17 アトランティス 6
【完結済み】?あれはウソだ
1700時。日没直後。
死体を確認しに来た研究員たち。広場一帯は髪と内蔵を燃やしたようなキツい悪臭で一杯だった。檻の中には原形を留められず構造崩壊したドロドロの肉塊が小山となっていた。
研員1「死んでるよな?」
溶岩や毒物用の超長採取棒で檻の隙間からつつく。
研員2「それを確認するのがオレタチだぜ」
研究員2が撮影しながら言う
研員1 「えー対象は形象崩壊。表面は腐肉のような質感。日没後ながら今も煙状の気体が噴出中。原形を保つ器官は認められず。対象からは酷い悪臭。これより検体採取を試みる」
フォーク状の先端部を肉塊に刺す。そこで止まる
研員2「どうした?」
研員1「引っかかりやがった。骨かなんかだろ。クソっ、びくともし」
死んだ。
カメラを檻に向けていた研究員2がなにか倒れる音で振り向くとそこには吸血されて急速に顔が青くなっていく同僚の姿。急性貧血によって即時で気絶したのだ。よく見ると採取棒の先から蔓植物のような細糸が棒を伝って這い伸びてきており、蔓の先端が同僚の手に突き刺さっている。
カメラを捨て慌てて同僚を引き剥がすオレ。幸運にも蔓は簡単に引きちぎれた。そのまま建物ドアまで全力疾走で逃げるオレ。同僚をドアに寄りかからせるとカメラを拾いに戻るオレ。
研員2「対象は健在。採取担当は負傷。検体採取及び接近は危険と判断し帰投する」
●
翌日明朝。
直射日光が当たり始めるまで待ってからカメラを載せたキャタピラ機動のUGVが接近を開始する。
その映像が中継されてくる。
暗黒会議室。
議長「状況を。研究部」
研員2「昨日終盤の状況と同じです。日光照射とともに表面の灼けと匂いの噴出が始まりましたがそこまで止まっています。この表層の肉塊状組織が盾となって中まで日が通るのを防いでいるとみられます」
研究部長「観測からの計測ですがこの肉塊の体積と最初の人間体時の体積とが合いません」
議長「どっちだ?」
研究部長「増えてます」
安保部長「じゃあ何か?あん中に全快状態で丸々入ってるってコトか??」
研究部長「可能性は高いと言えます。研究部は安保部による戦闘駆除を申請します」
安保部長「自分らは関係ないと思って好き放題言ってんじゃねえぞオラッ!誰がやると思ってんだコラァ!諜報部の報告読んでねえのかテメッコラー!!」
研究部長「安保部の打撃力は重々承知ですよ。充分やれます」
安保部「ッッッッザケてンじゃねえぞテメッ!!つーかもうサアムウトさっさと殺れよ。元々そういうハナシ(二つが組んだことが問題。片方づつなら問題ない)だったろ」
諜報部「諜報部として現時点ではその選択肢は反対です。ミナはサアムウトのいうことは聞く傾向にあり、男が居なくなると完全に制御不能予測不能になると思われます。そもそもこの男が人質として機能しているからミナはいまだにおとなしく殺されているんですよ。男が無くなれば即大手を振って暴れ始める名分が立ちます」
議長「そうだ。その男は結局人間だったのか?研究部」
研究部長「残念ながら間違いなくただの人間です。ただ」
諜報部が引き継ぐ
諜報部長「ただ、あの拘禁部屋を説明も受けずに順応し使いこなしています。石器時代の原始人が、です。依然正体は不明です」
議長「だが、使えそう手はそれぐらいしか無いのだろう?」
沈黙。誰も声上げない
議長「一度対話してみる必要があるのだろうな」
議長「通訳を呼べ」
ナレーター「死んだと言いましたが死んでませんでした。お詫びします」