生産、工業生産、商業活動で貢献が大きいし、これもドワーフ、オークなどに対抗する力となっている。特に、ドワーフの作る武器や道具の購入を、かなりの部分必要としなくなるし、購入交渉を有利に進められる。人間の存在そのものがトラブルの原因となることが多いが、オーガ、ドワーフ、オークとの比ではないし、異なるエルフの部族よりも人間との方が関係が良好な場合も多い。人間にとっても、エルフとの関係は利益があるし、内部にかなりの勢力のある帝国、エルフ国家周辺の国々、都市、大小は問わず、重要であったから、婚姻関係を結ぶことが多かった。ハイエルフが、比較的多かったこともあり、皇族や周辺地域の国々の王族、都市の有力者はハイエルフとの婚姻関係がかなりあった。だが、地域によっては他のエルフの国、隣接するエルフの国との婚姻を結ぶ場合も多い。軍事力強化、軍事同盟の関係からダークエルフの国と婚姻を結んだ国もある。ちなみに、ダークエルフの国は、いわゆる褐色肌のダークエルフもいるが、雑多なエルフの集団に近く、人間とも混住し、傭兵稼業の比率も大きく、軍事、経済力が相対的に大きい。帝国も彼女の母の出身国も、人間諸国とも当然婚姻関係を持っているので、当然ダークエルフを含む他のエルフの血も入ってくる。オーガやオーク、ドワーフ、種々獣人の有力部族と関係が深い国々は、彼らとの婚姻関係を結ぶこともある。だから、彼女の血には、オーガをはじめとするエルフ以外の亜人達の血も混じっているはずである。

「まあ、そういうことですね。」

 ダークエルフのことも、他の亜人達の血のことも、エルマ王妃は、最後にはあっさりと認めた。マーナ魔王妃を睨みつけたが、彼女の方は何かが落ちた用なら表情で、

「人間達も同じだな。」

とこちらもあっさり認めた。

 魔界では、人間型魔族は多数派ではあるが、人間と亜人達との関係ほどではない。立場を強化するためにエルフとの提携する場合が多い。エルフとは、親近感があるためだ。彼女の出身国であるオトーニ大公国は、ハイエルフの有力部族が幾つも周辺にあることから、ハイエルフとの婚姻関係が多い。他の人間型魔族の国では、同様な理由から他のエルフとの婚姻関係を結んでいる。エルフ側の利益は、人間との場合と同じ、それ以上に大きい。かなり少ないが、オーガ等、獣人と関係が深い場合もある。そうした人間型魔族国間の婚姻があるから、

「ダークエルフの血が当然、吾にも入っておるな。」

 認めるのは残念だが、という表情で認めた。

「魔界も同じですわね、結局。」

 その声には、皮肉も悪意も入っていないように思えた。

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