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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

短編集

俺は世界樹の精霊だけど自分の周りがハイテクになって寂しいので

 


 俺はこの世界の中心


 これは別に自分に溺れた発言でなく事実だ


 俺はこの世界に一本しか生えていない世界樹と呼ばれる木の精霊だ


 俺の仕事はこの世界の重要なものを作り出すこと


 それは魔素と呼ばれるものだ


 これは魔法や魔道具を使う際に絶対に必要となる


 この世界は魔法が主体で全てが回っている


 剣を作るにも火の魔法、形成の魔法、と魔素を使用する魔法を使っている

 他には家を建てる際には魔法で柱を立て壁も木を並べるときに魔法で動かす、しかもこの材料を採取する際にも魔法で切る


 そう俺が作り動くことで人間の営みが動く


 人間達は戦いをする。悲しいことにこの戦いに巻き込まれて関係の無い人が死ぬこともある。


 俺は根が張ってある部分の事は知れる、そして俺の根は今や世界に根を広げているなので世界の情報は知ろうと思えば全て知れる


 この世界には俺以外に必要な存在がいる


 神は人間が戦いを行い続ける事を知って戦いの方向性を作り生き物の死を世界のサイクルに組み込むことで平和を作られた


 しかし今は神様は他の世界を作りそこに集中してらっしゃる、しかないことである。


 俺以外の必要な存在とは勇者と呼ばれる人間と魔王と呼ばれる人ならざる者だ


 勇者が人間を率いる、魔王は人間を襲う者共を纏め人間を効率よくかつ狩りすぎないように調整をする。


 そうして秘密裏の均衡が保てた


 勇者は一世代に一人生まれ記憶は戦いの行い方のみを引き継ぎ、魔王は記憶と意思を引き継ぐ


 あるとき事件が起きた


 この世界の発展を願い何年かに一度、他の次元にて不幸な死を遂げた者の中から無作為に選ばれる人間が渡ってくる


 これまでも色んな変化があった


 最初では剣とは何かものを斬る道具でなく叩く物だったのが斬る道具として扱われるようになったり


 食の大切さという考え方が広がったり、火薬の発見、温泉という文化


 挙げれば切りが無いほどに発展に貢献してくれていた


 この発展に問題が起きた


 あるとき渡ってきた人間がいた。


 この者は魔力を扱えず魔素も扱えない


 だがこの地に来てできた大切な存在が魔物に殺された


 いわゆる復讐だ


 復讐は悪いものでないだがこの者は賢すぎた


 前世ではマジシャンという職業に就いていたらしく


 剣に火薬を仕込み振り抜く瞬間に発火し威力を上げる方法を確立


 魔素の反応を調べ上げ魔物の存在を感知する魔物感知装置を作り


 誰でも使えるものではなかった魔法を科学というものを使い代用するという方法を確立


 それ以外にも魔法を魔素を自分で使うことなく代用できるものを幾つも作った


 そしてそのどれもが誰でも使える


 結果魔王を勇者以外の存在で討伐、魔物に対策するすべを徹底的に作り上げ


 最終的に俺の膝下に街を作り数十年



 ――――――魔素が使われなくなった――――――



「なぜ? なぜ誰も魔法を使わない?」

「当然でしょ? 非効率の訓練を続けるよりも誰でも一瞬で使える者の方が良いに決まってる」

「えー今まで俺が作ってきたのに?」

「信仰なんてそんなものでしょ」

「そ、そんな……そんなこと言うなよ」


 気にしてることなのに……


「暇ですね」

「ああ、だから俺は旅に出ます」

「はぁ?」

「旅に出ます」

「いや、聞こえなかったわけじゃないですよ」

「え? じゃなにさ」

「旅に出るってどうやってですか?」

「それはだな、俺は根が張ってある場所なら自分の自我を持ったまま移動できるだろ?」

「まぁ、結構範囲狭いですけどね、最近使ってないですよね」

「そ、で。俺は世界中に根が張ってあるのをまた移動できる具合に成長しました」


 ドヤ~


「だから最近使ってなかったのか……実体は?」

「簡単、木の実を取りまして」

「うわ、貴重な世界樹の実……」

「『木代人形生育』と人型に木を生長させて」

「すげーコントロール……」

「はい、最近この木の上にいて死んでしまった怪鳥の魔粉とアビちゃんから貰った魔核水晶を合わせて埋め込みエネルギーの供給機関を作って……中に入るのみ!」

「やばい……こんなバカな事に世界最高の素材と技術使ってるよ……」

「重要なことさ」


 なぜ、こんなにバカだな~みたいな目で見てくるのだ?


「じゃあ俺はお留守番ですね」

「ん?」

「え?」

「いや来るに決まってるでしょ?」

「いや世界樹を守るのが仕事ですし」

「でも君死んでるし」

「いや……そうですけど……」

「世界樹というか俺のおかげで会話できてるわけだしね?」

「いや……どうやって……」

「君は霊魂体だから物質体をもってこれば良いと、はい!これ!」

「鳥?って、えっ!?」


 今日の朝ここに死にかけてた()を見せる


「今日死んじゃった子でちゃんと許可とったよ?」

「そうじゃない、そうじゃないんだよ……霊神鳥……伝説やないかい!」

「大丈夫、ただのふらっと来た鳥さ」

「ダメだこれ、絶対に止められん」

「はい、入ってね?」

「はぁ……分かりました!」


 なんで渋々なんだか


 よく分からないな~



 ――――――――思い立って2年――――――――


 最初は大変だったが人とは面白いものを開発するものだ


 冒険なんて勝手にやっていると思っていたがシステムがあったのだ


 冒険者ギルド


 街の評判としては口々に荒くれ者だの暴力的なやつが多いだのといい評判ではなかった


 だが伝わってくるものが差別や見下し、迷惑、なんてものじゃない


 それすら誇らしいみたいな感じだったのだ


 興味のままに行ってみると門前払いされそうになった


 猿山のボスよろしくの体の大きな男が俺の前に来て勝負に勝てれば入れてやると言ってきた


 よく分からなかったが普通なくらいの強さを持っていたのだろう


 人の動きを生で見るのが面白くついつい長くしてしまった


 いや~ほぼ一日かけたらシュモに怒られたよ……


 あ、シュモっていうのは今は鳥の中に入っている俺の守護者の名前です


 それから冒険を初めて色んな所に行けた


 地面に根を張って固定されたところから見るのではなく同伴した人間とそこに住む人間の話や行動、それをどう思っているのかを聞いてから見るとでは全然違った


 シュモは「世界樹からの景色もいいものなんですよ?」と言っていた


 一緒に見るって言うのが大切なんだよと思ったけどふと思った


 シュモはいつものいてくれたのにこんなことを思わなかったな……


 無意識にいつもいてくれるものと思っていたからかな?


 人間はいつか死んで俺の中に来る、意識なんてなくてただの魔素として


 儚く必死に生きて、進んでいく彼らはすごいものだなと思った


 常に一人で上にいるんじゃ気づくことはなかったな



 色んな景色を見ることを目的に動いているとシュモ以外に一緒に来てくれる人間ができた


 シュモは「あまり関わっていると辛いですよ?」と忠告してくれたけど人と見る景色の素晴らしさを知った俺はそれをわかった上で仲間にした


 彼女はいつも首から箱を下げてる


 俺の知らないものだから異世界の技術品なんだろうと思っていた


 今日はそんな彼女が加わってから二十五回目の冒険


地獄の入口(ヘルポインテッドドア)』と呼ばれるところだ


 降下型のダンジョンで入口は標高3,000メルに入口があり地下6,000メルにそれがあるらしい


 ちなみに本当に地獄に繋がってはいない


 見た目からそう言われるらしい


 あぁ実物で見るのが楽しみでしょうがない!


「ちょっと? ちゃんと準備した?」

「したよ、カル」

「今回もよろしくね!」

「ああ」


 カルが持っている箱は景色を紙に描く代物で『カメラというらしい』


 凄いんだよねこれ、何枚か貰ったけど見る度に見た時のことを思い出す


 あの時はこう、あはは、あの人は面白かったな~


 カルもその話をすると「あの人はなんだったんだろうね」と話に乗ってくれる


 ちなみにカルはシュモが喋れることまでは教えた


 よくシュモのことを撮っている(カメラで紙に描くを撮るというらしい。よく分からないが)


 今回も楽しく行くだけだな



 標高3,000メルのフェナルチークという山を登る


 道中に色んな生態系を見れた。カルは静かに色んな生き物を撮っていた。後で見してもらおう


 頂上から見る景色は世界樹の景色に似ていた


 下に作り物のような人の営みがあり空が近く青暗い


「家が小さいな」

「あそこに人の営みがあるんだよ、私たちなんてちっぽけなんだよね」


 そういうカルの顔は今までにも何度か見た事のある羨ましそうな顔だった



 ダンジョンに入るとモンスターが何十匹と襲ってくる


 ダンジョンは魔王が配置するか俺が配置するかだが……うん、覚えてないけどこれは俺の配置だな



 目的地に着くまで頂上から言うと二十日くらいかかった


「結構かかったな、カル」

「いつものことじゃん、私的には色んな景色があってあっという間だったよ」


 そう言いながら最後の扉を開ける


 素晴らしい景色だった


 地面は円を描き壁から1メル程だろう


 その下に穴がある


 奈落のような深さを感じる闇が広がる反面仄かに赤黒くそれでいて紫のように見える炎が下の方で燃えている


 それだけならば凄いだけで終わるがここの凄さは天井か


 巨大な樹木が一つ地に向かい生えている


 生えているところを見ることが叶わないほどに枝葉が広がっている


 枝葉の間に液体の塊……いや、液体の実が成っている


 巨木をみていると穴から腹に響くような轟音が鳴り響く


 この地下に雷ができているのだろう


 様々景色がここにありそれぞれがアンバランスだ



「カル、凄いな、これ」

「………うん、なんか凄い」

「あはは、語彙がなくなってる」

「……うん、って写真!撮らないとね」


 そう言って壁ギリギリに下がりまずは上に生える巨木を撮るみたいだ


 目がキラキラして見える、楽しいんだろうな


 今ならば聞けるかもな……


「なぁ、カル」

「ん~ ?何~?」


「なんで女装してるの?」


「……え?」


「いや~、言い方を変えようかな君は帝都に居なくていいのかい? 転生者君」


 そういうとカメラを持ったままこっちに向かい立っていたカルはカメラを下ろし驚きと諦めたような顔でこっちを見た


「そうか……気づいていたんだ」

「まぁね」

「いつから?」

「最初から」

「まじかよ……得意だったんだけどな、変装」


 そう言ってパンと手を叩くと一瞬でそこに立っている人が変わった


 これで魔法を使っていない(俺の力を使っていない)とはすごいものだな


「で? なんでこんなことを?」

「……疲れたんだよね、上に立つのが。俺は大切な人を守りたかった、大切な人とこの異世界の綺麗な景色を楽しみたかったんだ。なのに上に擦り寄ってくる奴らはこんな俺と友達(ダチ)になった勇者(アイツ)を悪く言って俺の事を褒めたたえてモテ囃す。ウンザリだった」


 悲しそうに辛そうに言葉を続けている


「ある日、夢を見たんだよ。世界の景色を見て回るっていうのを思い立ったら即行動! って思って出かけるとやっぱり一人でやるのは無理だった。勇者は国から出れなくて仲間を見つけないとと思っている時に君と出会った。一目で人間じゃないのがわかったよ。圧倒的に存在感が違ったし」


 あはは、と渇いた笑みを浮かべている


 こっちもこっちでバレてたか何となく分かってたけどね


「文献を調べて俺のツテを使って調べると世界樹に変化があったって分かった。君の出てきた時期やら何やらを総合すると答えは一つだったよ」


「俺が世界樹と知っていたわけね」


「まずまずおかしいしいね、3,000メルから地上を見ることができる人間がそんなにいるかっての」


 あ、確かに


 そこもか!


 やらかしたな……


「まぁ、なんでって言われれば息苦しい生活から逃げたかったんだよね」


 ……勇者の代わりに名声を受け、世界に革新を与えた存在はそんなことを言う


 人でありながら一人で一人を幸せにするのではなく何万何億の人間の幸せを願いそれでいながらそれを利用しようとする人間が群がる


 確かにストレスかもな


 俺としては俺が必要ないと言われる原因になった人間が目の前にいるけどそのおかげもあって今ここにいるし楽しみを知ったわけだしな


「そうか、じゃあカル、次の場所に行こうか」


「へ?」


「写真、撮るの俺じゃできないしシュモも苦手だしな? それに俺たちの旅には写真が欲しいしね」


「……良いのか? 俺は魔素を使わなくなる原因を作った」


「良いよ、そのおかげ自由だしな」


「はは、面白いな」


「別に良いだろ? シュモ、もうちょい旅続けるわ」


「止めるつもりも止めれるとも思ってないですよ」


「うわ~シュモも諦めてる」


「諦めてないですよ、楽しんでいるんですよ」


「じゃぁあ行こうぜ? カルの作ったハイテクの世界が及んでない絶景を見に」



No.1

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