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異世界姉さん美人妻二人、両手に花…勇者の本音は  作者: 安藤昌益


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真の勇者を倒し、手柄をたてさせる。

「みんな、狼狽えるな!まずは落ち着け!」

 勇者エネロは、そう叫び、賢者、魔導師、魔法修道士にチーム全員を包む防御結界を3層にしてはらせ、各人を防御、反撃に適した配置に並ばせ、聖女に全員の支援、エルフや魔法騎士達に周囲に索敵魔法を展開、獣人戦士達に鼻、耳をすますように、素早く命じ、実行させた。自分自身も聖剣エクスガリバーを構え、防御結界を張り、五感を集中して周囲を警戒した。

「魔王!何時でもかかって来い!エクスガリバーの錆にしてやる。」

 見事な金髪を、短く刈り込んだ、逞しいが、整った顔立ちのエネロは、自分に言い聞かせるように呟いた。構える聖剣エクスガリバーを、近衛隊が早馬で届けた翌日の夜明け前に、彼と彼のチーム、そして精鋭の魔法聖騎士達、約2千は出撃し、強行軍で進撃し、魔界の領域直前にある、放棄された魔族の砦に入って一夜を過ごすことにした。事前に索敵隊が入城、周囲に魔族の軍がいないことも確認していた。魔導師達が、念のため索敵魔法を広範囲に展開したが、魔族の影もなかった。それでも、十分な見張りを置いて、眠りに入った。明日夜明け前に、出陣、魔王をうつ、と誰もが思っていた。

 その夜、

「魔王が現れたぞ!夜襲だ!」

の声に慌てて皆が飛び起きた。獲物を持って飛び出した面々の足下で爆発が、目の前で閃光が、煙幕が…、いたる所でトラップが起動して、味方は大混乱になっていた。

「聖女様!」

 エネロの後ろで声が上がった。チラリと後ろを向いた彼の視線に聖女が、血を噴き出して倒れるのが見えた。それに続いて、次々に剣聖も、賢者も倒れていくのが見えた。瞬く間に、彼のチームの半ばが倒れた。

「エクスガリバーよ、我に力を!」

 聖剣は光り輝いた。彼の睨む先に、一人の男の姿が、煙幕の中から現れた。

「お前は、勇者…偽勇者カクタ?死んだはずではなかったのか?」

 彼のチームの残りの面々が、カクタを取り囲んだ。パラパラと、魔法聖騎士達が集まってきていた。

「魔王の手先に堕ちたか?!」

 答えない彼に、エネロは怒鳴った。怒鳴り声の中に動揺が走っていた。聖剣が震えているというか、啼いているような違和感をかんじたからだ。カクタは、おもむろに言った。

「魔王は既に倒した。奴の首をやるから、引き揚げろ。怪我したくなければ。」

 別に挑発するつもりではなかった。だから、淡々と言ったつもりだったが、エネロは激怒した。顔を真っ赤にさせて、

「ば、馬鹿にするな!この似非勇者!」

 周囲を改めて見渡し、自分の仲間達や顔見知りの連中がいないことを確認するとホッとした。魔王を、魔王都に侵攻する軍がここを通る、さらにここで一旦休止すると、カークは見ていた。この砦跡は、それにもってこいの場所に位置していた。もちろん、それを予想して、ここの近いに隠れ家を作った訳ではなかったが。だから、じっと監視を続け、エクスガリバーなどを持った近衛兵が届けるまでの時間~この砦にたどり着く、時間を計算した見張っていたが、結果は、ほぼどんぴしゃだった。先遣部隊が到着したのを確認した時点から、準備を始めた。それも、予想以上上手くいっていた。大混乱しているが、それでいて、死者はまだ、でていなかった。“しかし、仮にも勇者相手。手を抜いたら、死ぬのは私になるからな。唯一の戦死者になっても構わないと考えるか。”カークは、気持ちを整理した。

「行くぞ!悪しき敵を打ち倒す、正義の怒りの一撃、その名はライトニング。吾は、今、それを放つ!」

 彼が得意とする電撃系の魔法は、聖剣エクスガリバーに乗って、カークに向かった。それに呼応して、幾つもの火球、雷球が彼に向かって放たれた。ライトニングは、エクスガリバーの力で今までになく、威力が増幅していると感じた。“聖剣は、やはり俺を主として相応しいと思ってくれた。受け入れてくれた!”

 勇者カクタ、エネロにとっては、に全ての攻撃が直撃した。誰もが、“やった!”と思った。だが、彼らの耳に聞こえてきた。

「転真敬会奥義。小退木!」

 勇者エネロの周囲の者が、力がなくなったというように倒れた。

「勇者様を助けなければ…。」

「何故、動かない。我がからだが。」

 僅かな男女が、そのように呟いた。他は、全て気を失っていた。

 ほとんど同時に、カクタが飛び出してきた。真の勇者の聖剣と元勇者の剣が激突した。ぶつかるたびに、光が弾けた。二合目、三合目で勇者の聖剣と元勇者の剣がぶつかり合った。その度に衝撃波のようなものが発生し、異変を知り、駆けつけてくる将兵達がなぎ倒された。そして四合目、エクスガリバーが真っ二つに折れた。元勇者の剣が、防御結界を破り、聖鎧イージスを切り裂いた。同時に、真の勇者エネロの体は、深々と切り裂かれ、血が噴き出した。

「馬鹿な…。」

 何とかそれでも,倒れずに踏みとどまったが、容赦なくカークは、彼を蹴り倒した。地面に半ば埋もれて動けなくってなったエネロを見下ろして、

「エクスガリバーもみんな、君を主として認めなかったんだよ。私が生きていたからね。」

と言ってから、

「さっきも言ったが、魔王の首と体を置いていく。これを持って帰り、陣頭指揮で挑んできた魔王を倒したと言ってくれ。」

 瀕死に近い重傷ながら、苦痛に耐えながら、怒りの表情でにらみつけるエネロを見て、カークは、諭すような口調で、

「君も、君の仲間の半ばが早く手当てをしないと命が危ない。君は屈辱だ、死んだ方がましだと言いたい顔だが、君のかけがえのない仲間達を死なせていいのかい?」

 それから、空間から魔王の首と胴体をだし、どさっと地面に乱暴におとした。

 さらに、剣や鎧、魔具を放り投げた。

「これは、エクスガリバー等の精巧な模造品だよ。魔王との戦いで、力の大半を失ったと言えば通るくらいの、並みの聖剣などより、ずっと質が高い奴だから。え?本物は?もちろん返してもらうよ。」

 聖剣も、聖鎧、魔具もカークの方に飛んでいった。それは、元の状態に修復されていた。ただし、その力が本当に回復するまでには、かなりの時間がかかるのだが。

 カークは、大きく深呼吸して、

「魔王は、真の勇者エネロ様が、瀕死の重傷を負ったが、見事に打ち倒した!」

と叫んだ。その声は、魔法で増幅され、砦中全ての将兵の耳に響き渡った。言霊の魔法を込めていたので、それを真実として受け入れた。真の勇者エネロすら。ただし、完璧ではないが。

 カークは、素早く転移魔方陣を起動させて、その場から消えた。 

 それから、勇者達の応急手当が行われ、その後、混乱もあったが、軍は撤退を始めた。その隊列が視界から消えるのを、塔の上から確かめたカークは、不可知の魔法を纏っていたので誰も気づかなかった、また、転移魔法を起動して、その場から消えた。

 そして、戻ったかれが目にしたものは…。

「さて、どう止めたものかな?」




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