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白百合、妻を迎えに行く


「カミーユ様、顔がゆるゆるです」




「はっ!顔に出ちゃっていた?」


「それはもうしっかりと」


「だって~、まさか受けてくれるなんて思って無かったからね」


「けっ。あんなに用意周到にしていて、どの口が言いますか」


「ちょっと、口が悪いよ。ノエル」



先日行われた婚姻の儀式を思い出し、頬が緩んでしまっていた。

といっても、書類を書き提出するだけなのだが、凛々しい彼女の横顔を眺めているだけで幸せだった。

長い間想い続けていた彼女が書面上では妻となったのだ。


緩んでいても、多少多めに見て欲しい。

乳兄弟であり、秘書兼従者のノエルは二人の時はこうして少しだけ砕けて話す。


「でも良かったですね、カミーユ様」


「そうだね、この日を楽しみにしていた。

やっとこの手に出来たんだ」



「本日この後はそちらが終わりましたらシルヴィア様をお迎えに行き、一日こちらで過ごす予定で御座います」


「分かった。

二年待ったんだ、一週間なんて直ぐだね。

でも、とても待ち遠しかった日だ」


「左様ですね」



即座に書類を片付け、メルフィン邸へ向かう。


メルフィン邸ではメルフィン伯爵、伯爵夫人そしてシルヴィアが出迎えてくれた。

今日のシルヴィアは華美では無いが、品の良いドレスを着ている。

それが自分の為だと思うと嬉しい。



「本日はおいで頂き誠にありがとうございます」


「いえ、気が急いてしまって

こんなに早くお嬢様を手放さ無くてはならない事をお許しください」


「いえいえ!誰からもそう言う話しが出ず、我々も困っていたのです。

本日息子は留学中の為にご挨拶出来ませんで、申し訳無い。

どうか娘を宜しくお願いします」


「構いませんよ。お嬢様は大切にする事をお約束致します」


「シルヴィア、気を付けるのよ」


「分かっております、母上。あちらに着いたら、手紙を出します。

では、行って参ります」


「あぁ、シルヴィア息災でな」


「はい」



別れの挨拶を済ませたシルヴィアの手を取り、馬車に乗り込む

ノエルは気を遣い、従者と共に外に座るらしい。




「シルヴィアと呼んでも?」


「えぇ。私はなんと?」


「あ、でもちょっと待って!

シルヴィがいいかな?いっその事ヴィーでも良いか…」


「…では、シルヴィと呼んで下さい」


「ありがとう、私の事も愛称を付けて頂きたい」


「…カミュ?」



「…かっ!…それで宜しくお願いします」


「お嫌でしたらそう言って下さいね」


「いえ、シルヴィの余りの可愛さに驚いただけです。本日の装いもとても似合っていますよ、とても可愛い」


「はい?」


シルヴィア改め、シルヴィは可愛い等とは言われて来なかったのだろう

何を言ってるんだ、お前といった顔をしている。


後々知って貰えば良いか。

意外に顔に出るんだなと新発見だ。


そんな所もいい。


「あ、後敬語は使わないでね。私も止めるから」


「分かった。そう言えば前回は早急だったので、ちゃんと話すのは初めてかもしれないな」


「そうだね!あ、私は大体性格で落胆されたりするんだけど嫌だった?」


「いや、落胆する程貴方のことを知らない」


「ふふ、それもそうだね」


「私はそのままだと、良く言われる」


「そうですね、愛らしいです」


「…ちょくちょく挟んでくるな。本気で思っていたのか?」


「え?嘘だと思ってた?」


「いや…、半信半疑だった。ただ、領に強い者が欲しいんだと…」


「えーー!そっちが後付けなんだけどなぁ」


「そうだったのか…。それに愛らしいという言葉はカミュの方が似合う」


「ん~それは複雑かな。私は男なので」


「それも、そうか」


「だけど、シルヴィになら言われても良いかな」


「…ありがとう」



「ねぇ…シルヴィ。

後悔、していない?」


「何故?」


「結構、強行突破した自覚は有るんだ。隊も辞める事になってしまったんだろう?」


「なんだそんな事か。隊はちゃんと後釜を立てたし、元々頓着は無い。

目指す所が終わって、どうしようか考えていた所だったから。

アルディアン領では魔物が沢山居ると聞く。屈強な戦士も多いんだろう?

なら、領民に認められる妻になろうと思う」



何だろう、今胸を鷲掴みにされた感覚に陥って胸を抑えてしまった。

平然を装って言葉を続ける。



「シルヴィなら、きっとうちの奴らは大丈夫」


「そうかな?それに…」


「それに?」


「カミュの様な人気の高い御仁とこうなるとは全く思っていなかったが

政略結婚が多い貴族の中…その、愛されているということは幸せな事なんじゃないかと思ったんだ…」


「え、なにそれ。幸せ過ぎて辛い」



「…まあ、そういう事だ」



日に焼けた肌で分かりにくいかもしれないが、シルヴィは顔が真っ赤だ。


何、この可愛い生き物。

この人私のお嫁さんですよ、皆さん。



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