両手に花となった
「どうしたのですか、二人とも?」
複雑な経路で月明かりや星の明かりが入ってくる構造にはなっていたが、天候が悪くなり、殆ど暗闇になっていた。
しかし、勇者の本能?力?から気配を感じて目を覚ましたカークには、二人が起き上がり、彼の所に手探りで来るのが分かった。彼の言葉とともに、ランプが灯った。闇に慣れ、視力の衰えがない者にとっては、十分な明るさだった、周囲の状況を判断するのに。
「なんじゃ!お主、その姿は?此奴を誘惑するつもりか?恥というものを知らんのか?」
「その言葉、そっくりお返ししますわ。夫の喪に服すべき時に、もう男を漁ろうとする女に恥について言われたくはありませんわ!」
睨み合う王妃と魔王妃は、ともに全裸だった。一応、明るくなったので、両手で胸を隠したが。
「裸同士で、何を言い合っているのですか?」
二人の裸を見て、心が揺れつつも、ことさら落ちついたふうに、呆れたという感じでカークはたしなめるように言った。二人は、しばし沈黙したが、意を決したような表情になると、彼に両側から抱きついて、彼の腕に自分の乳房を押しつけた。
「私は、そんなに醜くなりましたの?見捨てられるほどに?」
「妾は、ババアなのか?本当にそうなのか?如何なのじゃ?」
“たしかめて!”と二人は訴えているように思えてしまった。
「いや、お二人とも、お美しいですよ。」
と言ったが、それで許してもらえそうにはなかった。彼から体を離すと、立ち上がってその裸体を見せつけた。
「お二人とも、実に魅力的な体ですよ。」
お世辞を言っているつもりはなかった。二人とも人間の女性としては上背があるが、すらっとしているから、大柄という感じはしない。胸も尻もほどよく大きく、形は違うが形も整っている。魔王妃も、王妃も戦場に出た、武芸は並の騎士以上という噂のとおり筋肉はついているが、筋肉女には見えない。弾力のある肌という印象だし、どこも、まだ崩れていない。若さもある。みずみずしさはなくなってきているかもしれないが、その分、妖艶さ、成熟さが醸しでている。それが、悩殺させようとするようなポーズをとるのであるから、彼女らも必死なのだが、生唾を呑み込んでしまう光景だった。黒髪も銀髪に近い金髪も、それぞれの魅力をさらに高めていた。二人が陵辱されている光景が、脳裏に浮かび上がり、恥を感じながらも、さらなる興奮を感じるカークだった。どちらからともなく、競うように彼に抱きついてきて、彼の唇に自分達の唇を重ねた。すぐに、舌を差し入れて、彼の舌に絡ませようとし始めた。体を洗った石鹸の微かな香りと水が少なく簡単にしか洗えなかったために残る汗の臭い、一応丁寧に拭いたとはいっても残る男達と絡み合った臭い、さらに新たに立ち上り始めている雌の臭いが混ざり合い、彼の性欲をかき立てた。2年間の禁欲も相まって、もはや理性が限界になった。薄い夜着は、押しつけてくる彼女らの乳房の感触の、心地良い感触を、もろに伝えてきた。“もうだめだ!この女達が、悪いんだ!”彼は心の中で叫び、弁解し、二人を押し倒した。自分も素早く裸になると、両手で二人の乳房をもみ、もう片方の乳房を交互に舐め始めた。女二人、美女二人の味比べは、夢みたことだが、交互に平等にというのは“意外に難しいな。大変だな。”と感じながらも、夢中になって動いた。それに、一人と交わっていると、
「早く、たまらないのよ~。」
「妾は、もうがまんできん。」
と柔らかいが弾力のある胸を、熱く濡れた下半身を押しつけられては、欲望が高まりっぱなしとなっていた。
女達は、下から肢体を絡ませ、
「どう、私は?おいしいでしょう?」
「どうだ、こんないい女を味わえて?」
と喘ぎ、腰を動かしていたのが、上になり、
「わ、私の方がいいですわよね?」
「わ、妾の方がいい女だろう?」
目の前の女と競っているのか、寝取った女と競っているのか、と彼が疑問に思い、彼女らも分からなくなりながら、叫ぶように喘ぎ、腰を動かし、そのうち、
「お願い、私の方がいいと言って~!」
「頼む、妾がいいと言ってくれー!」
と四つん這いになり、尻を彼の下半身に打ち付けて哀願し、最後は、彼の下で、
「私を捨てない…。」
「我と一緒にいてくれ…。」
と弱々しく求め訴えて、荒い息をしながらぐったりとなった。そのままの格好で、眠りに落ちた。
脂身が焼ける香ばしい匂いで、女達二人が目を覚ましたのは、もう昼になる頃だった。彼女らが目を覚ましたのを、めざとく気がついたカークは、
「調度よく、食事の準備ができたとこらですよ。起きて、一緒に食べましょう。」
と声をかけた。その声と空腹感から起き上がろうとした二人だったが、
「こ、腰が…。」
「腰がたたん…。」
と言って、何とか四つん這いにまでなったものの、それから先には体がなかなか動かせなかった。
「さ、さすがは、ゆ、勇者様…。」
「勇者がこれほどとは…。」
「死ぬかと思いましたわ。」
「体が壊れるかと思ったわ。」
相手の言葉を耳にすると、互いの方に顔を向け、にらみつけて、
「ヒイヒイ言って、喜んでおったくせに、どこの口が言っておるのかのを?」
「その言葉、そっくりそのままお返しいたしますわ。あられな格好でおねだりしていた、淫乱魔族に言われたくはありませんわ。」
「何い?!」
まだ、思うとおり動けないにもかかわらず、悪態だけは次々に出てくるようだった。
すると、二人の形の良い、弾力のある尻を軽くピシッと叩き、
「二人とも素晴らしかったですよ。」
彼の言葉に、
「私の体に夢中になりました?」
「我の魅力の虜になったであろう?」
二人が、妖艶な微笑みを浮かべて見上げる顔を見下ろして、
「ええ、夢中になりましたよ。魅力の虜になりましたよ。本当に、素晴らしく、美味でしたよ。心の底から興奮しましたよ。取りあえず、食事にしましょう。上になにか羽織ってください。」
和やかな表情で、パンなどを持ったカークは、二人を促した。
「何ですか、その言い方は…心がこもっておりませんわよ、全く。」
「そうじゃ。まるで面倒くさそうな、言い方ではないか。」
“こういう時は、仲がいいな。”と思いつつ、
「本心から言ってますよ。感情がこもろうが変わりないでしょう、本当のことなら別に構わないでしょう。」
二人はふくれっ面だったが、腹の虫が鳴いては、彼に従わざるを得なかった。3人の朝食とも昼食ともつかない食事を始めた。
「美味しいですわね。どこにでもあるはずの、庶民のパンやチーズやベーコンのはずなのに。」
「このスープも美味いぞ。作り手が良いからだろうな。」
美味そうにぱくつきながら、女達はほめたが、彼は苦笑しながら、
「空腹が最高のスバイスになっているんですよ。」
と言ったものの、実はかなり味付けを工夫したんだ、と心の中で胸を張っていた。そんなことを思いながらも、“瑞々しいか…。”とも考えてしまった。過去の二人の恋人のことを思い出していた。20歳前後だった、少なくとも外見はそうだった。“彼女達はオレンジだった…かな。”そう思うと、あの二人と肌を合わせた時の感触を思い出した。王妃と魔王妃は、それと比べると…“ステーキ、いやトンカツかな?”国王と魔王が、若い女に走ったのも分かると思ってしまった。“トンカツは嫌いではないけどな。”そんなことを考える自分に嫌悪感を感じるとともに、あの二人を失ったときの悲しみを思い出してしまった。




