表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/22

13 王都を観光

 ベルカが我が家にやってきてから約1週間。すっかりメイドも板についてきていた。


 私たちも簡単な家事はやってるけど、大半はベルカがやってくれるのだ。

 流石に悪いと言ったんだけど、「居候させてもらってる身だから、ベルカがやるのだ」との事だったので、任せている。


 真面目だし体力あるし飲み込みも早いので、生活クオリティも一段階アップして大助かりではあった。


 不満点を上げろと言われても見つからないくらい……いや、一個だけ気になる事はあるか。


「おはよ〜」

「あ、おはようなのだ、ご主人様! ご飯できてるから食べて欲しいのだ」

「う、うん」


 そう、何故か私の呼び名がご主人様になっているのだ。

 ちなみにセーナは奥様と呼ばれている。


 一体何故こんな事になっているのか……。

 容疑者は二人ほどいるけど、ベルカも気に入ってるっぽいのでとりあえず放置している。まぁ、気になるだけで困るってほどのことでもないからね。


 私は席に着くと、用意されたグラタンを口に運ぶ。


「お、すごい美味しい。また腕上げた?」


「本当か? 実は今日のグラタンは自信作なのだ! 里の人から牛乳をもらえたから、それをふんだんに使っているのだぞ」


 なるほど、濃厚で美味しいのは新鮮なのもあるのか。


 というか、ベルカもうお裾分けされるほど里の人と仲良くなってるんだ。社交性すごいな……。


「ってあれ? そういえばセーナは?」


 そういえばセーナの姿が見えない。

 いつも私より早起きしているはずなんだけど……。寝てるのかな?


「あぁ、奥様なら何か用事があるとのことで王都に行ったのだ」


「王都に? 一人で?」


「いや、見知らぬ女性と一緒に行ったのだ。何やら話し込んだ後、転移魔法で移動していたぞ」


 見知らぬ女性……?

 レイラ……はベルカも知ってるもんな。他にセーナの知り合いで転移魔法使える人なんていただろうか?


 いや、セーナにも古馴染みくらいいるか。セーナとは出会ってまだ4年くらいだし、私の知らない友人くらいいてもおかしくない。


 流石にセーナレベルで危険な目に遭うって事もないだろうから、心配しなくても大丈夫か。

 そのうち戻ってくるだろうし。



「うん、美味しかった。ごちそうさま」

「お粗末さまなのだ!」


 私は手を合わせて感謝を伝える。


「さて、今日は何をしようか」


 ベルカが来てからのここ1週間、せいぜい里に降りるくらいしか出かけていない。

 別に用事もないからそれでもいいんだけど、いい加減に出かけたくもあった。


「ベルカはどこか行きたいところとかある?」


「行きたいところ……あ、なら王都に行きたいのだ! あんな大きな街、見た事ないから探索したいのだ!」


 なるほど王都か……。


 案内できるほど私も詳しくないけど、買いたい魔導書もあったし丁度いいか。探索なら適当にぶらぶらするだけでいいだろうし。


 ▼△▼△▼△


「やっぱりすごい都会だな、王都って!」


 王都に移動した私たちは、一番大きいメインストリートへとやってきていた。

 ベルカの口ぶりからして、都会っぽいところをと思ったんだけど、大成功だったみたいだ。


「獣人の町ってそんなに田舎なの?」


「あぁ、そもそもが自然と共に生きる生活だから、お店すらなかったのだ。なんだったらヤナギの里も都会の部類なのだ」


 なるほど、それなら王都はテンションも上がるか。

 前回はすぐにレイラのところに行っちゃったし、今日は好きなだけ巡ってもいいかもしれない。



 それから私たちは、気になる店には片っ端から入っていった。

 ベルカのメイド服のせいで貴族に間違われたり、欲しかった魔導書を購入したりしつつ、メインストリートを進んでいく。


 そして4時間ほどで一番奥の広場へと到着していた。


「ふぅ、すごく楽しかったのだ!」


 ベルカはスイーツ店で買ったクッキーを頬張りながら言った。


 楽しんでもらえたようで何よりだよ。


「む? あれはなんなのだ?」


 ふと、ベルカが噴水のそばにある看板を指さした。


「あぁ、あれはこの街のイベントなんかのお知らせが貼ってある掲示板だね。お祭りの連絡とかあるかもだし、見て行く?」


「お祭り! ぜひ見たいのだ!」


 まぁ、直近にお祭りがあるから分からないんだけど見るならタダだしね。


 私たちは掲示板まで移動すると、端から張り紙を確認していく。


 掲示板は色とりどりの張り紙で所狭しと埋め尽くされていた。


「王都にはこんなにイベントがあるのか……!」

「うーん、まぁほとんどは趣味のコミュニティに参加する人を集ってたりするだけなんだけどね」


 そのコミュニティで飲み会があったりするので、ある意味イベントっちゃイベントではある。


「でも、ちゃんと探せば……ほら、これとかそうじゃない?」


 私は一枚の張り紙を指す。そこには『水かけ祭り開催!』の文字が。


「水かけ祭り! ……って、何をするお祭りなのだ?」

「さぁ? 文字通り水を掛け合うんじゃない?」

「え? それだけか?」

「多分それだけ」

「……あんまり楽しそうじゃないな」


 どうやらベルカのお眼鏡にかなうお祭りではなかったようで、別のものを探し始めた。


 そしてしばらくして、ベルカが嬉しそうに掲示板を指さす。


「ご主人様! これとか面白そうだ!」


「ん? どれどれ」


 ベルカの方に歩いていき、指さされた張り紙を見る。


 そこには大きな文字で『大人気アイドル ユア 王都ライブ決定!』と書かれていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ