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第四話

生々しくはないですが、残酷な描写があります。ご注意下さい。


魔人の特徴として、肌は浅黒く、人間で言う白目の部分は黒目で瞳は金色。そして人間やドラゴン如きが歯向かうことができない強い力。

そんな魔人が4人も生息する魔人の森に、一人で住む私、キャロットは魔人と魔人との間に生まれた珍しい存在だ。


通常、魔人は家族であっても群れをなさない。生まれ落ちて半日も経たずに自立し、親元を離れる。生まれた時から他種族よりも隔絶した力と知能を持つ魔人族は群れる必要がない。

私も生まれて数時間で親の元を離れた。あれは何百年前だっただろうか。もう親の顔など覚えていないし、生きているかどうかさえ知らない。


例外的に、300年に一度あるかないかの発情期に自分の番いを人里から攫い、繁殖する...らしい。私はまだ経験したことがないのでわからない。

そう()()からだ。

魔人は大体の人型の種族と繁殖できるが、見た目が似ていて気性が大人しい人間を好む傾向がある。気性が激しい魔人が大半を占める中、魔人同士から生まれた私は本当に珍しい、純血の魔人だ。


繁殖できる周期が非常に限られていて、更に生まれた子供が魔人ではない時も多い。そのせいか魔人は数が非常に少ない。

近年は人間の使う魔法が強力になったのもあり、人を攫う魔人を問題視した国が大規模な討伐軍を差し向けることもあったようだ。弱い魔人はそれで死ぬこともある。それで更に魔人は数を減らした。それは別にどうでもいいけれど。


最近妙なことがあった。

魔人は魔力と呼ばれるエネルギーを常に放出しているのだが、突然東の魔人の魔力が消えた。それも数日間。魔人の魔力感知は正確で、200km以上離れていても認識できる。なので瞬間移動でもしない限り、巨大な魔人の魔力が消えることなどまずない。

まさか討伐軍にでも殺された?と思ったが東の魔人に限ってはあり得ない。


---


100年ほど昔の話。


たまに縄張りを奪いにくる魔人や、魔人を危険視した国の軍を皆殺しにしたりして、私が西の魔人と呼ばれるようになった頃。

ふいに東の魔人に興味がわいて遠くから観察したことがある。

身長は180cmほど。浅黒い肌色や黒目、金色の瞳などは普通の魔人となんら変わりはない。髪は黒。この大陸ではあまり見ない色。丁度魔人2人と森で交戦中の東の魔人を目撃することができた。群れるのを好まない魔人が2人組とは珍しい。利害関係でもあるのだろうか?


...圧倒的だった。

嗜虐的な笑みを浮かべながら相手の魔人の顔を掴み、地面に擦り付けながら走ってもう1人の魔人の頭にそれを投げつける。

頭同士がぶつかった魔人達は吹き飛ばされるが、直ぐに立ち上がった。頭蓋が陥没している...だがそれでも戦闘の意思があるようだった。

魔人は、生まれたばかりでも驚くほど頑丈で、例え四肢をもがれて出血した状態で放置されても、1週間ほど動かなければ完治してしまう。

頭が凹んだぐらいではまだまだ戦意は消えないだろう。


...!

東の魔人と敵対している2人の魔人の内1人に見覚えがあった。手配書で見ただけだが、隻眼と燃えるような赤い髪、使っている武器が大槌。恐らく《隕石槌のバルバロッサ》!、単騎で北の小国を滅ぼした魔人の中の魔人だ!大陸全土で高額の懸賞金がかけられている大物。

それが...苦戦している。


東の魔人が動く。早すぎて目で追うのがやっとのスピード!バルバロッサとは別の魔人に東の魔人が肉薄した瞬間、手がブレた。

...頭、両足、両手が吹き飛んだ。...いかに生命力が高い魔人でもあれは...即死だ。

...手の動きが一切...見えなかった。

額から冷や汗が流れ落ちる。ここまで強いとは思っていなかった。私と彼では、人間で言う、大人と子供程の差がある。


!!

バルバロッサが動いた。東の魔人の攻撃直後の僅かな隙!客観的に戦場を見ている私からでも完璧と言えるタイミング!

東の魔人の背後から大槌で頭を狙った必死の攻撃。バルバロッサの槌撃は隕石の衝突に匹敵する破壊力があると聞く!いくらなんでもアレなら多少はーー


う、受け止めている。素手で。

東の魔人が立っている場所以外全て地面がクレーター状に吹き飛んでいることからバルバロッサの一撃は途轍もない威力だった筈だ。バルバロッサ自身も、信じられないというような表情をして目を見開いている。

めまいがしてきた。余りの衝撃に事実の受け入れを頭が拒んでいる。

...心臓の音がうるさい。そして少し前からカチカチと変な音が聞こえる。

...私の歯が打ち鳴らした負け犬の音色だった。


そして直ぐにバルバロッサは東の魔人に頭を拳で打ち抜かれ、絶命した、と思う。

絶命した、と断定しなかったのは、私が東の魔人が腕を動かした瞬間に背を向けて全力で自分の縄張りに走ったからだ。

無様に涙と鼻水を垂れ流しながら。


それ以来私は東の魔人に関わろうとする事をやめた。

魔人という種族に生まれたプライドと自信はその時に消え去った。

.........それともう一つ。変な感情が生まれた。



---


そして今現在。


その東の魔人の魔力が復活?したと思ったら、私の縄張り近くをうろついた後、あっさり私の縄張りに侵入した。

自分の縄張りを荒らされ、それを見過ごせば北と南の魔人に虚仮にされる。直ぐに他の地域の魔人にも伝わるだろう。絶対に関わりたくなかったが、これだけは許容できるものではない。僅かに残っていたプライドと勇気を総動員し、東の魔人に会いにいく。

殺されるかもしれない。だが他の魔人に後ろ指を指される屈辱は考えただけで腹が煮えくりかえる。


...いた。彼だ。

できる限り普段と同じように喋るように、怯えを隠して問いかけた。


「あなた」

「えっ?」

「あなた誰?」




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