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4 家が建った

「動いた!」


 私が魔力を送ると、それに応じてぴょこぴょこ飛び跳ねる人形。


 これはかわいいな。

 自分の姿してるからちょっと複雑だけど。


 そんな私の横で、2人は渋い顔をしていた。


「うーん、私、手しか動かせないですね……」


「私に至っては微塵も動く気配しないぞ……」


 力なく手を振るセーナ人形と、ただただぐったりするレイラ人形。


 どうやらこの中でまともに動かせてるのは私くらいらしい。


「リノン、なんかコツとかあるのか?」

「あ、私も教えて欲しいです!」


「うーん、コツって言われても、髪が入ってる場所に魔力を送って、そこから指示出すイメージかな……? 魔力操作の応用って感じだと思うけど」


 昔から割と感覚で魔法を使ってるきらいがあるので、説明が難しいな……。

 魔法学校時代も感覚でやるなってよく怒られてたくらいだし。


「送って、指示……あ、私立ちましたよ!」


 私の説明を理解してくれたのか、セーナの人形が立っていた。

 ただし、生まれたての子鹿のよう。


「うーむ、私は微塵も動かないな。リノンレベルじゃなきゃ扱えないって事は、商品化は難しいか……」


 レイラは少しため息混じりに言った。


 確かに、セーナでこれってことは、動かせる人間そうそういないって事だもんな。

 改良すればいいのかもだけど、このレベルだと多分年単位だし、レイラの性格からしてそこまでやる気があるとも思えない。


「まぁでも人手たりてないし今使う分には大助かりだよ。多分キャパ的にもう一体くらい動かせそうなんだけど、人形ってまだある?」


「いや、昨日急拵えで作ったから三体しかない。ま、どうせ私動かせないしこれ使ってくれ」


 そう言ってレイラ人形を手渡された。


 が、すぐさま横からセーナに奪い取られた。


「え、何?」


「その、使うなら私のを使って欲しいです!」


 チョコでも渡すみたく、セーナ人形を渡された。


『私の』というか、一応全部レイラのものなんだけどね。

 まぁでも、そんな細かいことはさておき。


「別にいいけど、またどうして?」


「い、いや、大した理由はないですよ〜」


 口笛を吹いてあからさまにごまかすセーナ。

 ただ、全然口笛の音は鳴っていなかった。


 何を隠してるんだセーナは……。


 まぁ、セーナに限って何か悪巧みをしているとかではないんだろうけどね。

 それに、セーナも人形自由に動かせるってほどではなかったし、まぁいいか。


 ということで、セーナ人形に髪の毛をセットした。


 セットするときに小声で「私の中にリノンのが……」とか呟いてたけど、勘違いされる言い方だと思うなぁそれは。



 それから私たちはひたすら設計図と睨めっこしながら部材を組み上げていった。

 細かい作業は魔法じゃ出来ないので、人形がいてくれて本当に助かった。

 工具類もお下がりを貸してくれたので、本当レイラ様々だ。


 そして、恐ろしいスピードで作業は進み、夕暮れ時には家は完成していた。


 二階建てのログハウスで、一階フロアは大胆にリビングとお風呂のみ。二階には4つ部屋を用意して、うち二つは正面にある共有のベランダに出られる設計だ。


 ちなみに部屋が4個なのは「ほらぁ、二人暮らしだから子供もできるかもしれないじゃないですか〜」との事らしい。

 セーナ、女の子同士で子供はできないんじゃないかな?

 まぁ、お客さんが来ないとも限らないし、部屋が多い分にはいいんだけどさ。



「私の時は2週間かかったんだが……」


 家を眺めながら、レイラが絶句していた。


「まぁ、3人がかりでしたから。レイラさんの人形もありましたしね」

「うん、正直あの人形がなかったら3日くらいかかってたと思うよ」

「いや、私の時は7人がかりで2週間だよ……」


 マジか、私たち頑張りすぎ……?


「じゃあ、もうこれで完成?」


「家の方はそうだな。後は念のため強化系の魔法でもかけとけば安心だと思うぞ。私の店に刻んでる魔法陣を見せてもいいが……」


「いや、どうせなら今作っちゃうよ」


 王都まで戻る手間を考えたら、今作っちゃった方が早いだろう。

 それに、自分で出来ることはなるべく自分でやりたいしね。


 というわけで地面に下書きしながら魔法陣を作り上げていく。

 そして、10分ほどで完成した。


「私の時は2時間かかったんだが……」


 レイラにできた魔法陣を確認してもらったら、絶句していた。


「一応私、魔法の専門家みたいなものだしさ。レイラはどっちかというと魔法道具専門でしょ?」


 私にあの人形みたいな魔法道具を作るのは無理だ。

 それを一晩で三つも作ってるあたり、レイラだって十分すごいと思うんだよね。


 ともあれ、魔法陣もこれで問題無いっぽいので、家の目立たないところに刻み、魔力を込めた。

 これで向こう5年は大規模なメンテナンスも必要ないだろう。


「じゃあ、これで完成?」


「だな、完成だ!」


「私とリノンの愛の巣……!」


 愛の巣って何だ、愛の巣って。

 まぁでも2人で暮らす家だし、間違っては無いのか……?



 それから私たちは王都に戻って買い出しをした。

 せっかくだし今晩パーティーをしようと思ったのだ。


 そして買い物も済み晩御飯。


「マイホーム建設を祝して、かんぱーい!」


「「乾杯!!」」


 私たちはガラスを合わせて中のワインをぐっと飲み干した。

 さすが一本2万G(ゴールド)もしたワイン、香りがすごい。


「これは美味いな! 大体安酒で済ませてるから、より美味く感じる」


「私も久しぶりのお酒だから、いつもより美味しく感じるよ」


 国のパーティーとかでは、失態をおかすまいと、お酒には手をつけなかったからね。


 ちなみに、セーナは最初の一杯で潰れて、私の膝の上で寝ていた。


 おかしいな、別にお酒弱くなかったはずなんだけど……。


「ぐへへ……ふにふにきもちい」


 このやろう……!


 そんなこんなで私たちは夜がふけるまで楽しく過ごしたのでした。

とりあえず家を建てたかったので超速で工事させました。

プロットだとここまででプロローグ含め3話だったはずなのに……。


あ、それと今日もう1話番外編的なものを投稿するかもしれないです。

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