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20 吸血鬼の生態

 私たちはリモナをお風呂に叩き込むと、ベルカに事情の説明をすることにした。

 さすがに何の説明もなく見知らぬ女の子が家に入ってきたら怖いだろうからね。


 そんなわけで、かくかくしかじか、ベルカに説明をする。

 まぁ、私たちもよくわかんないこと多いし、そんなに深くは説明できないんだけどね。


「──というわけで、心配だから一時保護した感じかな」


「吸血鬼……害はないのか?」


「多分ないと思う。本気で殺すつもりとかなら、ノックとかせずに家ごと破壊してくるだろうし」


 まぁ、この家を建てたときに書いた魔法があるから、そうそう壊されたりはしないんだけどね。

 でも、攻撃された感じもなかったし、家を壊そうとはしてきていないはずだ。


「ま、なんにせよ、ある程度素性がわかったら元居た場所に帰すから安心して」


「ご主人様がそう言うなら、安心しておくのだ!」


 ベルカは満面の笑みで言った。

 信用してくれているっぽいので、素直にうれしい。



 それから私たちはご飯の準備をすることにした。


 あの様子だとご飯とか食べられてないだろうからね。吸血鬼にご飯とかいるか知らないけど。


 とはいえ凝ったものは作れないので、メニューは畑でとれた例のトマトをメインにしたサラダだ。


「あの、別に文句とかではなくて、家に上げてよかったんですかね? 魔王軍四天王の吸血鬼とか名乗ってましたけど」


 トマトをクシ切りにしていると、横からセーナがそう言った。


「ちょっと怖くはあるけど、さすがにあのまま放置もできないでしょ。私たちがいれば危険ってこともないだろうし」


「それもそうですね。私たち(・・・)ならどんな敵が相手でも余裕ですもんね!」


 セーナは『私たち』を強調しながら嬉しそうに言った。


 刃物扱ってるときに急にハイテンションになるのやめてほしいな……。



 それからしばらく、ちょうどサラダが完成したところで、例の吸血鬼、リモナがお風呂から出てきた。


「何なのじゃこの服は……」


 洗面所から出てきたリモナは真っ先にそんなことを言った。


「しょうがないでしょ、サイズ合いそうな服そのくらいしかなかったんだから」

「そもそもなんで一般家庭にこんなものがあるのじゃ……」


 リモナは襟のレースを触りながら、少し恥ずかしそうにしていた。


 リモナに着せた服。それは、メイド服だった。


 本当はパジャマあたりを用意しようかと思ったんだけど、うちは各々二着しかパジャマを持ってないので、今朝の洗濯物が乾いていない今、貸してしまうとベルカのパジャマがなくなりかねなかったのだ。

 その代わり、メイド服はあれから何着か貰っていたので、余裕があった。


 まぁ、魔法を使って乾かしたりしてもよかったんだけど、そこまでする義理はないし、さっきのパンチの意趣返しだったりする。


 あ、もちろんベルカの許可はとってますよ。


「文句言うなら脱ぐ?」


「ぐ……そ、そもそも我が着ていた服はどこやったのじゃ!」


「それなら、汚れがひどかったからベルカが洗ったのだ!」


 ベルカは元気よく手を上げながら言った。

 無邪気なこの笑顔、怒れまい。


「というか、そんなことよりも、リモナさんの話聞かせてもらえませんか?」


 このままだと一生本題に入れないと察したのか、セーナが軌道を戻してくれた。


「なんでおぬしらに話さねばならんのじゃ」

「そうですか……。なら、服脱いで外出ますか? 私はリノンほどやさしくはないですよ?」


 悪態をつくリモナに、セーナは覇気のようなものをまといながら詰め寄った。

 すっごい怖い……。


「は、話といっても、何を話せばいいのじゃ……?」


 オーラに押されてリモナも素直になった。


「まず、リモナはあの四天王の吸血鬼なんだよね?」

「あぁ、そうじゃ。ま、四天王自体、魔王に押し付けられただけの役職じゃがな」


 ふむ、嘘を言ってる感じではないか……。


「でも、私たちが知ってる吸血鬼って、もっとグラマラスな人でしたよね?」

「うん、完全に子供なのはなんで?」


「それは……ま……いからじゃ……」


 急に恥ずかしそうに下を向いてボソボソ喋るリモナ。


「ん? なんて?」


「じゃから、魔力がないからじゃ!」


「魔力……? 魔力がないと子供になるの?」


 ちょっと予想外の答えに、思わず聞き返した。


「吸血鬼は不老不死じゃからな。その代わり、魔力量によってその見た目が変化するのじゃよ」


 なるほど、吸血鬼ってそんな生態をしてるのか。

 希少な上、ほとんどが魔王領に住んでるせいで、こっちの世界じゃ生態とか分かってないからね。全然知らなかった。


「じゃあ、寝れば元に戻るの?」


 魔力っていうのは寝ればある程度回復できる。だから、寝ればまた大人の姿になるんじゃないかと思ったのだ。

 ただ、その質問に、リモナはやれやれと言った様子で首を振った。


「よいか、吸血鬼は魔力を貯めることはできても作ることはできないのじゃ。じゃから、人の血を吸って魔力を補給するのじゃよ。……ま、我はそんな気持ち悪いことできないから、魔力吸収(ドレイン)魔法なんてものを作ったんじゃがな」


 リモナは遠い目をしながら言った。


 吸血鬼っていうくらいだから血を吸うとは思ってたけど、そんな理由があったのか。

 つまり、血を吸わない限りこの幼女形態でいるって事だろう。


 あの様子を見るに、断固として血なんて吸いたくないんだろうし、魔力吸収(ドレイン)魔法もそもそもの魔力が無い今使えないだろうから、誰かに危害を加えるって事もなさそうだ。

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