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2 理想のマイホームを探せ

「此処なんていかがでしょうか?」

「うーん、2人暮らしなんでちょっと大きいかな……」

「では……こちらは?」

「私できれば庭とか欲しいんですよねぇ」


 呪いの内容も分かった翌日、私たちは不動産屋に来ていた。

 理由はもちろん、田舎でゆったり過ごすためのマイホーム探しだ。


 ただ、案外理想の条件を満たした家というのは少ないもので……。


「すみません、おそらくお二人の条件に合うところはうちじゃ取り扱いが……」


 こんな感じで断られる事既に4件目。


 このままだと王都中の不動産屋をハシゴする事になる予感さえして来ていた。



「はぁ……ちょっとは理想下げるべきなんですかね」


 次の不動産屋への道すがら、セーナがため息混じりに言った。


「いや、でも一生物の大きな買い物だからね。報奨金も出たけど、無限にお金があるわけでも無いし、後悔したら辛いよ」


「ですよねぇ……」


 報奨金の額は合計で約3000万G(ゴールド)

 これだけあれば王都に豪邸も建てられるんだけど、その分理想が高くなっていた。


「どこかにいい家落ちてないかなぁ……」


「落ちてたら絶対悪い家ですよそれ」


「いやまぁ確かにそうなんだけどさ」



 それから私たちはもう3件ハシゴしたものの、結局理想の家は見つからず。

 日も落ち始めた頃、中央広場の椅子で2人うなだれていた。


「家探しってこんな大変なものなのか……」

「そもそも田舎の家っていうのが取り扱い少ないですからね。そのせいもあるとは思いますけど……」


 確かに、今の時代わざわざ田舎の方に行こうとする人の方が少ないもんな。

 王都の方が安全でハイカラで住みやすいから、大抵は田舎から王都に来る人の方が多い。


 不動産屋で扱ってるのもそういう田舎から出てきた人たちが売ったものなので、王都から出ても快適に過ごせるような、条件の良いものはそうそう無いのだ。


「もういっそ新築で建てちゃいます?」


「いっそそうしても……いやでもお金がなぁ」


 田舎に新築一戸建てとなると、費用もそれなりにかかる。


 村に職人とかがいればいいけど、原則は王都から職人が行って建てることになるからね。

 移動の間も人件費とかかかってくるから、けっこうバカにならない金額になってしまうのだ。


 余裕があるといえど、今後の生活も考えると無駄遣いは避けたかった。


「「はぁ……」」


 そう、2人して頭を抱えていると、


「お、そんなところで何してるんだ2人とも」


 この声は……。


「あ、レイラ、昨日ぶり」

「レイラさん、こんにちは」


「あぁ、こんにちは」


 頭を上げると、大きなとんがり帽子がいた。


「で、どうしたんだ、そんなうなだれて。世界を救った英雄なんだから胸張った方がいいぞ」


「いや、そうじゃなくて実はね───」



 というわけで、かくかくしかじか。

 レイラにここまでの経緯を話した。


「なるほど、マイホーム探し……でもなかなか条件に合うものがないと」


「うん、どっかいいところ知らない?」


「いや、私不動産屋じゃないからな……。でも、それなら自分たちで建てるわけにはいかないのか?」


「今その話してたんだけど、ちょっとお金がかかりすぎるかなぁと」


「あぁいや、そうじゃなくて、自分たちの手で建てればいいじゃないか」


 ……私たちの手で、建てる?


 その方向性は全く考えてなかったな。


「でも、建築って色々難しいんじゃないですか?」


 私も、こう、職人じゃないとできないイメージがある。


「いや、意外とそうでもないぞ。私の店も自分で建ててるしな」


「え!? あのお店レイラが建ててたの!?」


「そうだぞ。センスが滲み出てるだろ?」


 いや、正直今までやばい建築家に捕まったとか思ってたんだけど……。


 でも、デザインはともかく作りはしっかりしてるし、案外いけるものなのか。


「なら、私たちも自分で建ててみる?」


「せっかくならやってみてもいいかもですね。思い出にもなりそうですし」


 確かに、自分たちの住処を自分たちで作るとか、なかなか青春できそうな話題だ。


「あ、どうせなら私も手伝いくらいしてやろうか?」


「え、本当に!? ……で、それはおいくらほどで」


 経験者の意見は是非聞きたいけど、あんまり高いとメリットなくなっちゃうからね。

 お金は大事だ。


「いや……別に稼業にしてるわけでもないし、金はいらないよ」


「いや、それは流石に申し訳ないですよ!」


「そうそう、手伝ってる間はお店空けさせちゃうわけだし」


 稼業じゃないにせよ、その分の補填くらいはすべきだろう。


「あーいや、正直店はオーダーメイドがメインだから空けてても問題はないんだが……。そうだな、じゃあ家が完成したら晩ごはんにでも招待してくれよ。勇者パーティーと飲み会出来たなんて、自慢のタネだろ」


 そう言ってレイラは得意げに笑った。


 どこまでも良い人だ……。


「じゃあ、とびきり高いお酒でも用意しておくよ」


「おっ、それは楽しみにしておくよ」


 こうして私たちは、自分たちの家を自分たちで建てるという一大プロジェクトを立ち上げたのだった。

ここまでである意味プロローグという……。

次回から本格的に始まりますので、どうぞよろしくお願いします!

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