昔話とネコさんと
「……こうして魔法の世界から来た人々は、自分たちの世界に帰っていきました」
私はお母さんから絵本を受け取る。
お母さんの膝上で聞いていた私は、最後のページの絵を見ながら余韻に浸る。
「うーん、めでたしめでたしなのかな?」
しばらくして、顔を上にあげ、お母さんに聞いてみた。
「あら、どうしてそう思うの?」
「だって魔法の国の人はみんな帰っちゃったんでしょ?それはとってもさみしいよ」
「そうね。確かにさみしいわね」
お母さんはそう言うと、本を閉じる。目の前にあった世界が閉じていく。
「みんなはおうちに帰ったのよ。自分の暮らしているおうちに」
「そっか。おうちに帰ったのか」
「そして、また出かけるのよ。ご飯の買い物とか気分転換にね」
お母さんの言葉を聞いて、私は膝から立ち上がり、そのあとお母さんも立つ。
「私もいつか魔法の世界の行ってみたいな」
「行けると良いわね。その前にお買い物行こうか。今日は何食べたい?」
「カレー!」
満面の笑みを浮かべて私が言うと、お母さんもにっこり微笑んで頷いてくれた。
買い物を終えて、お母さんと家に向かうと、ネコがいた。
青みがかかったグレーで黄色い目のネコがふらふらと歩いている。
「にゃあ」
私に気づいたのか、ネコは一声鳴く。
こちらに近づこうとして、パタリと倒れた。
「お母さん!」
手を引っ張って、私はネコに近づき、抱きあげた。
抱きかかえたネコはぐったりとしていて、赤い首輪が見える。
「迷いネコかな。動物病院に寄ろうか」
母に連れられて、家の近くにある動物病院に立ち寄り、ネコを手渡した。