一緒に過ごす部屋の中
「こんにちは、雛鈴ちゃん」
受付の人が私の名字を呼ぶ。
私も挨拶を交わし、用件を伝える。
「また拾っちゃったか。今日はネコ?」
「はい。なんでかよく会うんですよね。迷い子に」
受付の人にネコを手渡す。
イヌやネコならまだしもリスやウサギ、トリなどをよく拾っては届けた。
「ずっと前にネコを届けたことあるんだけど同じ子かな」
「どうかな、ちょっと調べてみるね」
受付の人はそういうと席を外す。
家で何か飼おうと思ったこともあるし、親からも聞かれたことがある。
最初に出会ったネコがどうしても気になって、後回しにしてきた。
「飼い主さんと連絡ついたよ」
受付の人が教えてくれた。
いつもならこれで帰る。買い物に付き合って荷物を持つ、そんな流れのはず。
なぜか今日はネコの視線が、どうしても気になった。
「あの、飼い主さんが来るまで、ここにいても良いですか?」
「良いよ。なら、突き当りの部屋で待っていてね」
ケージを用意していた受付の人が、部屋を指さす。
その部屋にネコを抱いて入ると、自動販売機やベンチ、洗面台があった。
休憩室かなと思いあちこちを見渡していると、ネコが鳴く。
「ちょっと待ってね」
のどが渇いたのかなと思い、受付の人からペット皿を借りる。
自動販売機から紙パックの牛乳を買い、お皿に入れて水で薄める。
ネコがそれをぺろぺろと舐める姿を見て、和んできた。
「ありがとう」
どこからか声がする。周囲を見渡ても部屋にいるのは、ネコと私だけ。
気のせいかなと思いネコを見るとネコも私を見ていた。
「ひょっとしてあなたが……なーんてそんなことあるわけ――」
「気づいてくれた?」
ネコに話しかけるとまたどこからか声がして、ネコが一瞬まばゆい光を放つ。