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白百合、不穏を感じる


コンコン


「どうした?」


『カミーユ様、フリーガング様が少し話が有るとの事です』


「……分かった、向かおう」


着替えを済ませると、ベンジャミンがやって来た。

シルヴィはまだ時間が掛かるだろう。少しなら、と話を聞きに行く事にした。



「お待たせしました、爺様」


「おお、済まんな。何やらデートらしいのに呼んでしもうて」


「いえ、ですが手短にお願い致します」


「帝都が何やら騒がしい。聞く所によれば、嫁がねばならんのに

またあの姫さんがゴネているらしいぞ」


「……それは私には関係の無い話では?」


「ははっ!何を言っておるのじゃ。お主の仕業じゃろ?」


「あ、バレました?」


「でなければ、あの様な我儘姫が遠方から望まれる訳など無いわ」


「そろそろ私への執着を止めて頂こうと思いましてね」


「気を付けろよ。ここに居るうちは良い。

時期に帝都から婚約披露パーティーの為に呼ばれる。これは余程で無い限り欠席は出来ない」


「有難う御座います、シルヴィは全力で守る所存です」


「ワシはお主も心配じゃがな」


「それは…、気に止めておきます」


「よし、早急な話は以上だ。後、シルヴィアちゃんに明日にでも手合わせをお願いしておいてくれ。今日は、討伐隊の奴らを絞めてくる」


「爺様に締められるなんて喜ぶ奴ばかりですよ。伝えておきますね」


「あぁ」


「では、失礼します」


話は終わった様なので爺様に背を向ける。


「カミュ」


「はい?」


すると、呼び止められた。



「幸せか?」



そう言うと爺様は眉を下げて、少し悲しそうに笑う。


「はい、とても」


私は出来る限りの笑顔で爺様に応えた。

爺様まで心配させていたとは、知らなかったな。


爺様は少し驚いた様な顔をして、クシャッと笑った。


「ははっ、こりゃ本当の様だ!」


「有難う御座います、もう心配は要りませんよ」


「そうか、そうか…。何もしてやれんで済まんかったな」


「いいえ、沢山して頂きました。それは、私が一番良く知っています。では、今日の所はお暇します。討伐隊を宜しくお願い致します」


「…あぁ、任された」



爺様の目がキラッと光った気がしたけれど、見ないふりをして退出した。





「ノエル」


「此処に」


私は控えていたノエルを呼んだ。


「帝都の様子を調べろ、早急にだ」


「畏まりました」


「シルヴィは?」


「もうすぐ、との報せが先程」


「分かった。では、待ち合わせの場所で待とうかな」


「此方です」


毎回、毎回あの姫は厄介事だらけだな。いい加減、私の事は諦めて嫁いで行って欲しい。とても良い嫁ぎ先なのに、何が不満なんだ。

私は待ち合わせした部屋で今日の書類を片しながらシルヴィを待つ。



コンコン


『カミーユ様、シルヴィア様が参られました』


「分かった」


シルヴィが来たと言うので立ち上がると、扉が開いた。



「これは、素晴らしい。とても似合っているよ、シルヴィ」



独占欲丸出しの色にしてしまったのだが、正解だな。

彼女の瞳と同じ色のブラウスは落ち着いているが、少しだけ甘やかな変形ズボンのお陰でとても女性らしい。

似合い過ぎていて拍手を送りたい。



「あ、有難う。カミュ、所で何処に行くんだ?」


「ふふ、それはお楽しみだよ」



そう言って彼女をエスコートして馬車に乗り込む。



「あ、そうだシルヴィ。爺様が明日にでも手合わせしたいと言っていたよ」


シルヴィに正面に座って貰って爺様からの伝言を伝える。


「分かった。フリーガング様と手合わせ出来るなんて、楽しみだ」


「父上は感覚で戦うんだけど、爺様は頭が使える分ずる賢い。とてもやりにくいよ?」


「そうなのか。肝に銘じておく」


爺様には弱点という弱点が無い。父上は……、言わないでおこう。威厳の為に。


「それとね、シルヴィ。近々、帝都に行かなくてはならない。

ある方の婚約お披露目らしいんだ…、知っているとは思う。クルメリオス公爵の娘、タチアナ=クルメリオス嬢なんだけど」


「あぁ、彼女は有名だから知っている。お会いした事は殆ど無いがな」


「あ~、良かった。出来ればね、挨拶以外は話しちゃ駄目だよ?」


「何故だ?」


「実はね…、自分で言うのも変なんだけど執着されているんだ。シルヴィに何をされるか分からないから気を付けて欲しい」


「そ、そうなのか。公爵の御令嬢に執着されるとは……大変だな」


「そうなんだよね~。今までは気にして来なかったんだけど、シルヴィに被害が及ぶのは嫌だから」


「分かった。気を付けておこう」



「ありがとう、絶対だよ?」



「あぁ。カミュは心配性だな」



シルヴィはクスクスと可愛らしく笑っているが、私はとても心配だ。

こんな風に、色々と話している間に目的地に着いていた。



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