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黒鷲、進歩する


カミュは寝息を立てているが、私の心の声を聞いて下さい。



「(わ、わ、わ!!!!どうしましょう…、起きるタイミングが分からないわ!)」


私はカミュの腕の中で、すっかり困り果てていた。


頭を触られている気がして徐々に意識がはっきりしていったのだが、まず私がカミュに抱き着いている。

でも、カミュは私が寝ていると思っているので動けない。彼はクスクスと笑っている。

何より


「ずっと傍に居てね、私の黒鷲さん」



これを聞いてしまったのだ。

微動だにしない事が出来た自分を褒めてやりたいが、心臓はバクバクだ。



なんて罪な人なんだ。私で無ければコロッといってしまっているかもしれない。


タイミングが分からず結構な時間抱き締められている気がする。

とりあえず自分の手を解き、抜け出そうとした。



「行かないで」



すると、再度ギュッと抱き締められる。


「か、カミュ。起きて居たのか?」


「ううん、さっき起きたよ。良く眠れた?」


「あぁ、良く寝た」


「おはようのキスをしてくれても良かったんだよ?」


「なっ!!!」


「ふふふ、冗談だよ。今日は予定も有るしね、起きようか」


そう言ってにっこり笑うと、彼はベッドから起き上がる。




何だか悔しかったのだ。

いや、出来心だ。



私は彼にトントンと肩を叩き振り返らせると、その滑らかな頬に口付けをした。



「え」



カミュは頬を抑えてポカンとしている。

喜んでくれると思ったのだが、拍子抜けだ。



「い、今は歯も磨いて無いからこれで勘弁してくれ」



だが、恥ずかしいのでそう言ってそっぽを向いた。



「……シルヴィ、歯を磨いたら口にしても良いという事なのかな?」


「そ、それは!!」



何を言い出すんだと其方を見ると、口元を抑えて真っ赤に染め上がっている彼が居た。



「ごめん、ちょっとこっち見ないで」


彼はそのまま手で顔を覆って、背を向けてしまった。



可愛い。



カミュは毎回こんな気持ちだったのか。

前にも一度彼が真っ赤になった所を見ては居るが、あの時はお互い様だった。


彼は大きく深呼吸すると、此方を向いた。



「ありがとう、シルヴィ。とても嬉しい。

何だか泣きそうだ」


「そ、そんなに?」


「うん、私もして良い?」


「そ、それは遠慮しておく…」


遠慮すると彼はクスクスと笑い、手を差し出す。



「良い朝だね。デートは昼からにしよう、それ迄はお家でゆっくりしようね」


「分かった」


「シルヴィ、今日の服は私が決めても良いかい?」


「服?良いけれど…まだ可愛いドレスは恥ずかしい…」


「分かったよ、ドレスは止めておくね」


「ありがとう」




各自部屋に戻り、暫くするとローザンヌが服を持ってやって来る。


「シルヴィア様、今日のお召し物は此方になります」


ブラウスはいつもより少し庶民的だが、首元に付いたビジューや可憐なジャボが愛らしい。そして光沢のある、つるりとした生地の物だった。ズボンはフワッと少しだけ膨らんでいて、足首でキュッと纏まっている。


「この布は何だ?」


ズボンと同じ色のチュールが何枚も重なる様な布が有るので広げる。


「其方は腰に巻くものなのですよ」


そう言うとローザンヌはテキパキと着せ付けをする。


その上部に有るリボンをウエストで結ぶと後ろから見ればスカートに見える。

が、前から見ると真ん中で斜めに分かれて中から同色のズボンが覗く斬新なデザインだ。

ズボンを履いているのに全て一体化して見える、私に優しいデザインである。


「これは、何とも可愛いな…」


鏡の前でくるくると確認をする。


「ブラウスは翡翠色で、ズボンと腰巻きは淡く反射で見える琥珀色。何方もとてもお似合いのお色ですね、まるでお二人の様です」


ローザンヌはそう言ってにこにこと微笑む。


理解するのに時間が掛かってしまったが、理解してから顔が紅くなるのに時間は掛からなかった。


「さぁ、シルヴィア様。御髪を整えます」


「あ、あぁ。お願いする」


羞恥に耐えながら、ローザンヌに髪を整えて貰う。


「今日折角ですから、少しだけ違った髪型にしてみましょう」


私はいつも馬のしっぽの様な髪型か、髪を全部引っ詰めた様な髪型をして貰っている。


ローザンヌは少し緩くカーラーでカールを付けると、耳の横辺りで編み込みを初め左の耳の下に髪を集めて纏め、垂らした。


「……良いな、有難う」


カミュから貰った髪留めが正面から良く見える。


最後にピアスを付けて、彼の元へ少し弾んだ気分で行く事にした。



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