表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/22

16 ユアのライブ

 私の魔法学校時代の友人というのは、たった二人しかいない。


 一人目は当然、レイラだ。

 もっというと人生初の友人であったりもする。

 別にぼっちだったとかじゃないよ? ……ほんとだよ?


 そして二人目の友人が今ステージで元気いっぱい手を振っているユア───もとい、ユーリアである。


「そういえば卒業する時、歌手になるとか言ってたか……」


 動機は私の口からは言いにくいものだったけど、確かになるって言ってたな。

 ユアって名前も確か、卒業する時に名乗り出してたやつだ。


 でも歌手志望だったのに、回り回ってアイドルに行きついているとは。

 まぁ、ユーリアの目的を考えれば違和感はないけども。


「リノン……まさか、ユーリアのこと忘れてたのか?」


 隣に座ったレイラが、信じられないという様子で言った。


「いや、忘れてたわけじゃなくてね。まさかアイドルになってるとは思っても見なくてさ」


「あー、確かに元は歌手志望か。でも、チケット渡される時に会わなかったのか?」


「いや、会ってないよ」


 そもそも、チケット自体、セーナが持ってたからね。


 ……あれ? でも、それだとなんかおかしく無いか?


「レイラは、ユーリアに招待されたからここにいるんだよね?」


「そうだな。じゃ無いとこんなVIP席来れないよ」


 そりゃそうだ。普通に買ったらそうそうこんなところ来れないだろう。

 というか、そもそもさっきそう言ってたしね。


 それに、周りの雰囲気からして、ここはお金持ちというよりかは、関係者席のように感じる。

 それはつまり、私たちも招待されたってことだ。


 ということは……。


「ねえ、セーナって、ユアと知り合いなの?」


「へ? な、なに言ってるんですか! そそそ、そんなわけないですよ~」


 明らかに動揺してるな……。いったい何を隠してるんだ。


「でも、ここって関係者────」

「あ、そんなことより曲始まりますよ!」


 話を逸らす気満々でステージを指さすセーナ。

 素直にそっちを見ると、確かにユアはMCを終え、曲の準備に入っていた。


 まぁ、聞き出すなら後でもいいし、今はライブに集中するか。


「それじゃあ一曲目からフルスロットルで行くからね! みんな、サイリウムの色はピンクで! 『愛(ラブ)お姉様』っ!」


 ユアが曲名を言うと同時に、会場がわっと沸き立つ。

 そして客席がピンク色の光に染まっていた。


 何ともきれいで壮観な絵だ。


 そして、アップテンポな曲が始まるとともに、その光も前後に揺れ始める。


 ユアはそれを見て満足そうな顔をすると歌いだした。


「私のラブ♡ラブ お姉様に伝えたい

 私のドキ☆ドキ お姉様に聞かせたい


 近づくだけで 高鳴る鼓動

 思いよ届け 私の(アイ)・LOVE!」


 ユアの「LOVE」の声に合わせて、会場からも声が上がる。

 すごい一体感だな。


 ふと隣を見てみると、ベルカとセーナも楽しそうにサイリウムを振っていた。

 楽しんでもらえているなら来たかいがあったね。


 一方、レイラは顎に手を置きながら下の客席を眺めていた。

 完全に研究者の顔になってるな。


 そんな三人に囲まれつつ、私は若干の居心地の悪さを感じていた。

 だってあの曲、完全に────


「ご主人様、せっかくだから楽しまないとそんなのだ!」


 そんな私の様子がつまらなそうと感じたのか、ベルカにそんなことを言われた。


「いや、つまらないとかじゃなくてね──」


 そう言いかけて、思い直す。

 確かにいろいろ思うとこはあるけど、せっかく招待してもらったんだから、楽しんだほうがいいのは確かか。


「うん、ごめん、楽しもうか!」


 そういうと、いろんな考えを捨てて、サイリウムを曲に合わせて振る。


 なるほど、会場との一体感といい、アイドルを応援している感じといい、これはなかなか楽しいな。




 それからライブは、ユアのMCを随所に挟みつつ進んでいき、合計で7曲目の歌が終わった。


 さすがに結構疲れてきたな。

 横を見ると、二人とも流れる汗を何度もぬぐっていた。


「みんなありがとー! さみしいけど、次が最後の曲です!」


 ユアの言葉に、会場から「え~」という声が聞こえてくる。

 短くて不満というよりかは、もっと楽しみたいよって感じの声だ。


「でも、次の曲は今日が初披露の曲になります! それじゃあ最後まで盛り上がっていこうねっ! 『ベリー・スイート・お姉様』!」


 その合図で曲が始まると同時に、ユアの背後が色とりどりの煙を上げて爆発した。

 すごい演出だ……。


 というか、あれ見た感じ創作魔法っぽいな。


 いやまぁ自分の魔法をどう使おうが勝手だとは思うけどね。

 ただ、私たちの代の次席卒業生で、魔王討伐の有望株だったろうに、すごいところに才能使ってるな……。


 それにしてもまたお姉様かぁ。

 これでタイトルにお姉様が入るのは6曲目、歌詞に至っては皆勤賞だった。


「ほんとぶれてないな、いろいろと」


 事情を知るレイラが横からからかうように言ってきた。


「ほんとね、多少は変わってるかと思ったんだけど……」


「ま、嫌われてるよりはいいだろ」


 そんなものなのか……?

 私が首をかしげている間に、ユアの歌も始まる。


 悩んでいても仕方ないので、サイリウムを振る。ひたすら振る。とにかく振る。


 そして五分後、曲も終わりエンディングの時間。


「みんな今日は来てくれて本当にありがとー! それじゃあ今夜、あなたのおうちに行くからねっ!」


 決め台詞なのか、会場が今日一盛り上がった。

 夢に出るよって意味なのかな?


 なんとなく二階席のこっちのほうを見ながら言ってた気がしたけど、まぁきっと気のせいだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ