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白百合、夫として


「ご結婚おめでとうございます、アルディアン伯」



「ありがとう御座います、メロニアス夫人」




なんと、あれから状況は全く改善せずに一週間経ってしまった。


普通に話すが目は合わない。

近付こうとすれば、自然と離れてしまい距離を保たれている。


ここ何日かは、二人で婚姻による来客の対応をしている。

正に仮面夫婦をしている状態である。



「お疲れ様、シルヴィ」


「あぁ」


「今日はこれからどうするの?」


「これからローザンヌと魔物討伐隊へ行ってくる」


「分かったよ、行ってらっしゃい」


「行ってくる」



最近は大体こんな感じだ。

完全に避けられています。話しをしたくてものらりくらりと躱される。

彼女は着替える為に部屋に戻ってしまった。



「…まだ、仲直りをしていないのですね」


「喧嘩はしてないんだけどね。避けられてしまっているんだ」


「カミーユ様、お噂の件の情報纏まりましたが…聞かれますか?」


「あぁ、執務室へ」



ノエルが心配してくれているが、避けられていてはどうしようも無い。

それに、今はシルヴィと無理矢理距離を詰めてはいけない様な気がするのだ。




「思った通り、と言いますか。やはり噂の根源は例のお方でした」


「やはりか…。シルヴィと直接対峙する事は無理だと踏んで、周りから攻めて来たか」


「粘着質なお方ですからね」


「そろそろ諦めて欲しいな」


纏めてくれた資料には目を覆いたくなる様な事を私がしていると書いてある。

要約すれば、それを広めた先に居た人物と私が過去に恋人通しで、私が彼女を弄びボロ雑巾の様に捨てたという。

その後も取っかえ引っ変えを繰り返し、可愛らしい顔をしているが遊び人だという事だ。

取っかえ引っ変えした女性達は必要に口を開かないと有名で、上流階級ばかりなので一種のステータスになっているのではないかと言われている。


全くの出鱈目だが、広まってしまっているのだ。


「…思ったよりも酷いな」


「尾びれ背びれは付いているでしょうがね」


「そうだね。これがシルヴィの耳にも入っていたので有ればこの状況はやむを得ない気もするね。寧ろよく婚姻してくれたとしか…」


「どうされるのですか?」


「ん~……、誤解を解こうにも今では信じて貰えるか…」


「確かに」


「私にも分からないよ。話しがしたいのだが、逃げられてしまう。そろそろ捕まえなくてはいけないかな」



困った様に笑うとノエルは申し訳無さそうな顔をした。


「ローザンヌにも協力を求めたのですが、彼女にも『今は時期では無い、シルヴィア様が落ち着くまで待て』と言われました」


「そっか、ローザンヌが言うなら待たねばならないな…」





コンコン



『カミーユ様、お客様です』


「ここにか?通せ」




「うふふ、お届け物で~~す♪」



ベンジャミンが扉を開けたそこには母が居た。


「母上?」


「頼まれていた物持って来たわよ~」


「わざわざ持って来て下さったのですか?」


「シルヴィアちゃんの為に新たに作ったのよ?着て貰ったところを見たいじゃない。


さぁ、シルヴィアちゃんは何処かしらっ?」


「成程。ベンジャミン、シルヴィが居るか確認して聞いて来てくれる?」


「畏まりました」




「母上、彼女は今日魔物討伐隊へ行くらしいのでもしかすると入れ違いになっているかもしれません」


「あら、そうなの?その時は待たせて頂くわ」


「分かりました」



「それにしても、貴方顔色が優れないわ。ちゃんと休んでいるの?」


「少々問題が山積みでして…。気疲れですのでお気になさらず」


「そう?ノエル、ちゃんと息抜きさせてね」


「はい、大奥様。

カミーユ様はシルヴィア様と少し倦怠期なので御座います」


「なっ!ノエル!」


「まぁ。だからそんな顔色なのね」




顔色の事を突っ込まれ躱したら、ノエルが余計な事を言ってしまった。

キッと睨むが、ノエルは涼しい顔をしている。


今度の休みは返上だぞ。



「…避けられているだけなのです」


「ふふ、何が合ったかは分からないけれど

夫婦は血の繋がりの無い赤の他人よ。

同じ空間に居れば思い悩む事も、一緒に居たくない時期も有るわ。

でもね、それでもまたいつの間にか一緒に居るのが夫婦なのよ」


「母上…」


「シルヴィアちゃんが心を開くまで待ってあげなさい。夫として」



「はい、…ありがとう御座います」



母には敵わないな。

容姿も、頭脳も母譲りだがまだまだ勝てる気がしない。



コンコン


「シルヴィア様は本日、討伐隊へは行かず大奥様にお会いになるそうです」


「まぁ!では、早速案内して貰おうかしら♪

カミーユ、余り思い悩まずドーンと構えて笑っていなさいね」



「そう致します、母上。シルヴィを宜しくお願いします」



「は~い♪」


母は颯爽と私の心の重しを軽くして、シルヴィの元へと駆けて行った。



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