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【完結】辺境の白百合と帝国の黒鷲  作者: もわゆぬ


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白百合、胸騒ぎの意味

お待たせしております。

いつもありがとうございます。


「うん、これで大丈夫だ。これからも宜しく、カミーユ」


「あぁ、アサム。宜しくね」


がっちりと握手を交わし、その逞しい腕と自分の腕を見比べてしまった。


「これから、レディを迎えに行くのかな?」


「そうだよ。本当に会えていないからね」


「そうか、新婚さんに悪い事をしてしまったな」


「これから挽回してくるよ」


「それが良い」



仕事の話しが終わり、少し雑談を交えているとガチャガチャと鎧の擦れる音がする。



バンッ!



「失礼致します!アルディアン伯は此方にいらっしゃいますか!?」




勢い良く扉が開かれ、一人の兵士が慌てた様子で入って来た。

彼は今更ながら自分のした事に気付いたのか、鎧を騒々しく鳴らしながら敬礼をする。



「…サンダード王の御前だ、慎み給え」


「はっ!!申し訳御座いません!緊急事態でして…」


「はは、良い。まぁ、私の国では首が飛ぶやもしれんぞ。ノック位はした方が良い」


「き、肝に銘じます!」


若い兵士にお灸を据えると、彼は青ざめながらも首を縦に振った。


「して、何用か?」


「た、大変で御座います!メルフィン邸上空に鉄麟竜が現れました!!」


「何!?」


「帝王より、直ちに現場に赴いて欲しいとの事です!」


「分かった、直ぐに向かおう。

サンダード王、一大事ですのでこれにて失礼致します」


「あぁ。行ってきなさい」



アサムと人前用の挨拶を交わして、兵を先導に部屋を出る。


胸騒ぎが止まらない。


竜とは、滅多にお目にかかれない筈だ。

この間の事件の復讐に来たのだろうか…。


いや…、それは無い気がする。

それならば、あの時に帝都が消滅していた。

ぐるぐると思考の海に沈んでも答えは見つからない。


何より、シルヴィの身の安全が優先事項だ。

シルヴィへの想いが溢れそうになるのを押し込めて、歩を進める。



「おぉ、カミーユ殿来てくれたか」



兵が向かった先は、帝国軍を率いるお義父様の所だった。

お義父様は焦りを見せずに私に話し掛けているが、顔色は途轍も無く悪い。


「話しは聞いています。向かいましょう」


「君にばかり負担を掛けてしまうな。この礼は必ず」


礼は要らないのだが、お義父様側の立場になって考えれば自分もきっと同じ事を言うと思ったので素直に受け取り、頷く。


帝国軍を引き連れ、用意されていた馬に跨りメルフィン邸へと駆ける。


蹄鉄の音がやけに煩く感じて、焦りばかりが先走っている気がした。


メルフィン邸に近付くが鉄鱗竜は視界には見えない。だが、気配はビリビリと感じるので居るのだろう。


「私が様子を見てきます。ですが、ここはメルフィン家。お義父様も来て頂けると有難いです」


「分かった。お前達はここで待機」


兵達にお義父様がそう告げ、メルフィン邸の敷地に足を踏み入れた。

慎重に歩を進め、気配のする方へと向かう。



ギャァアォオウーー!



すると激しい咆哮と共に鋭い風圧を感じて、何かが上へと飛び立った。


そして、その背中には見た事の有る光景だ。



「シルヴィ!!」


まさかだが、またシルヴィが鉄鱗竜の背に乗っている。

焦って説得を試みようと走り出すと違和感を感じた。



「カミュ!父上まで!おーい!」


こちらに気付いたシルヴィが手を振っているのだ。

満面の笑みで。



お義父様とポカンと口を開けてしまい、走るのを止めた。


どうやら、緊急事態では無さそうだ。


邸の上を何周かして竜が降下してきた。

竜は丁寧に着地すると首を下げ、シルヴィを降ろす。


「どうしたんだ、二人とも?カミュは今日のお仕事は終わったのか?」


シルヴィは可愛らしく首を傾げ疑問符をうかべていた。


「いや…、家の上に竜が出たと聞いて飛んで来たのだ」


お義父様がまだ状況が掴めないまま事情を説明する。


「そんな事になっていたのか!あの時の子だよ、何も悪い事はされていない。今日は中々領地に帰って来ないから様子を見に来たらしい」


『シルヴィア、カエラナイ。オレ、サミシカッタ』


「な、成程。それで来てくれたんだね」


『ソウ。シルヴィア、アルジニスル』


「主?」


シルヴィも『アルジニスル』とは初めて聞いたのだろう。驚きの表情で竜を見る。


『オレ、オトナニナッタ。リュウ、オトナニナッタラ、アルジキメラレル』


竜が主を持つ事自体は聞いた事は有る。

清い心と強い力を持ち合わせ、竜と心通わせた者だけが選ばれるという、絵本等で語られる所詮はお伽噺程度に思っていた。

まさかお伽噺はお伽噺では無く、大人になったら自ら決められる様になる制度だとは。


『シルヴィア、マモル。キメタ。名ヲヨベバ、スグクル。』


シルヴィは戸惑って私を見るので、深く頷いておいた。

竜の主になるという事は少し考えても利点しか浮かばない。シルヴィを守ってくれるなら尚更。

シルヴィは真っ直ぐ竜に向き直った。


「主になるのは何だか億劫だ、対等な友達になろう。

そう言えば名を聞いていなかったな。名は?」


『…トモダチ、タイトウ。イイナ。

ナマエ、ナイ。シルヴィアガツケロ』


「そうだな…。ゼルバ……かな」


『ゼルバ』


シルヴィは少しだけ考える素振りを見せたが、即答で名を付けた。

名を付けた瞬間、パチンと何かが弾けて

シルヴィとゼルバがキラキラと輝き温かな光に包まれた。




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