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白百合・黒鷲、温もりを感じる

※糖分高め回です


驚き過ぎてビクッとしてしまった。



「し、シルヴィ、まだ起きていたの?」



シルヴィはベッドの上で正座をしてムスッとしている。

しかも、何とも可愛らしいネグリジェを着ている。



「………今日は一緒に寝ると言ったから待っていた」


「ごめんね、父上に捕まっていた」


「…そうだったのか」



なんだ、この可愛い人は。


シルヴィは私を待っていてくれたらしい。



「シルヴィ、抱き締めても良い?」


シルヴィの隣に座り、手を握る。

私を横目で確認して彼女は頷いてくれた。




シルヴィの了承を得られたので、ギュッと抱き締める。




「本当にごめんね。まさか待っていてくれるだなんて思っていなかった。

だから、とってもとっても嬉しい」


「…それは、待っていて良かった」


「寂しかった?」



私がそう聞くと、シルヴィはゆるゆると背中に手を回してくる。



「…少しだけ」



恥じらいながらも正直に伝えてくれる彼女はとても可愛い。



彼女の髪を撫でながら、暫く抱き締め合った。


すると、フッとシルヴィの力が抜ける。



「…シルヴィ?」



スースーと寝息を立て、シルヴィは眠ってしまった。


彼女を横たえ、布団を掛ける。



なんて幸せなんだろう。

人の温かみは良いな。


少しずつ心を開いてくれる彼女が、とても愛おしい。



眠っているシルヴィを抱き締めると、私も疲れていたのか眠気が訪れてそのまま身を委ねた。




********





朝の日差しが眩しくて目を開けると、麗しい顔が目の前にあった。




「(どどどどど、どういう事!?)」



温かいなとは思ったが、まさか抱き締められたまま眠ってしまっていたとは…。





昨日はカミュが湯殿から中々帰って来ず、待ち惚けていた。


私がずっと避けていた為に此方に来てからも一緒に眠る事は無かったのだが、決心した後だったので戻らない彼に苛立ちさえ覚えた。


それに知らない所で一人は、何だか寂しかった。



日を跨ぎ帰って来た彼は、お義父様に捕まってしまったのだと言う。少し、アルコールの香りがした。

抱き締めても良いかと聞かれたので頷くと、いつもの様に優しく抱き締められる。


彼に抱き締められると、心が温かくなる。


寂しかったか、と聞かれて恥ずかしかったが正直に応えると私の手は彼を抱き締めていた。



彼の温もりの中だと何故か安心してしまい、

さらに優しく髪を撫でられ猛烈な眠気に襲われてそのまま眠ってしまったのだ。




彼は少々私に甘過ぎるが、とても優しい。

こんなに可愛らしい顔をしていて若いのに精神は成熟している。



「お肌、綺麗…」



ドキドキと心臓は高鳴るが、その肌に触れてみたくて手を頬に持っていく。



すると、その手をギュッと掴まれた。



「………シルヴィ、余り積極的過ぎると食べてしまうよ?」



いつから起きていたのだろう。


彼はそう言うと、私の手のひらに口付けた。



「なっ!!!」



逃げようとしたが、また腕の中に入れられる。




「ごめんごめん、逃げないで。おはよう、シルヴィ」



「…おはよう」



「可愛いな、私の黒鷲さんは」



「何処がだ」


「全部だよ。細かく言って欲しいなら言うよ?

あ~、幸せだな」


「………」



彼はギューっと少し強く抱き締めてくる。


私も幸せだと、言いたいのに恥ずかしくて言葉が詰まってしまう。


彼は思っている事をそのまま口に出す。

聞いた事は正直に話してくれる。


人生でこんなにも女として甘やかされた事が無かったので戸惑ってしまうが、こうやって許してしまう程には彼に好意を持っているのだ。



可愛らしい彼を愛でる日々になると思っていたが、私が愛でられる側だった。



恥ずかしさばかりが先行してしまう。

物凄く逃げたい衝動にかられて逃げてしまう自分がとても嫌だ。



「シルヴィ、今日は此処を出て寄らなくてはならない場所が有るからそこを目指してデートしよう」


「デート…」


「嫌?」


「ううん、初めてだな…って思って」


「ふふ、あの二週間もデートの様なものだったけどね」


「あっ、それもそうか」


「でも、ちゃんとしたデートは初めてかな。


あーーーーこのまま今日は一日こうして居たい」


「なっ!何を言っているんだ……」


「そういう訳にもいかないんだよね~」



彼は溜息をつくと、私を離してくれる。



「起きようか」



少し残念そうに彼は眉を下げながら笑う。



離れてしまった温かさが少し、恋しい。



「…うん」



返事をすると、彼は驚いた様に目を見開いたので何事か?と思ったら

私が彼の胸辺りの服を握り締めていたからだった。


「…す、すまない。起きよう」



そう言って、誤魔化す様に彼に背を向けて起き上がろうとすると後ろから抱き締められた。



「……シルヴィ、やっぱりもう少しだけ」




くるりと彼の方に向かされて、彼はニコニコと額同士をくっ付けた。



「シルヴィ、私は出来るだけ貴女の心を汲む努力はするけど寂しい時は言って?

否定したりなんかしないから、ちゃんと教えて?」



彼はとても優しい声で言う。



「…わ、分かった」


顔が近過ぎてどうして良いのか分からずグッと目を瞑ると、額に柔らかいものが当たる。



驚いて額に手を当て、彼からバッと少し離れる。




「ふふ、シルヴィ。こんな時に目を瞑ってはいけないよ」



いつもと違い、妖艶に微笑む彼。




その後、私は一時間程芋虫になった。



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