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イータークラウン ~邪龍と少女の冒険録~  作者: なんちゃら竜
第二章 三大迷宮攻略編
85/140

85話 砂上の戦い


 空中で輝く金色の鱗。

 背びれを翼のようにはためかせ、飛ぶ姿はまさに竜そのもの。

 砂漠の固有モンスター、サンドラゴンがその姿を現す。

 

「本当に釣れちゃった……」

「これで終わりじゃないぞ! 今のうちに攻撃を!」

「そうだった!」


 ララの作戦は、サンドラゴンを匂いでつらせて、釣り上げる。そして上空を舞っている隙に、一斉攻撃を浴びせることだった。

 

 ララが腕に装着した装置からロープを射出、サンドラゴンの体を瞬時に縛り付け、翼の自由を奪った。 


「"バースト"!!」

「"フレイム・バレット"!」


 その瞬間、二人で同時に攻撃を放つ。

 息の合った攻撃は、サンドラゴンに同時に命中した。


「ギャアアス!」


「やった!」

「完璧です」


 声を上げ絶命したサンドラゴンは力を失い、落下。

 ララがロープを切り離し、サンドラゴンは砂の中へと埋もれていった。


「まだ安心するのは早い、サンドラゴンは一体だけじゃないからな。次やんぞ!」


 ララが餌のついた釣り糸を砂漠へと放り投げる。

 先ほどの轟音を聞いてか、サンドラゴンたちが辺りに群がり始めていた。ざっと4体ほどはいる。


「ギャ、ギャアア!」


 サンドラゴンもただ無抵抗に釣られるだけではなかった。

 船に体当たりを繰り返し、ひっくり返そうとしてくる。


「おわわわ! まずいまずい! まさかここまで狂暴なんて!」


「"バースト"!」


 体当たりしてくる個体を狙い、ソティアは射撃する。

 

「ギャ!」

「速い……!」


 しかし、サンドラゴンは銃弾が放たれたると同時に突進を中断。身を翻し、すぐさま砂の中へと姿を隠してソティアの攻撃を回避する。

 やはりそのままの状態でッ攻撃を狙ったとしても、あの身軽な動きで避けられてしまう。


「ど、どうすれば……!」

〈おいソティア、やつら何か仕掛けてくるぞ〉

「え……!」


 左右で船を追いかけるサンドラゴンたちの口が大きく開いている。

 よく見ると、その口の中へと周囲の砂を大量に吸い込んでいた。大量の砂を含んだブレス攻撃を仕掛けてくるつもりである。

 いくらかの体当たりをくらっているこの船ではもうあの攻撃に耐えられそうにもない。そうなればソティアたちは灼熱の砂の中へと無防備に放り出されてしまう。


「た、大変……!」


 だが、もう時間はなかった。

 サンドラゴンは喉にある砂袋に大量の砂を詰め込むと、再び口を開けて砂ブレスを放出する。 


「ギャアアア、スッ!」


「ッ! "バース……」


 砂ブレスをバーストでかき消そうとした時だった。

 

  キッー!!


「ええっ!?」


 突然船にブレーキがかかり、キャタピラの回転が止まる。

 あまりに唐突だったため、船を追っていたサンドラゴンたちはそのまま船の前へと勢いよく飛び出す。そしてそもまま吐き出した砂ブレスを左右にいる仲間へと命中させてしまった。


「ギャアアア!」


 ソティアたちも船が止まる勢いで外へ投げ出されそうになるが、近くにある取っ手を掴みどうにか持ちこたえる。

 そして操縦席でペダルを漕いでいたネオンが甲板へとやってくる。


「アイタタタ……おいネオン、なんで急に止まるんだよ!」


 ララがネオンに大声を上げる。


「面倒だわ」

「え……?」

「面倒だと言ってるのよ、こんな面倒なことしなくたって私たちならあんなやつら倒せるわ!」

「そ、そうはいっても……」


 そこへサントリナが話を続ける。 

 

「サンドラゴンの危険度は三つ星級、そしてこの獰猛な状態であればおそらく五つ星級。やっかいではありますが……」

「私たちはもうそんなやつたくさん相手してきたし、こんなやつよりよっぽどバケモノみたいな敵とも戦ってきた。それにこっちはね、デベに鍛えてもらったことだってあるのよ……今更こんな相手に遅れは取らない。そうよね、ソティア?」


 ネオンが近くに置いてあった大剣を手に取る。そして外へと飛び出す構えをとった。


「ネオン……そうだ、私たちならやれるよ……!」


 ソティアはモーゼを握りしめ、一歩前に踏み出す。


「ソ、ソティアまで……」

「ララ、見ておきなさい。これが私たちのやり方よ!」

「ああっ! ちょ……!」

「結局こうなりますか……でもこっちの方が我々の性にはあってるのかもしれませんね」

「お、おい……!」

 

 ソティア、ネオン、サントリナは一斉に砂上へと船から飛び降りていく。

 砂の上は甲板にいるよりもさらに暑かったが、ララが用意してくれていた耐熱着のおかげでどうにか持ちこたえられそうだった。

 短期決戦であれば、問題はない。


「ドラゴンだがなんだか知らないけどね、こっちにもドラゴンはいるのよ。あんたらの竜種の原型ともいえるね……」


〈ふん、随分とおだててくれるじゃないか。ソティア、あいつの動きは俺が読む。お前は攻撃に専念してくれ〉

「分かった……!」


 砂ブレスを互いに受けて怯んでいたサンドラゴンたちが、再び動き始める。そしてソティアたちを囲み込むようにして砂中を移動する。

 3人それぞれに狙いをつけて、戦闘を開始する。 




「ギャアアアアス!!」

「来なさい! 真正面から受けて立つ!」


 口を開けてネオンを丸ごと飲み込もうとするサンドラゴン。

 ネオンはその突進を自分との距離寸前になる限界まで引き付ける。


「ギャア!」

「ッ! 今ァ!!」


 サンドラゴンの人一人をまるごと飲み込まんとする大口が正面に迫るその瞬間、ネオンが手に持つ大剣を相手の下顎目掛けて突き刺す。

 剣は下顎を貫き、そのままちょうどその下にあった砂岩ごと突き刺さる。


「ギャ、ギャガ……」

「うらぁ!」


 サンドラゴンはその場で動きを止める。その隙にネオンは大剣の柄を相手の上顎へ突き立て、口を開かせたまま固定した。一匹を無力化することに成功する。


「まずは一体ィ! こんなもんよ! ガハハッ!」


「ネオン! もう一体そっち行ってるぞ!」

「へ……?」

 

 ララが船の上から声をかける。

 空に向かって高笑いをするネオンの方にもう一体のサンドラゴンが襲い掛かろうとする。


「あ、やばいかも」


「……"ブレイズ"」


 ネオンを食らおうとするサンドラゴンの口の中に火炎が流れ込む。

 

「ギャアアアア!」


 外側は熱に強いサンドラゴンでも、内側から高熱をくらってしまってはひとたまりもなかった。

 体内で炎は爆発し、もう一匹のサンドラゴンはすぐに事切れる。

 サントリナがネオンの横に立ち、銃を回して華麗に仕舞う。

 

「のんきなおとり役がいたおかげで楽に倒せました。ありがとうございます」

「誰がおとりだってぇ? あんたがいなくても私一人で余裕でした!」

「やばいって誰か言ってた気がするんですが……」



 ソティアは二人のその様子をちらりと横目で確認する。


(あっちは大丈夫そう……私もけりをつけないと……)


 ソティアと対峙していたサンドラゴンは、周囲で素早く攪乱を狙ってきたかと思うと、砂の中へ潜って姿を隠していた。


〈下だ〉

「ッ……!」


 カフィーの声に合わせ、その場から移動する。

 サンドラゴンが先ほど立っていた場所から地上へ向かって飛び出してくる。あの場にずっといれば今頃、あれの胃の中だったに違いない。


「今度こそ……! "バースト"!」


 ソティアは宙を舞うサンドラゴンに狙いをつけ、射撃を行う。

 

「ギャス!」


 しかし、先ほど同様にサンドラゴンは軽い身のこなしで背びれをはためかせ真横に回避する。


「ダメだ……でも……!」

〈ああ、俺たちの勝ちだ〉 

 

 ソティアはサンドラゴンの攻撃から避ける際、あるものを上空へ向けて放り投げていた。

 その投げた物はちょうど太陽の光りに反射し、まぶしく輝いていた。

 その光輝く物に、ソティアが放った光弾が綺麗にぶつかる。

 

〈これには通常の物よりも光度をかなり上げておいた、つまり〉

「うん、鏡は光を反射する……!」


 ソティアが上に投げた物――それは鏡だった。

 上空に投げ出された鏡はうまく光弾と接触し、一部反射する。

 

「ギャ!?」


 反射された光玉はそのまま下へと向かい、横へ避けていたサンドラゴンの胴体を貫く。

 

 一か八かの作戦ではあったが、一度の作戦でうまくサンドラゴンに命中させることができた。


〈カウンターバースト、成功だ〉


 サンドラゴンはそのまま地面に落下し、絶命した。


「こ、これで3体目……あれ、もう一体は……?」

〈む、どこだ? 確かにいたはずだが〉


 ソティアたちの周りにいたサンドラゴンは全部で4体。だが、もう一体の姿が見当たらない。


「ま、まさか……」


 ソティアは嫌な予感がしてしまう。

 こういう時、大体その嫌な予感は的中してしまう。



「ギャアアアス!」 


 後ろからサンドラゴンの鳴き声がする。


「ララ! 逃げて!」

「え?」


 船の後ろから最後の一体が飛び出す。

 サンドラゴンの狙い。

 それはおそらくこの中で最も無力であろうララだった。

 

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