魔法の世界から来た子
光が収まると、そこには女の子がいた。
「こんにちは、でいいのかな?」
着ている服は私と一緒のパーカーとジーンズ。
目の前にいる子のパーカーは、ひもが省略されていて、私のはひも付き。
まあ、その分少し大きめでダブダブなのが玉にキズ。
「こんにちは、かな。こんばんは、にはまだ早いし」
グレーの髪色をした女の子に、私は挨拶する。
黄色い瞳に私が映っていた。黒い髪で黒い瞳の私が私を見ている。
「えーと、ひとまず自己紹介するね。私はユカリ。雛鈴結花浬。ユカリって呼んで」
周囲をきょろきょろと興味深そうに見まわしていた女の子に名前を告げる。
「あたしはパキスタス。パッキーって呼んでね」
「名字は?」
「私のいたところは、名前だけだよ」
「どこにいたの?」
「魔法の世界」
パキスちゃんは楽しそうに話している。
「魔法の世界って昔、絵本で読んだあの世界?」
「そうよ。今はなぜか出入口が小さくて、動物に変身してやっと通れるの」
パッキーちゃんはそう言うと、またネコに変身する。
ネコはベンチをくぐり抜け、私のところに戻ってくるとまた変身した。
「魔法の世界って本当にあったんだ!」
感動して打ち震えている私とは対照的に、パッキーちゃんは落ち着いていた。
「そんなにびっくりすること?」
「だって魔法が使える素敵な場所なんでしょ!いつか行ってみたいところだもん!」
「そっか……なら協力してくれたら、案内するね」
パッキーちゃんは私の手を握って、見つめてきた。
「協力?」
「道を通るのはすごく大変なの。前はもっと楽だったはずなのに」
「それがわかれば、私も魔法の国に遊びに行ける?」
パッキーちゃんが大きく頷いたのを見て、私の心は決まった。