第二話
今すぐ洞窟から離れなければ。
辺り一帯の生物全部腹の中とかどんなバケモンだよ。逃げろ逃げろ。
洞窟は惜しいが、ここから離れれば食い物や水場が見つかるかもしれない。移動しよう。
ーーー
結構歩いたな。体感2時間ぐらい。
誰に転生したか分からないが、凄い体力だったんだなこの体の持ち主。全然疲れないわ。
前世じゃ、30歳超えると急に体力下がったから助かるわあ。
ちょっと景色が変わってきた。相変わらず葉っぱが燃えてる木は見えるが、他にも巨大な食虫植物や、見た目がリンゴだけど、膨張と収縮を繰り返したり、超振動してる実を実らせている木があった。ぱっと見食えそうだけど食おうとも思わない。口に入れた瞬間爆発しそう。あと明らかに毒を持ってそうな虹色の雑草...
クソっ、探しても探しても成果がない。割と楽観的な自分でも焦りを覚え始めたーーその時。
ガサっと。虹色の毒草の茂みで音がした。
...また動く植物なんだろ?新種の。
と思ったが、どんどんその音が迫ってくる。おかしい。今までのイカれた植物は俺が近づくと動かなくなっていた。
も、もしかするとーー
ガサっと最後に音がして茂みからその正体が現れる。
あらやだ可愛い。ウサギさんじゃない。アテクシったら変に驚いちゃったわ。
へへっ、だがよォウサギさん。ちょっと俺っちのディナーになっちゃくれねぇかい?なぁに痛くはしねぇよ。
お腹と背中がくっつく前にアイツを仕留める!
幸いウサギさんはこちらに気づいていないようだ。後で何かに使えるかもと取って置いた、乱回転する針金草から射出された、鋭い針を携帯しといて良かったぜ。
サバイバルは身の回りのものを使うのが基本。ありがとうサバイバル動画。
音を立てずに気配を殺してこっそりと近寄る。
いや凄いなこの体。明らかに砂利の上に足置いてるのに音を消して歩ける。クセになってんだ音殺して歩くの。
そんなことに驚いているうちに10メートルぐらいまで近寄ることができた。ん?あれ?ちょ、ちょっとおかしい。ウサギって大きさのイメージ膝下やん?なんかこのウサギさんの体高俺の3倍ぐらいあるんですけど。しかも帯電しててバチバチいってるんですけど。
よし、逃げよう。あの洞窟の主に違いない。洞窟から100000kmぐらい距離をとろう。そうしよう。
あれっ?電気ウサギが消えた!ちょっと目を離した隙にさっきの場所にいねぇ。奴も俺と同じくサイレントステップマスターだったか。何処いっーー
目の前の茂みからヒョコッとクソデカウサギさんが顔を出した。目が合う。
「ぎゃぁぁあぁあぁぁあああぁああ!!」
『えっ?...ぎょえええぇえええぇぇええ!!!!』
異世界初発声!前者が俺!後者が電気クソデカウサギ!
なんか喋ってたような気もするが、全力ダッシュで逃げる!
ウサギも反対方向へ走って行く気配がした。俺の叫び声に驚いたか。ラッキー。
ーーー
凄い遠くまで走って逃げてきた。
色々あって精神的に疲れたな。水と食料は諦めて今日はもう寝ようか。体力的にはまだ大丈夫なんだけど、無理は良くない。
そんな精神的な疲れからか、誰かが俺のそばに近寄ってきたのに気づけなかった。
「あなた」
「えっ?」
「あなた誰?」
この世界の第一村人を発見した。