表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/22

17 真相解明

 ライブが終わった後、私たちは会場の売店でグッズを買ったりしてから家に帰った。


『お姉さまがオンリーワン~』


 その売店で買った黒い箱から、そんな歌が聞こえてくる。

 あれは魔法道具の一種で、スイッチを入れると事前に保存しておいた音が流れるというものだ。


 ベルカが欲しそうにしてたから買ってあげたのだ。


「ふんふんふーん」


 ベルカが曲に合わせて鼻歌を歌っていた。

 そんなに気に入ったのか。ユーリアが聞いたら喜びそうだね。


『コンコン』


 そんな光景を眺めつつ、のんびり過ごしていると、玄関からノックする音が聞こえてきた。


 もう日も落ちてるというのに、こんな時間に誰だろう。


「ベルカが行ってくるのだ!」


 ベルカは一言いうと、玄関のほうへと駆けていった。


 私が行ってもよかったんだけど、ここは素直に任せるか。

 多分、里の人がおすそ分けを持ってきてくれたとかだろうし。


 そんな風にのんびり構えていると、玄関のほうから、ベルカの「きゃああ!」という悲鳴が聞こえてきた。


「なにごと!?」


 実は我が家には鍵がない。

 こんな田舎だと危険な人もそうそう居ないし、私とセーナは人間相手じゃまず負けることがないので、不要と判断したのだ。


 でも、ベルカはそんな戦闘能力はないし、仮に襲われれば危険だろう。


 セーナは今、お風呂に入っているので、呼びに行く時間はないな。


「チェーンぐらいつけとけばよかった……!」


 私はそんな後悔を漏らしつつ、一人で玄関に走った。


 すると、そこにいたのは筋骨隆々の男たち────ではなく、ピンクの髪を肩まで伸ばした一人の少女だった。

 着ている服はフリフリの、可愛さを追求した感じのもので、服よりも衣装って感じだ。


 ここまで言えばわかるよね。

 そう、そこにいたのはユア──もとい、ユーリアだった。


「ご主人様……! ユアだ、ユアがいるのだ!」


 ベルカは驚いた様子でユーリアのほうを指さしていた。


 なるほど、急に好きなアイドルが家に来たからびっくりして叫んだのか。


 一方、ユーリアはそんなこと気にも留めずに、私を見るや飛びついてきて言った。


「ご無沙汰しております、お姉さま!」



 ▼△▼△▼△



 とりあえず玄関で長話というのもあれなので、ユーリアを家に招き入れて、食卓に座った。


「あの……もしかして、ユアとご主人様は姉妹なのか……?」


 座って最初に口を開いたのはベルカだった。


「いや、血は繋がってないし、複雑な家庭でもない。ただの友達だよ」

「ただのって言い方は引っ掛かりますけど、姉妹ではありませんわよ」


「あれ? でもさっき、お姉さまって呼んでなかったか……?」


 ベルカは首をかしげながら聞いた。


「姉妹でなくとも、お姉さまはお姉さまなのですわ! 心のお姉さまってやつですわね」


 いや、そんなみんなご存じみたいに言われても……。


 ベルカも質問する前より首をかしげていた。

 理解できなくていいと思うよ、これは。


 詳しい経緯は省くけど、魔法学校時代に懐かれて、お姉さまって呼ぶようになっちゃったのだ。

 歌に『お姉さま』が多いのも、察してもらえるとありがたいです……。


「そんなことより、こんなところまで何しに来たの?」


 私は話を切り替えようと、切り出した。


 こんな田舎を座標登録なんかしてないだろうし、転移魔法でなく、自力で来たはずだ。

 明日もライブがあるだろうに、時間をかけてこんなところまで来た理由がよくわからない。


 ただまぁなんとなく察しはついていて、私に会いに来たなんて答えが返ってくるかななんて身構えていると、ユーリアはにっこりとほほ笑んで言った。


「実は、お姉さまにライブに参加していただこうかと思いまして」


 ────ん?


「参加って、客席から?」

「そんなわけありませんわ。当然、ステージで歌って踊る方ですわ!」


 ────────んん?


「ふぅ、お風呂開いたので、次どちらか入ってください」


 私の脳内が疑問符でいっぱいになっていると、お風呂場からセーナが出てきた。


 そして、すぐにユーリアのことを見つける。


「あれ、ユアさん! ……あ、なるほど」


 ユーリアと見つめあって、軽くうなずいたかと思うとすぐさまユーリアの隣の席に座った。

 そして一言、


「リノンがアイドルやったら盛り上がると思いますよ!」


「いやあのね……」


 普通に拒否しかけて、ある違和感に気が付いた。


「あれ? なんでアイドルに誘われてるの知ってるの?」


  誘われたのは今しがただし、お風呂に入ってたセーナが知ってるのはおかしい。


 セーナもそれに気づいたらしく、ギクッとした。


「そ、そんなこと今はどうでもいいじゃないですか!」

「そうですわ! それにファンクラブ内ではもう最終日にお姉さまが出るって言ってますもの!」


 いや、勝手にそんなことされても知らないよ……。


「だから、お姉さまを関係者席に招待して既成事実を──」


 ユーリアはそこまで言いかけて慌てて口をふさいだ。


 でも、ばっちり聞こえてるからね。


「これまたずいぶんと手の込んだことを……」


 いろいろと察した私は、思わず頭を抱えた。


「手の込んだって、どういうことなのだ?」


 隣で置いてけぼりのベルカが、不思議そうな顔で聞いてきた。

 確かに今ので分かれってのも酷だね。


 多分、ユーリアは私と一緒にライブに出たかった。でも、素直に頼んでもまず拒否されるので、関係者席に招待して既成事実とやらを作ることにしたんだろう。

 ただ、直接招待したんじゃただの友人枠ともいえるし関係者とは言い切れないから、セーナを通してこっそり関係者に仕立て上げたといったところだ。

 そこから考えれば多分、朝セーナと一緒に転移した女性っていうのもユーリアの可能性が高い。ユーリアは一応次席卒業生で、転移魔法くらい使えるだろうからね。


 そんな説明をベルカにしてあげたところ、


「なんかやり方が汚いのだ」


 と、見たことないような目で言っていた。


 ユアさん、ファン一人失いましたよ……。

ゆっくり伏線を張ってたら、なぜかミステリーみたいに……。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ