コント「平安・陰陽師」
主要登場人物:陰陽師の安倍晴明、陰陽師の芦屋道満。安倍は頭に烏帽子をかぶり、顔は白塗り。道満はバサバサの長髪で、左肩に にわとりのぬいぐるみをのせている
ナレーション:ときは平安時代。二人の陰陽師が術比べをすることになり、館で対面することとなった。
二人はお互いに意識し合い、ライバル心を燃やしていた。
安倍と道満、向き合って正座している。
道満「はじめてお目にかかる。わしの名は芦屋道満だ」(礼ををする)
安倍「えっ?あたしゃ高慢だ!?変な名前でおじゃる!」
道満「芦屋道満だ!」
安倍「はじめておめにかかる。わしの名は安倍――」(礼をしようとする)
道満「――何?安倍ぇ?安倍って言うの!?はははっ!!」
安倍「何がおかしいのじゃ」
道満「だって安倍って前の総理大臣と同じ名字じゃん!!」
安倍「いや、それ時代が違うから!」
道満「あ、そうか」(笑うのをピタリとやめる)
互いに礼をする
安倍「して、今日はどのような勝負をするので?」
道満「マリオブラザーズで決着をつけようではないか!」
安倍「時代が違うから」
道満「あ、そうか」
安倍、道満の方を見て
「ああああっ!!」
道満「どうしたのだ」
安倍「道満殿の肩にもののけが憑いているではないかっ!」
道満、キョロキョロして「何?どこに…?おらぬではないか。安倍殿は怖がりよのう。ほっほっほっ。怖い怖いと思うから、ありもせぬものが見える…ん?(自分の肩を見て)ぎゃあああっ!こんなところにいるっ、これは怨霊じゃ!」
安倍「鵺か!?」
道満「にわとりじゃ!にわとりの霊じゃ。昨日食べたから!この怨霊をお主の陰陽の技で祓ってくれぬか!」
安倍「造作もない。わしに任せるでおじゃ」
立ち上がって道満に近づき、道満の髪の毛をわしづかみにして激しくゆする
「貴様、にわとり殿から離れろー!」
道満「痛い痛い!逆じゃ!」
安倍「あ。そうだ」
にわとりのぬいぐるみをわしづかみにして激しくゆする
「貴様、道満殿から離れろー!」
道満「術をつかって取ってくれよ。普通に手でひきはがそうとしてるだけじゃん」
安倍「あ、そうか…そうでおじゃるな、そうでおじゃるな」遠くを見て「あ。あれはマンホールの穴ではないか。いいことを思いついたでおじゃる。怨霊をマンホールで落とすでおじゃる」
道満「さすが安倍殿。そんなことができるとは」立ち上がり、穴の前まで行く。安倍は道満の後ろからついていく
安倍「ここでよい。ではゆくぞ」ドンっと押す
道満「何をするのだ!わしごと落ちるではないか!」
安倍「あ。すまぬすまぬ。そうだ」
道満「そうじゃなくてお主の技で祓って落としてくれ!」
安倍、後ろから組みつく
道満「安倍殿…何をしているのだ…」
安倍「コブラツイストをかけているでおじゃる!」
道満「そうじゃなくて、陰陽の技でござるよ!」
安倍「何だ。造作もないこと…(印をむすんで)臨、兵、闘…………」首をかしげる
道満「者」
安倍「者、皆……」首をかしげる
道満「陣」
安倍「陣、裂…」
道満「在」
安倍「在…」首をかしげる
道満、振り返り
「大丈夫!?」
安倍「いや、昔やったんだけど忘れてて…」
道満「もうよいわ。それによく考えたらこのにわとり、わしの守護霊だった」
安倍「え!?そうだったの?」
ナレーション:すると、そこへ一人の旅人がやって来ました
安倍「こっちに旅人が来るでおじゃっ!コートを着ているぞ。そうだ、道満殿。陰陽の術であの旅人のコートを脱がせた方が勝ちにしよう」
道満「よかろう。では、安倍殿から」
安倍「おう」(ふー!ふー!と息を吹く)
道満「待て、待て。何をやっている。旅人の隣りで「ふーふー」と…」
安倍「これは陰陽吹きかけ術」
道満「そんなのないぞっ。直接ふーふーしたらダメじゃん!」
安倍「え。ダメでおじゃるか」
道満「反則でしょ。陰陽師の術をつかうの!呪文とかさ式神とかないの?」
安倍「じゃお主がやってみろよぉ!!」
道満、あきれて
「何キレてんだ…よし、わしがやろう。ここは式神を使うぞ…(目を閉じて印をむすぶ)珍念…来い」
すると、舞台の袖から 湯呑みを持った小坊主のからくり人形が来る。
安倍「おおっ、あれが式神か!」
だが、からくり人形はお辞儀をしてUターンして戻っていく
道満「だめだったー!」
安倍「何をやっているのでおじゃるか」
道満「旅人にお茶飲ませて、体温上げてコート脱がせようと思ったら、距離が遠かったみたいでさ。帰っちゃった」
安倍「では次はわしも式神をつかうとするかな」
道満「ほほう。とくと拝見するかな」
安倍、目を閉じて印をむすぶ
「メルセデス!…来い」
舞台の袖からデコトラのラジコンが現れ、端まで横切って袖に消える
安倍「ダメでおじゃぁー、ったくっ!あの運ちゃん」舌打ちする
道満「何をしたかったのだ…」
安倍「風でコートを吹っ飛ばそうと思って」
道満「では次はわしが。(印をむすび)掃念…来い!」
小僧が袖から現れ、雑巾で拭きながら去っていく
安倍「ま、きれいになったな」 (完)
最後の小僧の式神はエキストラです