9 怪しいマッサージ
プロット調整したので、今回ちょっと短いです。すいません。
それから私は種を貰うついでにレイラを王都に送り届け、セーナと協力して畑に種を撒き直した。
ちなみにレイラは「さすがに何日も店を空ける訳にはいかないからな」との事で、王都に残った。
お店がちょっと心配だったし、まぁ安心かな。
そして翌日。
「おはよー」
「おはようございます、もう早起きもすっかり慣れましたね。偉いです!」
なんかすごい子供扱いされてる気がするな……。
まぁ、ぐーたらしてた私のせいなんだろうけどね。
「もともと朝弱い訳ではないからね。寝られるなら寝たいだけで」
「確かに冒険してた時は普通に早起きでしたもんね」
「そうそう。まぁそれに、最近運動してるからか寝付きがいいんだよね」
冒険してた時は肉体もそうだけど、精神の方も削れてたからあんまりよく寝れなかったんだよね。
でも今は健全に体を動かしてるだけだから、ぐっすり眠れる。
健康スローライフ、最高!
「その分ちょっと筋肉痛は来てるんだけど」
「あ、それなら私がマッサージしてあげましょうか? 気持ちいいですよ私のマッサージ」
セーナが手をわきわきさせながらこちらに近づいてくる。
なんかすごく目が怖い。
「いやぁ、大丈夫かなぁ」
「そんな、遠慮しないでくださいよ。マッサージ以外のことはちょっとしかしませんから」
「ちょっとはするの!?」
そのちょっとの内容がすごい気になるな! 多分私の尺度だとちょっとじゃないんだろうな!
「くそ……呪いで口が滑りました……」
セーナは顔をしかめて悔しがっていた。
今だけは魔王にちょっと感謝かもしれない。
「ま、まぁとにかく、受けず嫌いは良くないです! 素直に私にマッサージされてください!」
やけくそとばかりに迫り来るセーナ。
どんだけマッサージしたいんだ……。
まぁ、してもらえるのは嬉しいんだけどさ。
「絶対にマッサージ以外のことはしないなら、してもらいたいけど……約束できる?」
「うぅ……いいでしょう……! 今はそれで我慢します!」
セーナは血涙でも流しそうな表情で頷いた。
今はって、いずれどうするつもりなんだ……。
ともあれ、約束したら破るような性格ではないのは知ってるので、椅子に座ってマッサージされる体勢になる。
「じゃあ肩とか腕とかマッサージしますね〜」
「うん、お願い」
セーナのマッサージは申告通り、結構気持ちよかった。
細い指が絶妙な力加減でツボを刺激してくれる。
ここ数日の疲れがスッと抜けていくような感覚。
実に素晴らしいものでした。
「ほんとに上手いね。なんか体が軽くなったよ」
「じゃあまたしてあげますね!」
「うん、お願い。私も回復したらやってあげるよ」
「え、いいんですか? じゃあその時はあんな事やこんな事を───」
「するのはマッサージだからね!?」
どんな事をさせるつもりなんだ……。
───と、瞬間なにかピリッとした気配を感じた。
これは、罠魔法が発動した気配だ。
「セーナ、多分、罠に何か掛かった」
「本当ですか? じゃあ見に行ってみます?」
「うん、そうしようか」
私達はすぐさま畑に移動する事にした。
どんな野生動物でもまず負けないので、大して準備いらないからね。
「よし、叱りつけてやるぞ〜」
「動物に言葉通じますかね?」
「そこはまぁ、雰囲気でね」
今後荒らされなければいい訳で、ちょっと怖がらせれば十分だろうし。
そんな会話をしながら外に出ると、青々と茂るトマトの横で、銀髪の少女がツタに絡まれていた。
「あれ、動物じゃない……?」
どこからどう見ても少女だった。
茶色のボロ布で出来た服を身にまとい、白い肌は土で薄汚れている。
そして何より、犬のような耳と尻尾は、その少女が獣人であることを表していた。
「え、なんでこんなところに獣人が……?」
本来、獣人はもっと南の方にいる種族のはずだ。
そりゃ最近は王都でも見かけはするけど、こんな田舎にまでいるほどじゃない。
「畑荒らしの犯人はあの子だったって事ですかね?」
「どうだろう……? とりあえず話を聞いてみようか」
ぼーっとしてても始まらないので、私達は獣人少女のところまで近づいていった。




